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損する人が「誰もいない」? STEPNに潜む基本の罠

このnoteでは、STEPNの色々な話題について「ちょっと深読みなんじゃないの?」と思うくらい考察を重ね、運営の意図に迫っていきたいと思います。
……が、今回はちょっと番外編で、BCGにひそむ罠の話をしたいと思います。
わりと初心者向けの記事です。

〈今回の要点〉
BCGは仕組み上、損してる人が誰もいない状態が続く
誰かが「損し始めた」ときには、もう誰にも止められない……
→だからこそコミュニティを大事に

「誰も損しない」ユートピア

皆さん、STEPNはプレイしていますか?
毎日歩くだけでお金が稼げる、素晴らしいBCG(ブロックチェーン・ゲーム)です。
世の中でお金を稼ぐためには、ふつう働いて誰かの役に立つ、つまり他者の需要に対して供給を与える必要があります。
しかし、STEPNではそんなことをする必要もなくお金がたまっていきますよね。

働かなくてもいい

ところが、ここでちょっと考えてみましょう。
あなたが受け取るそのお金は、いったいどこから出てきているのでしょうか
だれかが得をするということは、反対に損をしている人がどこかにいるはずです。
そこで、簡単にSTEPNの仕組みを考えてみましょう。
(以下の話は、STEPNに限らず他のBCGにも共通で言えることです)

STEPNでは、まず最初に靴のアイテムを買う必要があります。
参加料みたいなものですね。
この靴のアイテムを買うために、Aさんがまず10万円を払うとします。
そうするとAさんは、10万円を失う代わりに10万円分の靴を手に入れることができます。
この時点では、その靴のアイテムは10万円ぶんの価値を持っているので、Aさんは損をしていません。
つまり、Aさんの総資産額は、靴を買う前後で10万円のまま変化していません
Aさんは、STEPNをやめたくなったらいつでも、靴をもとの現金10万円に戻す(靴を10万円で売る)ことができますからね。

このあと、BさんとCさんもSTEPNに参加し靴を10万円で買ったとします。
前からSTEPNをやっていたAさんは、すでに毎日歩いて2万円の稼ぎを得ています
この2万円は、BさんやCさんといった新規プレイヤーの靴購入費から出されてます。
一方、新しく入ってきたBさんやCさんも、この時点では損をしていません
10万円のお金を10万円分の靴に買えただけで、総資産額は変化していないからです。

さらにこのあと、Dさん・Eさん・FさんもSTEPNに参加し靴を10万円で買ったとします。
前からSTEPNをやっていたAさん・Bさん・Cさんは、毎日歩いてやはり2万円ずつの利益を得ています
そのお金は、D・E・Fさんのような新規プレイヤーのお金から出されています。
一方、新しく入ってきたDさん・Eさん・Fさんも、やはり損をしていません
総資産額は10万円のままです。

このように、いつまでたっても損をしている人が現れないのです。
それなのに、A・B・Cさんたちは利益を生み、得をしているように見えます。

さあ、あなたはどう思いますか?
「誰も損しないなんて、素晴らしい仕組み!」
なんて思わないでくださいね。
この仕組みこそ、STEPNをはじめとしたBCGすべてに潜む最も基本的な、そして恐ろしい罠なのです。

”ポンジスキーム的”しくみの中で

STEPNや他のあらゆるBCGは、よく
ポンジスキームだ」
と批判されます。
ポンジスキームとは、ざっくり簡単にいうと

先にお金を出して入っていた人が、後から入ってきた人の入会料を分配されることで、儲けられる仕組み

のことです。
一番わかりやすい例は、年金でしょう。
年金制度は、自分が若い時に払った金額以上のお金を老後に受け取れる仕組みです。
その利益の出どころはどこかというと、まさに今の若者が支払っている年金、というわけです。
もし仮に、日本の若者が突然0人になったとすると、年金を払う人がいないので老人は年金を受け取ることができなくなります

ただ、厳密な意味でのポンジスキームは、出資者から集めたお金を一切運用しません
運用しないということは、何かしらの価値を生み出したり、誰かの需要に応えたり、お金を増やそうとしてみたり……といったことを全くしない、ということです。
単純に、後から来た人のお金を前からいる人へ、後から前へ、後から前へ、と繰り返すだけです。
したがって、「後から来た人」の人数が「前からいる人」より少なくなった瞬間に、この仕組みは崩壊します
分配するべきお金が足りなくなってしまうからですね。
実際、日本の年金制度は若者の数が老人の数よりも少なくなったことで崩壊しかけていますよね?

年金制度、限界!

一方、STEPNは少なくとも資金を運用しているようなので、厳密にはポンジスキームではありません。
とはいえ、「後から来た人のお金を先にいた人に分配する」という仕組みになっているのは事実なので、これを”ポンジスキーム的”と言い表すことにしましょう。

さて、話を戻します。
STEPNの仕組みの中では、まるで誰も損をしていないかのようでした。
この現象は、べつにSTEPNだけではなく、他のあらゆるポンジスキーム的なコンテンツにおいて起こりえる現象です。
このカラクリを紐解いていきましょう。

気づいたら、もう

ポンジスキーム的なしくみは、「後から来た人」の数が「先にいた人」の数を割った時に崩壊します。
崩壊した時にどうなるか、先ほどの図を見ながら考えてみましょう。

先ほどの図

この図の続きを考えてみます。
仮に、D・E・Fさんの後に誰も新規プレイヤーが入ってこなかったとします。
「10万円払ってまでSTEPNをやりたい!」
という人がもういなくなってしまった、というシナリオです。
この時、D・E・Fさんが持っている靴の価値はどうなるでしょうか

そもそも、靴とは「STEPNでお金を稼ぐために必要なアイテム」です。
逆に言えば、靴を持っていてもお金を稼げないなら、その靴に価値はありません
そして、D・E・Fさんの後に誰も新規プレイヤーが入ってこなかった、という今の状況では、まさに靴を持っていてもお金を稼げないことになります。
「後から来た人」の数が「先にいた人」の数を割っているからですね。

こういうわけで、D・E・Fさんが持っている靴の価値は0円になり、損害を被りました

さらに、利益を得ていたはずのB・Cさんも、靴の価値が0円になったことで損害を被りました

一方、最も早くSTEPNをはじめていたAさんは、靴の価値が高いうちに靴を売っていたので、利益を得ることができました。

いかがでしょう。
ほんの少し前のタイミングでは、確かに誰も損をしていなかったはずです。
それが、少し目を離したスキに、得する人・損する人にはっきり分かれてしまう
これがBCGの本質です。

そして、現状のSTEPNではまだ損している人がいない状況です。
いずれその時が来れば、今説明したように、一番最後にSTEPNを始めた人がいきなり損を被ることになります。
そして、その時にはもう手遅れになっています。
靴を10万円で売ろうと思っても、すでに靴に10万円の価値はないからです。

「含み益は幻」の重み

ここまで話してきた内容は、
「含み益は幻」
という一言でまとめることもできます。
しかし、漠然とそう唱えるだけでは、きちんと現状を理解できないということもあります。
まさしく「幻」である含み益によって、STEPNをはじめとしたBCGは、長い間誰も損していない状況を作り上げるでしょう。
しかし、その本当の意味に気付かない限り、かなり危険な局面と隣り合わせになってしまうかもしれません。

結局どうしたらいいのか

それでは、STEPNをはじめとしたBCGはいつ爆発するか分からない時限爆弾にすぎないのでしょうか?

そうならないように、こうしたBCGにこそ健全なコミュニティが形成される必要があるのです。
もし、ゲームをプレイしている人たちがコミュニティを形成せず、個人プレイに徹すれば、プレイヤー数は伸びることなく、すぐに頭打ちとなってしまうでしょう。
しかし、例えばSTEPNは家族とプレイしている人がいたり、友達に靴を貸している人がいたり、わたしたち「STEPN Local Club 東山」のようなローカルな繋がりがちらほらと発生しています。
こうしたコミュニティが広がっていくことで、プレイヤーが継続的に増え、今後も増えていく見通しがある、という状況になれば、STEPNは持続可能なBものになっていくかも知れません。

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