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世界自然遺産〜白神山地〜


「白神山地」の所在地

環境省HP 日本の世界遺産

 白神山地は、1993年に屋久島と同時に、日本初の世界自然遺産として登録されました。青森県南西部と秋田県北西部の県境にまたがる標高約200m から1,250m 以上に及ぶ山岳地帯の総称です。その中でも、白神山地の中心部に位置する約17,000ha の地域で、広大で原生的なブナ林が残されています。「白神山地=ブナの原生林」というイメージが強いと思います。

 日本では、さまざまな場所で「森林」がみられます。特に、私たちが暮らしている北海道では、「森林」は珍しいものではなく、身近なところにあります。しかし、「原生林」と呼ばれる森林は、日本の中でも国土の4%しかありません。では、この「原生林」とはなんなのでしょう?

 森林は、大きく「人工林」「天然林」「原生林」に分かれます。「人工林」は人が植樹することでできた森です。木材として利用する木々を育てることが目的とされています。では、「天然林」「原生林」は何が違うのでしょう。

 「天然林」とは、伐採など人の手が加わわりつつも、自然の力が維持されている(人の力がなくても維持される)森林です。一方、「原生林」は、過去に人によって伐採されたことがない、人の影響を全く受けていない森林のことです。日本の有名な原生林は、「白神山地」や「知床」、「屋久島」など。やはり、世界遺産に登録されるような貴重な場所にのみ残っている森林です。

原生林が残る白神山地

「白神山地」が世界遺産に登録されたわけ

 ブナの原生林が残る白神山地が世界遺産に登録された理由は、登録基準の(ⅸ)によります。
 白神山地のブナ林は純度の高さやすぐれた原生状態の保存、動植物相の多様性で世界的に特異な森林であり、氷河期以降の新しいブナ林の東アジアにおける代表的なものである等の理由から、世界遺産となりました。

世界遺産の登録基準

この中の「すぐれた原生状態の保存」というのがどういう意味なのか気になり、調べてみました。

 ブナ林はかつて地球が今よりも温暖だった時代には北極周辺に分布していました。ブナ林では、ブナ以外のさまざまな生態系も含めて、維持されていました。

 その後、地球が氷河期に入ると、気候の寒冷化に対応してブナ林が南へと移動しましたが、この際、ヨーロッパなど世界の多くの地域ではブナ以外の植物は東西に広がる山岳に妨げられて南下することができませんでした。環境の変化に対応できるタイプのブナや動植物だけが南下し、ブナ林の植生が単純化していったそうです。

 しかし、日本では、分布の南下を妨げる山岳がなかったため、北極周辺での植物群落の種組成をほぼ維持したまま南下しました。そのため、白神山地は約3,000万年前に北極周辺に分布していた当時に近い特異なブナ林が維持されているそうです。

「白神山地」で出会える命

 白神山地は約5,000万年前の北極周辺の植生に近いブナ原生林が今でも見られます。

 国の天然記念物イヌワシやクマゲラなど94 種の鳥類、国の特別天然記念物のニホンカモシカなど14 種の中大型哺乳類、約2,000 種の昆虫類など価値の高い自然体系が保たれています。

ブナ

ブナ林
ブナの幹
ブナの葉
ブナの実

 ブナは落葉樹でもあることから、森の土の生育や保水機能にも大きな役割を果たしているます。また、他の樹木とともに、野生動物の重要な食物として利用されています。まさに、ブナがあるからこそ成り立っている生態系なのです。

アオモリマンテマ
 青森県で初めて見つかったナデシコ科の植物で、6月頃に直径2cmくらいの可憐な白い花を咲かせます。とても可憐な姿です。

ツガルミセバヤ
 青森県で初めて見つかったベンケイソウ科の植物で、崩壊斜面や岩場に生育していて、10月頃に白い花を咲かせます。ベンケイソウときくと、やはり過酷な環境でも生き残ってきたのかなと、想像してしまいます。

カモシカ
 大型の草食哺乳類で、シカの仲間ではなくウシ科の仲間。原始的な種類で、生きた化石ともいえます。日本にのみ生息し、国の特別天然記念物に指定されています。神々しい姿で、いつか見てみたいと強く思う動物のひとつです。

⑤ヤマネ
ネズミ目の小動物。夜行性でおもに樹上で活動します。冬は樹洞などでボールのように体を丸めて冬眠します。日本にのみ生息する珍しい動物で、国の天然記念物に指定されています。とても可愛いですよね。

⑥クマゲラ
 国内のキツツキの仲間では最も大きなもので、北海道と本州北部に生息しています。カラスくらいの大きさで、体色は黒。オスは頭部全体が、メスは後頭部が赤い。国の天然記念物に指定されています。また、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類(VU)とされています。

⑦イヌワシ
 翼長2mを超える大型のワシ。後頭部に金色の羽があります。山岳地帯に生息し、切り立った崖に営巣しています。個体数はかなり少なく、国の天然記念物及び国内希少種に指定されています。また、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種とされています。

⑧クマタカ
翼長1.6mくらい。後頭部に冠羽があり、頭部が角張って見えます。山地の森林に生息しています。個体数はかなり少なく、国内希少種に指定されています。また、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種とされています。 

絶滅が危惧されている大型鳥類が数多くいるということは、やはり、白神山地にはその前提として、豊かな生態系、生命が残っていることを実感します。

⑨シノリガモ
従来、冬期間日本に渡来する海ガモと考えられていましたが、白神山地の赤石川で繁殖していることが日本で初めて確認され、その生態が注目されています。

以上、白神山地の紹介でした。
次回は、今回紹介した白神山地と同時に世界遺産に登録された、「屋久島」について、紹介します。私たちは前回紹介した「知床」には、行ったことがなん度もありますが、それ以外の世界遺産にはまだ行ったことがありません。
年度末に、念願の屋久島に行く予定を計画しているので、皆さんにも屋久島について知っていただけたら嬉しいです!!

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