マジックの本を称賛するだけの文章(Act Two)
注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。
タイトル: 『Act Two』
著者: Barrie Richardson
出版年: 2005年
ジャンル: カード、メンタル、その他
『Act Two』は2005年にHermetic Pressから発売された書籍で、米国のBarrie Richardson氏の作品をまとめた作品集です。
Barrie Richardson氏はアメリカのマジシャンで、どれも多くの書籍で参照される書籍であり著者の能力の高さを感じます。
本書『Act Two』はBarrie Richardson氏のマジックがまとまった書籍であり、過去に紹介した『Theater of Mind』から始まる三部作品の二部目となっています。
https://note.com/steps2022/n/n6524c92bdc7a
本書には約50の作品がメンタルマジックを中心に収録されています。前作の『Theater of Mind』でも言及しましたが、この方の大きな特徴は人を惹きつけるプレゼンテーションにあります。しかし、それだけの本ではありません。多彩な現象が多様な手法で実現されるという特徴があります。時にはカードを使い、時には名刺を使い、時にはカードを使うことでメンタルマジックという限られた世界の中で非常に多くの現象を起こしています。
本書も魅力的な作品が多いため特定の作品を取り上げるというのは心苦しいのですが、この文章では特に「Out of My Sight, But in My Mind」「Eliminate the Negative」についてコメントしたいと思います。
「Out of My Sight, But in My Mind」はカードで行われるメンタルマジックです。Dai Vernon氏の作品である「Out of Sight, Out of Mind」をベースとしていますが、Barrieさんはその中に自身のこだわりをこれでもかと詰め込んでいます。その結果、Barrieさん色の強い作品となりました。
こういった改変はこれまでもマジックの世界で行われており、今後も行われていくのだと思いますが、その中に個人の色が強く出ているものはいつも、楽しい気持ちになります。それは他とは違うを目指した結果かもしれませんし、自分の理想を追い求めた結果かもしれません。共通することはその中に意志を感じるということです。年間何冊も何冊も読んでいくと意志を感じられないことが多くあります。これは近年の方が多いと考える人もいるかもしれませんが、私が読んでいた本の年代を見ると、単に年代の違いだけではなく、年々、篩の網目が粗くなったように思います。そのため、最近は特にそういった意志を感じる作品に目がいくようになりました。Barrieさんの作品には意志を感じることが多いのですが、本作品はその中でもわかりやすい例ではないかと思っています。私と同じように感じる人にはおすすめの作品です。
また、「Post-It Note Center Tear」は非常に有益な項目となっています。20年前、スマートフォンという存在はなく、ガラケーと呼ばれるようになった携帯電話だけでした。また、現在ではユビキタスなインターネットという存在も、それより以前の世界ではありませんでした。このように、日常にありふれた存在というものは時代とともに移り変わります。その中でマジックも環境に合わせた適応が必要となります。本作品はそのような事例の好例となっていて、読んでいるとBarrieさんのセンスに脱帽します。あまりハードルを上げると、読んだ際になぁんだとガッカリされることもありますが、このような発想は自分がこの本を読むまでに出会っていない、思いついていないことを考えるとやはり、良いものなのだと感心するのです。少し目線を変える、少し視野を広げる、頭を柔らかくするということを改めて教えてくれる作品となっています。
最後に、本書にはDavid Hoy氏やDavid Burglas氏の逸話のようなものも収録されており、非常に刺激的で意義深いものとなっています。他の名作や見るべきアイディアが多くあるので、それだけで本の価格だけの価値があるとまでは言いませんが、これらの逸話を読み逃してはもったいないと思います。
まとめると、『Act Two』はアメリカのBarrie Richardson氏の『Theater of Mind』に続く名著であり、メンタルマジックが好きな方や良作に触れたい方にはお勧めできる書籍となっています。
以上が『Act Two』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。