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第76話「First Aidトレーニング」

4週目の金曜日、トレーニングが始まる8時30より、15分ほど早く来るように言われていたのでカツヒロは8時10分に教室に入った。

15分前に集合した目的は、乗務で使用する黒のスーツケースを購入する為で、時間になるとスーツケースメーカーの営業マンがキウイエアラインのCAに人気のスーツケースの実物を5つほど持参した。

スーツケース

「皆、乗務用のスーツケースを持っていない人は、今回、ここから買ったら通常のエアライン勤務者割引に加えて、団体割引も適用して頂ける事になったから、更に2割程度安くなるのよ。」

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どうやら、今回のセールスマンはサラの知り合いらしい。彼女は自分一人で買うよりグループでまとめてオーダーした方が安く変えると思って、わざわざこのような機会を作ってくれた。

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「えー、ホントに。それってとってもお得ね。」

「私、まだスーツケース買ってないから、今回オーダーしようと思うわ。」

「俺も買おうと思っていたから、ちょうど良かった。」

クラスメイト達は、実際にスーツケースを手に取り、CAとして長期Dutyに向かうイメージを思い浮かべていた。

「このスーツケースのタイヤの転がりがとってもなめらかな所がイイネ。」

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「そうですが、ありがとうございます。これは横型で4つあるタイヤの内、後ろの2つが大きいので安定感と静動感が非常に高いです。又、ここの掴みの部分が掃除機のコードのように伸び縮するから、身長が高い人も低めの方も上手くアジャストできるんです。」

営業マンの方は愛想よく、丁寧に説明してくれた。

M4.カツヒロ

カツヒロは一番人気の横型で少し丸みのかかった黒のスーツケースが気に入り、皆と一緒にオーダーする事にした。注文したスーツケースは来週水曜日にまとめて、教室に運んでくれるそうで、支払いはその時払えば良いと言うことだった。

料金はエアラインID割引だけだと、249ドルの物が、更にグループ割引がついて、199ドルに。5年間のメーカー保証もついているから非常にお得な買い物が出来た。

・・・。

「皆、おはよう。昨日のメイクアップレッスンは楽しかった?男子は少し退屈だったかもしれないけど、女子はやっぱり楽しかったよね?今日のレッスンが終わったら、センチュラホテルで軽くお茶でもしない?」

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インストラクターのミッシェルは何時もより元気な様子で皆に話かけました。

「いよいよ、皆のトレーングも来週1週間で終了よね。皆より少し前に入社したセミ・同期の新人CA達も続々とフライトし始めているから、いよいよ春から夏のピークシーズンが始まるわよ。」

「では、本日のトレーニングに入ります。まずはファーストエイド・キットとフィジシャン・キットの中味を実物を使って勉強します。その後、AEDのトレーニングです。」

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※AEDとは:Automated External Defibrillatorの事で、日本語では自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき)と言う。最近では多くの交通機関でもAEDが常備されているが、使用目的は心臓が止まってしまった人に、電気ショックを加え、心臓の動きを取り戻すことにある。

「ねえ、ケイト。UKエアラインでフライトしていた時ってドクターコールとか、したことある?」

スーザンがケイトに尋ねた。

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「ううん、私は下っぱだったから、ドクターコールはした事ないけど、大体チーフが機内放送で探すケースが多いわ。」

「えー、何だかTVドラマみたいでカッコイね。」

「そうね、飛行機って案外、お医者さんや看護士さんが載っているケースって多いみたい。だって、ドクターコールすると大体、数人は申し出がくるのよ。」

「そうなんだ。」

スーザンは興味深そうにうなずいた。

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「でもね、前に中年の男性客が飲みすぎて倒れた時に、チーフがちょっと動揺して、よく状況を把握しないまま、直ぐにドークターコールしたらその時は、誰もいなくて、ヤバイと思っていたら、獣医師さんが申し訳なさそうに申し出てくれた事とかあったのよ。まあ、獣医師さんでも、基本的に動物を治療されているからね。」

「でもさぁー、もし、お客様の心臓止まっていて、誰もドクターやナースがいなかったら私達が対応しなくてはならないのでしょう?それって結構プレッシャーだよね。」

「うん、確かに。呼吸が止まっていたら更に大変だよね。」

「そうね。この授業を受ける意味はそう言う点でも、しっかりトレーニングする必要があるから、がんばろう。」

35.ファーストエイド

・・・。

「皆、お疲れ様。今週のトレーングはこれで終わりだけど、週末はしっかりと今日習ったことを復習しておいてね。」

「それから、来週火曜日と木曜日にトレーニングフライトが入っているけど、水曜日にはモックアップルームで実際にエンジニア他、キウイエアラインの関係者20数名を呼んで、サービスの実施トレーニングをします。」

インストラクターのミッシェルからの連絡が続く。

「月曜日に6人ずつの2組に分かれて、機内サービス模擬練習とグループ毎のポジション決めをするので、お楽しみ。」

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「それでは、今日は金曜日だから、センチュリーホテルのプールサイドでキンキンに冷えた白ワインでも、飲みましょう。」

ミッシェルが最後に、嬉しそうに沿おう言うと、クラス内は雰囲気が一変し、皆、景気づけにワインを飲みたくなった。

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「今日はいい天気だから、外で飲むワインはきっと美味しそうね。」

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「うん、とりあえず、飲もう。毎日、プレッシャー続きだったから、金曜日ぐらいは、少しリラックしよーぜ。」

と皆、目を輝かせながら教室を後にした。


つづく。

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