第77話「恋バナ。同期と楽しく会話」
4週目のCAトレーニングを終えたばかりのキウイエアラインの新人CA12名とインストラクターのミッシェルはセンチュリーホテルへ向った。トレーニングセンターから車でおよそ5分の距離にあるこのホテルは、シテイに向かうモーターウエイを降りてすぐの場所にあるから、とても便利だ。
先に着いたカツヒロとアンディ、ジャスティンの3人は1階のレストランの先にあるバーで1杯3ドル5セントの白ワインをグラスで購入した。ホテルのバーから、外のプールが眺められてとても景色が良い。まだ16時過ぎと早めの時間だったから、他にお客はいなかった。
つまみにチーズとオリーブをオーダーし来週のトレーニングフライトの話題を口にしていると、アメリア、ジェーン、香織、ケイトが到着し、残りの6人もその後直ぐにやって来た。
キャシーとレイチェル、スーザンは、車の運転があると言うことで、アルコールの代わりにオレンジジュースをオーダーしましたが、それ以外のクラスメイトは冷えたシャルドネやソヴィニヨンブランクをオーダーし、一気に騒がしくないました。
カツヒロの隣の席にいたカオリが唐突に聞いてきた。
「ねえ、カツヒロって今、付き合っている人はいるの?」
「え、特にいないけど・・・。」
「そう、じゃあ、どんな人と結婚したいの?」
「そうだね~、今のところ、特にこういう人が良いって言うのは、ないんだよね。まあ、ひとつだけ条件があるとしたら、俺、長男だから、実家の側に住んでくれる人が良いと思っている。」
「へー、そうなんだ。でもね、やっぱり恋愛しなきゃダメよ。恋愛して本当に好きな人と結ばれるのが幸せになれると思うんだけどね。」
「まあね。相手の事が本当に好きになれて、そして相手もそう思ってくれたら最高じゃないかな?」
カツヒロはそういって適当に話をそらした。多分、このままカオリに自分の本音を伝えたら、「だから男はロマンチックじゃない」とか、説教されそうだから、心の中で「女子の理想はめんどくさい」と思っていた。
「ねえ、キャシーもトレーニング終わったら結婚するんでしょ?」っと近くにいたケイトが満面の笑顔でキャシーをつつく。
「ええ、まだ結婚式の日取りは決めてないけど、プロポーズはされたわ。」
キャシーは少し、照れながらそう答えた。
「ねえ、そのプロポーズされたときの婚約指輪を見せてよ。」
「う、うん、ちょっと待って」
キャシーは鞄の中から、小さなリングケースを取り出し、その中から大事そうにダイヤのリングを取り出した。女子達の目が輝きだした。そして、虫眼鏡で光を集めた焦点のように、全員の視線がそのリングに集まった。
「わー、いいなー。」
「すごーい。大きいね。」
「これって、カラット数はどのくらいあるの?」
女子たちの指輪を見る目はキャッツアイの如く輝いている事に、カツヒロは多少の恐怖を感じた。「やっぱり女は愛の言葉より、キラキラ輝く石の方に価値がある」という事を肌で感じた一瞬だった。
「ところで、皆、来週の金曜日は開けておいてね。18時半からパーネルのおしゃれなレストランで卒業パーティーを開くからね。料金は一人35ドルで、シーフードのコースなんだけど、とっても美味しいお店なのよ。」
「うわー、たのしみだな。」
「そうそうパートナーのいる人は、是非、一緒に連れてきてね。予約の関係で水曜日までに出欠の連絡をお願いします。」
どうやら、ジェームスとジャステインが卒業パーテーを仕切ってくれるようだ。ちょうど1週間後だけど、今からとても楽しみだ。
「ねえ、スーザンはうわさのパイロットの彼氏を同伴するの?」
「そうね、来週末は彼、お休みだから皆に紹介出来るかもしれないわ。」
「うわー、いいな。私もパイロットの彼氏欲しいわ。」
「やめとき、やめとき、パイロットって結構、訳あり物件も多いから、気をつけたほうがいいよ。副操縦士の旦那がいるミッシェルの前でこう言う話をするのも、何なんだけど・・・。離婚率高いみたいだよ。」
「そうなの。実は私の彼もバツ2なんだけど、2度も失敗している分、とっても経験豊富で私には本当に優しくしてくれるの・・・。でもね、ちょっとだけ、心配もしているのよ。彼って優しいし、やっぱりパイロットだとモテるから・・・。」
スーザンが少しだけ、心配そうにコメントした。
だけど、お酒の勢いもあり、皆、やけに陽気になり、「大丈夫、大丈夫、きっと上手く行くよ。」と根拠なくそう、励ましながらスーザンの方をポーンと叩いた。
カツヒロも「夫婦で同じフライト出来たら、カッコいいじゃん」と言って親指を立てた。
新人CA達の恋バナはその後も2時間以上続いたが、一向に熱は冷める事はなかった。
つづく。
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