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Re・Birth⑨

春休みに入ると、美麗はマンションの近くの中学校に行き、校長に事情を説明し、小次郎の体の事は内密にしてもらい、転校手続きを済ませてきた。そこは、忍と洋次が通っている中学校だった。

3月末頃、小次郎は一旦祖父母の住む町に戻った。
同級生達に見つからないよう、自分の荷物を整理し(今まで着ていた服などは、姉妹達や忍に譲る事にして)、必要な物だけダンボールに詰め、引っ越し業者のトラックに積み込むと、ひと足先に札幌に向かった。
美麗は、今住んでいるマンションで一緒に住むには部屋が足りないからと、近くのマンションにもう一つ部屋を借り、そこに小次郎を住まわせる事にした…。

引っ越しの荷物が札幌のマンションに届いたのは深夜だった為、小次郎は、次の日から早速荷解きを始めた。忍と洋次も、春休み中という事もあり、朝早くから手伝いに来ていた。
「春休みなのに、悪いな、二人とも…」
「いいよ、どうせ何も予定入れてなかったし…。それより、オレと同じ中学校に転校するんでしょ? 同じクラスだったらいいね♪」
忍は、何だか嬉しそうにダンボールの中から荷物を出していた。そして、小次郎の衣類が少ない事に気付いた。
「…そういえば、植村さん、体の状態が落ち着くまで、新しい服とか買ってなかったんじゃない?」
「そうだよな…。植村、普段着とか、まだ新しく揃えてないんじゃないのか?」
「ああ、そういや…。母さんからは、早く新しいの揃えろって言われてて、一応お金は貰ってたけど、通院とかで忙しくて、まだ…」
小次郎は、とりあえず姉のバンド仲間の着なくなった服を借りて着ていたが、体の成長が著しく、借りた服ももう小さくなっていた。洋次から借りようとも思っていたが、洋次より背が伸びてしまったので、それも出来なくなっていた。
「じゃあ、ひと通り部屋の中が片付いたら、一緒に服とか見に行かない?」
「…そうだな…。どっちみち俺一人じゃ、どういうトコ見に行ったらいいかわかんないしな…」
「俺も♪ いつも行ってる店あるから、案内しようか♪ 忍だけの案内じゃ、不安だろ?」
「…確かにな…」
「ちょっと、何それ〜っ! 植村さんまでっ!」
忍は、プーッと膨れっ面をした。
三人は、急いで荷物を片付けると、お昼を食べに行くついでに、街に出る事にした。
小次郎と忍が腕を組んで歩いていると、すれ違う女性達が、振り向いて、小次郎を見て、頬を赤くした。
「俺達、どう見られてんのかねぇ…」
「案外とオレ、植村さんの彼女に見られてたりして♪」
「バカッ…!」
小次郎が頬を赤くしたので、忍はクスクスと笑った。
「ちょっと〜、お二人さん〜っ! 俺もいるんだけど〜っ!」
洋次は呆れた表情をして、一緒に歩いていた…。

その日、マンションに帰ったのは、午後8時近くになってからで、忍と洋次はマンションに泊まり、三人は夜中まで起きて、いろいろ話していた…。

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