マジックの本を称賛するだけの文章(ユージン・バーガー マジック・コレクション)
注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。
タイトル: 『ユージン・バーガー マジック・コレクション』
著者: ユージン・バーガー、リチャード・カウフマン
翻訳:角矢 幸繁
出版年: 2021年
ジャンル: カード、その他
『ユージン・バーガー マジック・コレクション』はユージン・バーガー氏の作品をまとめた作品集です。
ユージン・バーガー氏は米国のマジシャンで、クロースアップマジックを専門としています。各国に招聘されてレクチャーを行った実績を持つ方であると同時に、前職では哲学や宗教の授業を行なっていたかたでもあります。
本書『ユージン・バーガー マジック・コレクション』はそんなユージン・バーガーさんの代表作を集めた作品集であり、約30作品のスポンジマジックが収録されています。カードマジックを主にしていますが、現象は多岐に渡り、お札やグラスを使ったのもまで含まれます。
また、本書の大きな特徴としては、スピリット・シアターに関する記述が挙げられます。心霊現象が大きなブームだった頃はありましたが、今ではとんと見なくなりました。その失われつつある技術が記載されているということには大きな意義があります。これは単にコンテンツという観点だけではなく、演出という意味でも学びの多いものになっています。さらに、彼のシグニチャ・ピースであるホーンテッド・パックやジプシー・スレッドにも言及されており、ベストアルバムとも言える書籍になっています。
本書も魅力的な作品が多いため特定の作品を取り上げるというのは心苦しいのですが、この文章では特に「悪魔のデック」「カード・スタッブの手順」についてコメントしたいと思います。
「悪魔のデック」はユージンさんらしい作品だと思います。現象のダイレクトさ、手法の選択の妙、ハンドリングのクレバーさなどどれをとっても彼らしさに溢れています。これらの観点は作品の色を決めるものだとも思いますが、どれをとっても一級品の選美眼であることは疑いようがありません。
まず、現象については選ばれたカードが表向きになるというものですが、彼らしいサプライズがついています。このサプライズは現象にドラマ性を加えるという意味で大きな役割を果たしています。さらに、そこに辿り着く経路もクリーンで、賢いため、怪しさの無いものになっています。ユージンさんを知るという意味では、この作品を知るだけでも大きな価値のあるものだと考えています。
また、「カード・スタッブの手順」は本書の中では異質なもののようにも感じています。まず、この本は全体を通じてユージンさんを体現する作品が多く含まれています。そのため、人によっては好みに合わないと感じることもありえます。その中でこの作品と「ロッシーニのダブル・リバース」はアクセスのしやすい作品になってるように感じています。
カード・スタッブはテーマから現象に至るまで、大きなインパクトを生む作品ですが、そこに彼の感性が加わることでそのインパクトが大きく膨れ上がりました。この本を読んでユージンさんの独特なハンドリングに驚いた方も、この作品をとっかかりにユージンさんを知ることができるようにも感じます。
翻訳作品では、毎回書いていることですが、今回も日本語であること自体に大きな価値が存在しています。今回も角矢さんの明快な日本語訳のおかげで、スッと理解できるようになっており、本書の価値を上げています。
まとめると、『ユージン・バーガー マジック・コレクション』はアメリカのユージン・バーガーさんの良さと魅力が詰まった、彼のベストアルバムと言ってもよい書籍です。強烈なカードマジックを求める方にオススメできる一冊となっています。
以上が『ユージン・バーガー マジック・コレクション』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。