マジックの本を称賛するだけの文章(Vallarino)
注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。
タイトル: 『Vallarino』
著者: John Lovick
出版年: 2021年
ジャンル: カード、コイン
『Vallarino』は2022年にVanishing Inc.から発売された書籍で、フランスのJean-Pierre Vallarino氏の作品をまとめた作品集です。
Vallarino氏はフランスのマジシャンで、1991年のFISMに置いてMicro Magic部門の受賞もしています。Vallarino氏の独特なマジックは当時多くのマジシャンに影響を与えており、来日もしたことがあります。
本書『Vallarino』はそんなVallarino氏の作品を集めた作品集であり、約62作品が収録されています。コインマジックも含まれますが、カードマジックが主で現象は多岐に渡り、お札やグラスを使ったのもまで含まれます。また、「Ultimate MacDonald’s Aces」などのこれまでに発表された作品も掲載されており、Vallarino氏のエッセンスが詰まった1冊となっています。
本書を通じた特徴として、多くが古典的なプロットでありながらも、非常に個性的なアプローチが取られていることが挙げられます。これはとても言葉で説明することは難しいものですが、見映えのする現象でありながらも一山いくらというものではなく、彼自身の感性と美的感覚を感じるものとなっています。同時にそこに至るまでの過程にもその独自の感性が反映されており、決して見映えだけではない奥深さが潜んでいます。これは氏の魅力の1つであり、多くの作品に出会ってきた人にとっても新たな発見となるのではないかと考えています。
本書も魅力的な作品が多いため特定の作品を取り上げるというのは心苦しいのですが、この文章では特に「Four Cuts, Four Aces」「Blow Coin Assembly」についてコメントしたいと思います。
「Four Cuts, Four Aces」はVallarino氏のらしさが凝縮された作品のようにも感じています。この作品を選ぶ際は非常に迷いました。本書には 「FISM Aces」や「Flying Sandwitch」などの有名作も載っていますし、それらも素晴らしい解説がなされています。しかし、それらの素晴らしさについては周知の事実ではないかとも思いました。また、この作品を読んだときの刺激が大きかったということで、この作品を選ばせていただきました。
カットしたところからAが出てくるというタイトル通りのマジックではありますが、その中にVallarino氏らしさがたっぷりと詰まっています。彼の特徴の一つに、洗練された動きというものがあると思っています。カットというカードマジックの中では一般的な動きの中に、その洗練みを感じたのです。こういった体験があるからこそ、書籍を通じた発見には大きな喜びが伴うのだなと改めて感じた作品でもあります。
また、「Blow Coin Assembly」は本書に掲載されたコインマジックの一つであり、マジシャンが息を吹きかけるとコインの移動現象が示されます。
ここにVallarino氏が持つ別の魅力である現象に対するコミットを感じました。このコインアセンブリは本書にある他のコインアセンブリとはフェノメノンという意味で大きく異なります。息を吹きかけると現象が目の前に提示され、驚きと美しさが同時に感じられるものとなっています。
こういった現象に対するコミットは他のマジックでも見られるものですが、この作品はいくつかのバージョンが既に存在しているという点や、マジシャンにとっては慣れ親しんだプロットであるという観点からその点が分かりやすく感じられるのではないかと感じました。
最後に、本書はVanishing Inc.さんが作成していることもあり、非常にこだわった装丁をしています(Vanishing Inc.さんの本はいつもお洒落で、素敵な装丁なんです)。こういった想定の本は本棚をパッと華やかにしてくれますので、本の内容だけでなく、本自体もセンスに溢れており本棚に飾っておきたくなります。
まとめると、『Vallarino』はフランスのJean-Pierre Vallarino氏の個性と不思議と美しさに溢れた作品集であり、読んだ方にはこれまでにない視点が得られることは間違いありません。サンドイッチやエースアセンブリなどの古典的なものであっても、ページを開けば、新鮮な発見に出会えるような本となっています。
以上が『Vallarino』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。