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シルバニアファミリーのひつじの赤ちゃんに出会ってしまった話

シルバニアファミリーは前からもちろん可愛いと思ってはいた。「シルバニア・森のキッチン」にはなぜか3回くらい行ったこともあったけど、ごはんを食べてるとたまに登場するショコラうさぎちゃんの着ぐるみはちょっと巨大すぎるなとは感じていた。あくまで一般人の視点での普通の感想だ。シルバニアの赤ちゃんを持ち歩いている人がいるという話もネットで耳にしたことがある。そのころはまだ「気持ちはわかるけど相当だな」程度にしか思っていなかったのだ。

ある週末の昼下がり。くるみリスの赤ちゃんとショコラうさぎの赤ちゃんと、そして緑のロンパースを着た小さいひつじの赤ちゃんがそこになぜかいた。我が家に。唐突であった。リスちゃんもうさちゃんもとても可愛かったけど想定内だったからそこまで心を動かされることは無かった。シルバニアファミリーってこういうものでしょ?っていう。
でもひつじの赤ちゃんだけ違ったんですよ! まず頭が大きい。なので頭身が低くなっていたいけな印象がすごい。そしてほっぺから口にかけてのもこもこっとした曲線が可愛すぎるのである。その時私はシルバニアの赤ちゃんを持ち歩く人の気持ちを心の底から理解してしまった。

ネットで調べたらひつじの赤ちゃんのお名前はエマちゃんだった。立派なお名前。でも公式webには「みどり色の服を着たかわいいヒツジの赤ちゃんです」と見たままのことしか書かれていない。他の子たちはもう少しいろんな情報が書いてあるのだ、好きなものとか家族のこととか……。この時点で私はエマちゃんのことがちょっと不憫でならなくなっていた。

知っている人にとっては常識なのだが、シルバニア村の住民たちにはそれぞれのエピソードがあって、小さな絵本として商品に付いてくる。そのお話は公式でも読むことができる。
エマちゃんのお話は「はじめてのお友だち」というタイトルだ。
大抵の子たちのおはなしは、家族との微笑ましいエピソードやちょっとした可愛い騒動などで登場人物も多いし添えられた写真も賑やか。
でもエマちゃんのおはなしはちょっと他の子とは変わっている。
実をつけることをやめてしまったかわいそうなリンゴの木と、まだお友だちのいないエマちゃんのお話。
家族や仲間に囲まれて過ごすエピソードが多い「森のおはなし」では極めて珍しいシチュエーションかもしれない。基本的に他の赤ちゃんたちのおはなしは、一言で言うなら赤ちゃんが家族やシルバニア村のひとたちから愛され慈しまれるエピソードなのだが、エマちゃんのおはなしは逆で、エマちゃんがリンゴの木に愛情を注ぐおはなしなのだ。
ー与えられるのではなく与える。ー
扉の写真の小さなエマちゃんは黄色いじょうろを持ってたった一人でリンゴの木に微笑みかけている。その写真の印象が私のなかに強く焼き付いた。この時点で、私にとってエマちゃんは単なる子ども向けのかわいいおもちゃの人形ではなくなったのだった。

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