第74話「メイクアップレッスン」
5週間の新人CAトレーニングも今日を含めて残り7日間となっていた。つまり1週間後にはカツヒロ達12人はトレーニングを卒業し、そして実際の乗務が待っている。
12人はこの4週間で相当な勉強を強いられて来たので、正直なところ頭の中はパンク状態だった。そんな新人クルーの状況を知ってか、今日のトレーニングはいつもと異なってリラックスモードで受けられる内容だった。
カツヒロ達はトレーニングセンダーではなく、オークランドの中心街にあるスタジオ・ワンに集まった。目的はメイクアップのレッスンを受けるため。インストラクターのミッシェルは同行せず全て外部委託先の方で講師や設備、道具を用意してくれた。
このレッスンはキウイエアラインの客室乗務員として会社が求めるレベルのメイクアップを出来るようになる事を目的としている。CAは会社にとって大事な広告塔であり、最も長い時間、直接お客様に接客する事になるから、そのアピアランス(身だしなみ)は重要だ。
ユニホームに対する細かな規定はもちろん、アクセサリーの色や数、大きさ等もきっちり決まっている。例えば腕時計は、シルバー又はゴールド、黒の3色以外は乗務中、着用出来ない。
・・・。
「ジャスティン、俺達が必要なのは基本的にキレイにヒゲを剃ったり、鼻や耳毛、それから眉毛の手入れぐらいだよね。」
カツヒロが少し眠そうなジャスティンに話しかけると、それまで、退屈でウトウトしていたジャズティンが一瞬、はっとして目を大きくした。それから、大きく息を吐き、少し面倒臭そうに
「そだよね。あと爪を切ったり、靴を磨いたり、制服にきちんとアイロンをかけたりしておけば、アピアランス(身だしなみ)チェックOKだよね。」
と答えた。
多分、連日のトレーニングの緊張感やこれまでの復習、そしてこれから先のサービスの予習で疲れているんだろうと、カツヒロは思った。
クラスメイト12人のうち、女子たち8名はメイクアップのレッスンをとても楽しみにしていたようで、すごく楽しそうだったが、カツヒロを含む男子4名は、どうして女の人は、そんなに化粧するすることが楽しいのか?理解できずにいた。
隣にいたジェームズがカツヒロ達の会話に割り込んで来た。
「でもさ、ゲイの先輩はヒゲを永久脱毛して、顔にパックしたり、毎日、乳液も欠かさず塗ってケアしているそうだよ。だから、俺らもやって方がいいんじゃない?」
とても、本気で言っているようで無く、とりあえず暇だから、会話をふくらませようと言った感じだ。
隣の部屋では、ズラリと並んだ化粧台の前に、すっぴんになった女子達が座らせられ、正しい肌のケアのやり方や、メイクアップをする際のコツなどを実演演を交えながら習っている。
男子4人もスキンケアの方法を教えてもらったが、時間にして10分程で終了した。その後は奥の部屋に待機して女子が終わるのを待たされた。
女子に言わせると普段、TV局に出入りするタレントや有名モデルさんたちを担当しているメイクアップスタイリストの方々が直々にレッスンしてくれるから、とても貴重だと目を輝かせている。
さっきまで、じっと黙って、アピアランスマニュアルを読んでいたアンディもカツヒロ達の会話に参加してきた。
アンディは若干、ゲイっぽい所があり、あからさまにそう言う所を見せる事はなかったが、時々みせる仕草が女のっこぽい。とてもおしゃれに気を使っている所やお喋り好きなでうわさ話が大好きな事から、もしかしたらゲイなのかな?
「スチュワードってゲイが多いと聞くけど、それは本当だね。大体、3割ぐらいがゲイじゃないかって言われているよ。俺、ゲイとストレートの違いを一瞬で見分けられるんだよ。」
とアンデイが自信満々に言った。
「へえー、それは、面白そうだね。どうやって見分けるんだい?」
「それは、目が違うんだよ。最近はストレートな男性でも永久脱毛したり、フェイスパック、軽い化粧までするおしゃれな男が増えている見たいだけどね。ゲイとストレートの決定的な違いは、男を見る時の目なんだ。」
「へえー、具体的にどう違うの?」
「男性が近くを通りすぎる時、ゲイの場合は、男を無意識に目で追ってしまう。異性愛者の男性なら男に興味がないから通り過ぎる男なんて見ないよね?でもゲイの男は全てとは言わないけど男をチェックしているんだよ。」
「ホントに。それは知らなかった。今度から気を付けて見てみよう。」
すると、アンディはまくし立てるかのように、一気に
「まあ、キウイエアラインや隣の国のオージーエアーにも、ゲイは多いから、今度、空港でスチュワードを見かけたら、よーく観察してご覧。そうそう、カツヒロは少し女性っぽい所があるから、ゲイから熱い視線を送られる可能性は高いよ。」
と少し余分な忠告をしてくれた。
カツヒロが女性っぽく見られる原因は、本人が育った家庭環境に起因している。
姉が2人の3人兄弟の末っ子として成長したカツヒロは、子供の頃は必然的に姉達と一緒に遊んでいたので、女の子向けTV番組や漫画を愛読した。例えば魔法使いサリーちゃんやひみつのアッコちゃんのような魔法少女シリーズが好きだったし、姉が読んだリボンやなかよしも時々読んでいた。
それから、両親が共働きでだったので、幼年期に最も長い時間一緒に過ごしたのがおばあちゃんだった。子供の頃からおばーちゃん子だった事もカツヒロの性格形成に大きな影響を及ぼしているんだと思われる。
・・・その日のレッスンは一日がかりだった、男子はやる事がないから14時で帰って良い事なった。
「やったー、ラッキー。」と4人が思っていると、
「折角、シティまで来たから、皆でDuty Free Shopによって行こうぜ。」とアンディが誘ってくれた。
特に、他の3人も異論はなく、4人はオークランド中心部に位置するDFSガレリアに向かった
つづく。
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