ひとりだけど、ひとりじゃない
シドニーに到着した日。
私の滞在場所は中心地から電車で40分、そして最寄り駅からバスで10分程度。
日本でも同じくらい郊外に住んでいるため、移動時間は苦にならないだろうと思っていたが、移動時間以外にストレスを感じるものがあった。
それは、オーストラリアのバスのシステムだ。
オーストラリアのバスは次の停留所がアナウンスされない。
そのため、周りの景色を見てなんとなく次のバス停だな~と思ったらブザーを鳴らすという何ともアバウトなシステムだ。
(もちろんオーストラリアビギナーの私に目視確認などできるはずもなく、グーグルマップで位置情報を確認しながらブザーを押している)
このシステムが非常にストレスで、バスの中ではいつ自分の目的地に到着するのか、常に気を張っていなければならない。
初日の予定を終え、バスに乗って家まで向かう道中での事。
念のため「○○は停まりますか?」と停留所を確認すればよかったものの、運転手さんがよりによって屈強な男性で、私はビビって確認できなかった。
しかし発車後グーグルマップで確認すると、降りたいバス停とは違う方角の道に進み、しかも大きな幹線道路に入ってしまったではないか。
大パニック。(笑)
バスを間違えただけならまだしも、よりによってバス停同士の間隔がとっても広い路線に乗ってしまったのである。
見るからに慌て始めた私に強面の運転手さんが「どこに行きたいんだ!」と運転席から怒鳴る。
しかし道路の名前を伝えるも、私の発音が悪く全然伝わらない。
どうしよう...地図見せて説明するしかないかな...でも運転中だしな...。
すると運転手さんは他に乗客が乗っているにも関わらずバスを路肩に停車し、私の携帯を見ながらバス停を確認してくれたのである(!)
「次のバス停で降ろすから、〇〇ロードに行きたいって伝えるんだぞ!」何度も何度も私に繰り返し教えてくれた。
私は怖そうな見た目で運転手さんとコミュニケーションをとることを辞めてしまった。
それなのに、見ず知らずのアジア人に対して、こんなに親切に向き合ってくれるなんて。
自分の人間の小ささに反省した。
そして私は、ひとりじゃないんだと感じた。
家の最寄りのバス停に到着すると当たりは真っ暗。
初日から大変だったな、本当に自分はオーストラリアで生活出来るんだろうか。
不安から天を仰ぐように空を見上げると、日本の住宅街で見る星空とは比べ物にならないくらい、満点の星空が広がっていた。
自分の心臓の鼓動が聞こえる、手足がガクガク震える。
それでもこの場所で、色んな人に助けてもらいながら、もう少し踏ん張ってみようと思えた。