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3.細胞:生命の構成単位

どんな生物でもじっくり観察すると、しっかりと造り上げられた設計に基づいて、精緻に形づくられていることがよくわかります。

3.1 細胞、組織、器官、そして生物

私たちは、たくさんの人間と共に生きています。また、たとえば犬、山羊、牛、草木、その他の多くの生物も人間と共生しています。その中には象や巨木のように大きな生物もいれば、ちっぽけな虫のような、小さな生物もいます。

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建築を例に取ってみましょう。建物を作るとき、ひとつひとつは小さなレンガでも、組み合わせれば壮大な建物を築き上げることができます。同じく、生物の体を築きあげているのも幾百万ものごく小さな細胞の組み合わせなのです。ひとつひとつの細胞はあまりに小さいので、顕微鏡を使わないと見ることができません。いくつもの種類があるその小さな細胞が、それぞれ異なった方法で互いに結合し、生き物の体や組織を築き上げているのです。

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細胞がどのように体を作っているか、より詳しく見ていきましょう。皮膚細胞は、互いに結びつきあって皮膚組織を築き上げています。また筋細胞も、互いに結びついて筋組織を築き上げています。筋組織が集まると器官となり、また、眼球、心臓、胃、いずれも組織が集まった器官です。細胞が組織を作り、組織が器官を築き上げます。

そして、同じ機能をもったり、あるいは全体として一連の機能を担う「器官のまとまり」が器官系です。例えば、循環器系、骨・関節系、消化器系などは器官系の一例です。さらに、これらの器官系がまとまり、生物の身体を築き上げています。

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細胞の話に戻りましょう。細胞には細胞膜というとても薄い外膜があり、細胞膜の内部は主に細胞質という液体状の物質で満たされています。それはタンパク質など、あまたの微小粒子を含む混淆物(こんこうぶつ)ですが、その中でも最も重要なものが小さなタンパク質製造工場ともいえるリボソームです。

また、細胞の中ほどには大きなボールや、嚢状(のうじょう)の細胞核というものがあり、普通は円形や卵型をしています。細胞核には1つ以上の染色体、つまり分子量が大きなDNAが包み込まれていて、生物を完全な組織にするしくみやはたらきについての情報を持っています。言い換えれば、染色体には次世代の生物を創造する情報が蓄えられているのです。染色体内の遺伝情報は、まとめてゲノムとして知られています。

その細胞核の周りを核膜という別の薄い膜が包んでいます。細胞を細胞質で満ちた嚢や袋(細胞膜)と考えると、細胞核はその細胞質内にあるさらに小さな袋となります。多細胞生物の細胞だけでなく、単細胞生物の多くにもこうした細胞核があります。

最後に、細胞核がある細胞から成る生物群を、真核生物(真の核を持つ生物)といいます。ヒト、動物、植物、菌類などの多彩な群もすべてが真核生物です。次図に示したのは、典型的な(真核)細胞の各部分です。

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3.2 微生物

ほんの数個、あるいはたった1つの細胞から成る生物もいます。こうした生物は他の生物と同じく自立して生きており、とても小さいので微生物と呼ばれています。ちっぽけな多細胞生物の多くと単細胞生物類は、細胞核があるからこそ、真核細胞なのです。

単細胞の真核生物は原生生物として知られています。単細胞でも、細胞核がない生物類は原核生物(まだ核がない生物)といいます。この集団のなかでも最も重要な生物が細菌やウイルスで、単細胞生物よりもさらに小さな生き物です。ウイルスが生存し増殖するためには宿主(しゅくしゅ)を必要とします。こういったちっぽけな生物のすべてが本書の主人公だといえるでしょう!病気を惹き起こす微生物は病原菌とも呼びます。

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3.3 細胞はどのように作られているか

あらゆる細胞は、他の細胞から作られます。細胞はさまざまな方法で(2つに)分裂します。普通は核が2つにわかれ、次いで細胞質が分裂し、核が1つずつある娘細胞(じょうさいぼう)2つに分離されます。

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体内のほとんどの細胞は分裂時に接しています。こうして、さらに多くの細胞が組織内にできてゆきます。組織が増殖し、器官が育ち、ヒトが成長するのです。

図3.4にあるように、多くの微生物はたった1つの細胞から成っています。単細胞生物が分裂すると、娘細胞は互いに分離し、1つの細胞が2つの娘細胞になり、それぞれ自立して生きてゆきます(図3.6を参照)。

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-3.3.1 微生物の急激な増殖

栄養が十分にあり、湿度、温度も適当という好条件があれば、微生物(病原菌も)は20分も経たずに分裂します。1時間で3回分裂し、8つの微生物になります。6時間後には6×3=18回分裂し、約260,000個の微生物が誕生し、1日ともなると72回分裂して全部で4,700,000,000,000,000,000,000個もの微生物が生まれます。これは、想像を絶する数であり、いかに微生物が危険であるかを物語っています。わずかな時間で微生物は膨大な数に増殖するので、病気は瞬く間に全身に広まってゆくのです。

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こういった大きな数字を見てしまうと、誰もが、一日で病気にかかったり、死んだりしたりしないことは驚くべきことではないでしょうか?しかし、私たちの体には他からの攻撃に対する備えがあります、招かれざる侵入者を撃退する高度な防御システムが私たちの体には装備されています。だからこそ、ヒトが健康でいられるのです。ヒトの防衛システムについての詳細は 5.4 をご参照ください。

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微生物の増殖にも限界や停止が訪れます。その理由とは以下のようなことです。

• 数が多くなりすぎて、栄養が充分でなくなったり、すべての菌に栄養がゆきわたらなくなったりすると、細菌の大半が餓死してしまいます。

• ヒトと同じで、微生物も排泄します。増殖が進むにつれ排泄物の量が増えると有毒化する排泄物に埋もれてしまいます。これも増殖の限界となります。

• 微生物の多くは生きてゆくために酸素を必要とします。過剰に増殖しすぎると、その数に見合う酸素が得られずに死滅します。

微生物がどのように成長し増殖するかは、生物の種類、栄養、水の有無、温度など多くの要因に左右されます。


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出典:医療現場の清浄と滅菌

内容に関するお問い合わせは、株式会社名優まで。

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