R・I・S・K⑫ ⚠️若干の残酷描写有り、注意⚠️

司がタイマンでDark・Tigerに負けて、番長の座を退いた事は、札幌市内や近郊の不良達の間にまで知れ渡った。
また、好美がDark・Tigerとして番長になった事によって、不良グループの仲間も、皆、司から離れてしまっていた。
他校の不良や、敵対していた連中は、司が街中を歩いているのを見つけると、司に罵声を浴びせたり、暴言を吐いたりしていた。
「この腰抜け〜っ」
1人は、司の顔にツバをかけ、そう言い捨てた。
ーーくそっ…! これというのも、全てあの女のせいでっ…!ーー
司は、好美に復讐心を燃やしながら、街中を当てもなくうろついていた。
その時…、
後ろから歩いてきた数人の少年達が、司を取り囲み、いきなり蹴飛ばした。
驚いて顔を上げると、それは、司に『不意打ち』に遭った上級生だった。
「せっ、先輩じゃないっすかっ…」
司がうろたえながら言うと、その少年は、ニヤッと笑った後、次の瞬間、キッ!と司を睨みつけ、
「後輩から話聞いたんだけどよ、不意打ちしたの、お前だったんだって…? 随分とナメたマネ、してくれたじゃないかっ…!」
そう言うと、少年は仲間と一緒に、司にヤキ入れした。
その最中、司の方へ歩いてくる、1人の中年男がいた。
ーーやっと、見つけたぞっ…!ーー
男は、上着のポケットに手を入れたまま、司の方へ近づいてきた。
少年達は、その男を見て顔を蒼くし、腰を抜かしそうになりながら逃げていった。
「うっ…!」
その男は、あの暴力教師の大瀬だった…。
大瀬は、司達から集団リンチを受けた後、生徒達に対して暴力を振るっていた事がバレて『懲戒免職』となり、教師としての資格を剥奪されてしまったのである。
更に、ショックを受けた妻と子供達は、大瀬のもとを去ってしまい、大瀬の、司達に対する『逆恨み』は、計り知れなかった。
「お前らみたいな人間のクズは、俺がこの場で成敗してやるっ…!」
大瀬はそう言いながら、自宅から持ってきた出刃包丁を、ゆっくりポケットから取り出し、握りしめると、不気味な笑みを浮かべた。
「やっ、やめろっ…!」
司は、恐怖のあまり腰が抜け、動けなくなってしまった。
次の瞬間、大瀬は司の腹にめがけて包丁を振り下ろした。
「この虫ケラどもがーっ…!」
大瀬は、気でも狂ったかのように笑い叫びながら、抵抗出来なくなった司の体を、何度も突き刺した。
警察が駆けつけた時、大瀬は身体じゅうに返り血を浴び、笑っていた。大瀬はすぐに、殺人未遂の現行犯で逮捕された。
司は、救急車で運ばれ、一命を取りとめたものの、ショックのあまり気が狂ってしまい、傷がある程度軽くなると、精神科病棟へ移された…。

数日後…、
病院にお見舞いに来ていた文人から、司の話を聞かされた竜次は、背筋がゾッとした。
ーー一歩間違えてたら、俺と洋次も…ーー
そう思いながら、窓の外の景色を眺めていた。
「植村さんね、番長を引き受けたみたい♪ これからは、今までみたいなカツアゲとか、集団リンチとかさせないって、そう言ってたよ♪」
「…そうか…。アネゴなら、大丈夫だろう…」
竜次は、フッと笑いながらそう言った。
文人は、眠くなったのか、あくびをしながら竜次のベッドに潜り込んだ。
「あったか〜い…♪」
文人は、ニコッと笑いながら、スヤスヤと眠ってしまった。
「おいっ、文人っ…?」
竜次は、慌てて起こそうとしたが、文人が気持ち良さそうに眠ってしまったので、やめておいた。竜次は、文人の安心しきった寝顔を見て、顔を真っ赤にした。
ーーまったく…ーー
竜次は、文人を思わずギュッと抱きしめたまま、そのままウトウトと眠ってしまった。
その時…、
珍しくお見舞いに来た好美達は、病室に入ろうとした際、2人の様子を見てしまい、足音を立てないよう、ソ〜ッと入ってきた。
「ホント、仲良いんだね〜♪」
好美は、小声でそう言い、笑い出しそうになるのを必死で堪えていた。
「あっ♪ そ〜うだ♪」
洋次は、カバンの中からチェキカメラを取り出し、ニヤッと笑みを浮かべた。そして、2人の寝顔を、何枚か撮った。
「ちょっと、洋次、やめなってば…!」
忍も、そう言いつつ、笑いすぎてお腹が痛くなってきた。
3人は我慢の限界になり、急いで病室を出てロビーに来ると、一斉に笑い出した。


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