下積みが人間を強くする
「売り家と唐様で書く三代目」という、後継ぎを揶揄する言葉がありますが、この言葉の意味は、創業者が大変な苦労をして財産を残しても、三代目くらいになると家業が衰退し家を売りに出したりすることもあるけど、その売り家の札の筆跡は唐様でお洒落に書かれているというもので、たいした苦労もせず家業を引き継ぎ、商売をないがしろにする後継者を皮肉っています。
もちろん後継者となる人物が全てダメ人間というわけではありませんが、政治家でも経営者でも世襲によって継がれた場合、問題を生じることが多く、過去に働いていた大手企業で、創業者の息子が中途採用で入社してきたという経験がありますが、幹部クラスの人たちが腫物に触るような扱いをしていたことを覚えています。
修行というと言葉が古臭くて固い印象がありますが、社会に出る時にはある程度の下積み時代を経験をしたほうがいいと思っていて、その時の苦労が役に立つことって本当に多いんですよね。
底力が身につくというか、その苦労した経験があるからこそ、厳しい状況になったとしても、じっと耐え忍び復活の時を待つことができるのです。
僕自身もタレントのプロモーションをやっていたときに、指導してくれる先輩もいなかったので、わけわからず飛び込みで営業に行き、失礼なことしてその場で怒鳴られたこともあるし、全く相手にされなかったり、テレビ局では「食堂でお待ちください」と言われ、延々と何時間も待たされて話を聞いてくれるのは5分程度ということもありました。
まぁでも度胸がついたしへこたれない精神力も身につきました。
どうすれば話を聞いてもらえるのか、どうすれば相手に印象付けることができるのかなど、めっちゃ考えましたもんね。
怖いもの知らずで若かったからできたというのもありますが 笑
記憶に新しいところで言うと、大塚家具の二代目も父親を追い出し経営権を握りましたが、あっという間にヤマダ電機の子会社になり上場廃止、そして結果的に退任することとなりました。
これはお家騒動がどうのというより、二代目と創業者の底力の違いと言わざるを得ません。側で父親の仕事を見ているのと、実際に自分がやるのとでは雲泥の違いがあることがわからないんですよね。
最近の例では連日ニュースで伝えられているジャニーズ問題。
もちろんことの発端は創業者が起こしたことによるものですが、厳しいことを言うと、二代目の対応が一般的な感覚とズレていることは否めません。
創業者が亡くなってもその権力は通用すると思っていたのでしょうけど、あっという間に社名すら消えてしまいましたからね。
それにしてもBBCが世界に向けて報道したのは今年3月のことですから、あれほどの企業がこんなに短期間で消えてしまうとは、大変化の時期に突入してるとはいえ、誰も想像していなかったのではないでしょうか。
ちょっと話が大きくなりましたけど、今の時代は個人的にもネットでバズることで有名になったり、大金を手にすることもできるようになりました。
では有名になったり大金を手にすることで幸せなのかと言えば、そうとも言えない面もあり、逆にそれが精神的な負担になって鬱になったり、誹謗中傷を受けてメンタルやられたりと、いろんなことが起こるわけです。
ユーチューバーの世界を見ればわかりやすいですけど、めっちゃ入れ替わりが激しい世界で、ある時期人気が出て再生回数が爆発的に伸びたとしても、それが5年とか10年続くことが難しいのはわかりますよね。
ところがある分野に精通している人や、時間をかけて技術や知識を身につけてきた人たちは、爆発的な人気にならなくても、YouTubeがきっかけで講演会の依頼が来たり、本の出版につながったりして、その人が持つ技術や知識や才能が、より多くの人の役に立つことになるのです。
有名になったり登録者数やフォロワーが増えることは喜びであることは間違いありませんが、積み上げてきたものがないまま有名になると、相手にされなくなるのも早いということ。一瞬で消えて忘れられることになりますから、ここを見誤らないようにしたいですね。
好きなことを極めるのは修行とは言わないし、本人はそれが苦労とも思っていないのですが、やはり地道にコツコツと積み上げる時期があるわけです。
その下積みの時期がめっちゃ重要で、自分にしかできないやり方を発見したり、自分の能力を最大限に活かす方法も見つけることができる貴重な時間ですから、多少時間がかかってもそこを端折らず、熟成するまでやり続けることですね。