日本の世界自然遺産について
今回は、世界遺産について書かせていただきます。
みなさんは、世界遺産について調べたことはありますか?
日本には、世界遺産がいくつあるのか・そもそもどのように選出しているのか知っていますか?
ぜひご一読いただけたら幸いです。
世界遺産とは
各国で、戦争や自然災害、密漁などにより、貴重な文化的資源や自然が失われている現状がありました。
そこで、国際平和と人類の福祉の促進を目的とするユネスコ(国際連合教育科学文化機関) は、1972年第17回UNESCO総会にて「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)を採択することにしました。
各国で、貴重な文化的遺産や自然を、国際協力で守ろうとしたのです。
そして、その思いに賛同した国は、「世界遺産条約」を批准しています。
現在では、196か国が世界遺産条約の締約国となっています。(未だ、締約していない国や地域もあります)
つまり、世界遺産とは、「地球の生成」と「人類の歴史」によって生み出され、過去から現在、そして未来に引き継いでいくべきかけがえのない宝物であり、
”人類共通の遺産”として国際的に保護・保全しているものになります。
2024年7月現在、世界遺産は1223件に上り、世界中で数多くの文化的資源や自然が守られています。
どのように登録されるの?
世界遺産に登録されるためには、まず「世界遺産の登録基準」のいずれか満たす必要があります。
以下の画像をご覧ください。
(ⅰ)〜(x)までの、10つのうちから、一つ以上を満たす必要があります。
ちなみに、(ⅰ)〜(vi)までの6つの中のいずれかに該当した場合は、「文化遺産」となります。
また、(vii)〜(x)までの4つの中からいずれかに該当した場合は、「自然遺産」となります。
さらに、「文化遺産」と「自然遺産」の双方の性質を持っている場合は、「複合遺産」として登録されます。
しかし、登録基準を満たすだけではいけません。
完全性(インテグリティ)と真正性(オーセンティシティ)を満たす必要もあります。
「完全性」とは、①物件に顕著な普遍的価値が発揮されるのに必要な要素がすべて含まれているか
②遺産の重要性を示す特徴を不足なく代表するために、適切な大きさが確保されているか
③開発あるいは管理放棄による負の影響を受けていないか
④長期的な保護のための法律などの制度が確保されているか
などの条件を満たす必要があります。
「真正性」とは、主に文化遺産に求められるもので、建造物や遺跡が本当の芸術的・歴史的価値を保っているかどうかを指します。
特に修復などが行われた物件の場合には、できるだけ創建時の建造物と同じ材料を使用し、構造、工法を採用する必要があります。
よって、「登録基準」「完全性」「真正性」を全て満たしていると認められた時にはじめて、年に1回開催されるユネスコの政府間委員会で世界遺産として“採択”されます。
日本の世界遺産は?
日本の世界遺産は、文化遺産21件、自然遺産5件の計26件の世界遺産が登録されています。
自然遺産が少なく、「白神山地」「屋久島」「知床」「小笠原諸島」「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の5つしかありません。
そして、日本には、まだ文化的遺産と自然遺産の両方を満たす、「複合遺産」はありません。
さらに、唯一日本で選ばれたことがない「世界遺産登録基準」があります。
それは、(viii)『地球の歴史上の主要段階を証明する遺産』です。
これは、生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などに関しての登録基準です。
日本は、活火山なども多く地震も発生しやすいので、いずれ(viii)に該当するような世界遺産登録を狙っていくのではないかと勝手に思っています。
富士山は文化遺産?
最後に、富士山について書きたいと思います。
なぜなら、富士山が自然遺産と間違えてしまう人が多いからです。富士山はなぜ、自然遺産ではなく、文化遺産として選ばれたのでしょうか。
もともと、世界自然遺産への登録を考えていたそうです。
自然遺産に登録される場合、地域の自然が人間の活動によって長期間にわたって形成・維持された場所が対象となります。
ですが、富士山は長い間、観光客や登山者の増加など人間の活動による影響を受けてきました。
このような人間の影響が、自然の純粋さや自然現象の美しさに足りていないという評価になったと考えられています。
実際に、当時の富士山は、不法投棄などのゴミ問題や、登山者によるし尿問題など、人間による自然破壊行為が大きな問題となっていました。
現在では改善傾向にあるとされていますが、こうした人間による自然の破壊行為が登録に至らない大きな要因となっています。
また、世界的に見たら、富士山の形や火山活動がそれほど珍しくないのも言われていました。
以上のことから、国内の検討会で、「厳しい」という決断にならざるを得なかったのです。
ですが、昔から、富士山に住むとされていた神仏への信仰から敬われていたり、高く美しく荘厳な姿から、日本では文化的な意義として親しまれていました。
江戸時代には、葛飾北斎の『富嶽三十六景』や歌川広重の『東海道五十三次』などの浮世絵には富士山も描かれています。
ゴッホやモネなどの印象派の画家は、これらの浮世絵から大きな影響も受けたほどです。
このことが評価され、富士山は、登録基準(iii)『文明や時代の証拠を示す遺産』、(vi)『人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術と関係する遺産』
を満たし、文化遺産として登録されたのです。
今回は、世界遺産について書かせていただきました。
来週からは、日本で5つしかない「世界自然遺産」について、順番に解説できたらなと思っています。
来週もよろしくお願いします。
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