R・I・S・K⑥

数日後、司は再び仲間達を空き地に集めた。
「要するに、何十人かに小分けしたから、こないだは失敗した…。だが、今度は数百人でまとめて取り囲む事にした…」
司は、プライドとか意地とか関係なくなり、とにかく、3人組を捕まえようと考えていた。
「いいか? 必要なら武器を使ってもかまわんっ! 今度という今度は、絶対しくじるなっ!」
司は、仲間達にそれぞれ用意したナイフや鉄パイプ、金属バットなどを手渡した。
竜次と洋次も例外なく、ナイフを手渡された。
ーーこんな事続けて、俺は…ーー
竜次は、苦悩の表情を浮かべ、ナイフを見つめていた。先日見た夢のせいか、迷いが生じてきていたからである。だが、今更、後戻り出来ないという事も、十分わかっていた。
ーー竜次、お前…?ーー
洋次は、竜次の表情を見逃さなかった。そして、洋次も、司から手渡されたナイフを見つめながら苦悩し、自分を恥じていた。
「今度の日曜、作戦を実行するからなっ…!」
司がそう言うと、洋次は固まった。
ーー今度の日曜って…、マジでっ…?ーー
その日は、好美とタイマン勝負する日である。洋次が困惑した表情をしているのを、司は見逃さなかった。
「どうした? 何か言いたい事があるなら言ってみろっ…」
司がそう言うと、皆が一斉に洋次の方を見た。
「いや、あのっ…。俺、その日に先約が入って…」
「バカヤローッ! そんなモノ、断ってこいっ!」
司は思わず怒鳴り声を上げた。

数時間後、洋次はいつもの公園に来た。
すると、やはり好美達がいた。
「決闘は、今度の日曜なんじゃないの…?」
好美がそう言うと、洋次が気まずそうな表情をしていた。
「…今度の日曜、風間さんが仲間をこないだより多く集めて、何が何でもお前らを捕まえるって…」
洋次はそう言うと、ブランコに座り、うつむいた。
「今度は、一度に数百人ぐらいで取り囲むつもりらしい。それから…」
そう言いながら、洋次は、司から手渡されたナイフを取り出し、唇をギュッと噛みしめた。
「俺ら全員、風間さんからナイフとかの武器を持つよう、手渡されたっ…!」
好美と忍はその事を聞かされても、動揺しなかったが…、
竜次もナイフを持たされたと聞き、文人は愕然としていた。
「…やっぱり、そう出てきたみたいね…」
好美は、司が武器を使ってくる事を、予測していたのである。
「俺は、受けた恩を仇で返すような、そんなマネだけはしたくないっ! だから、今までは、多少の事は黙って見てきたんだっ! けど、大人数集めて、全員に武器まで持たせて、そこまでしてお前らを捕まえようとするなんてっ…、そんなの、卑怯以外の何者でもないだろっ…? 俺は、こんなモノを使ってまで、お前を倒したくなんかないっ…!」
洋次は、そう叫んでナイフを地面に叩きつけた。苦悩の表情を浮かべて…。
「…どうすればいいか、自分でよく考えるんだね…」
好美がそう言うと、洋次は崩れるようにその場に膝をついた。その様子を見て、好美は忍と文人を連れ、その場を立ち去った。
「好美ちゃん、どうする…?」
忍は、全員武器を持たされていると聞き、少し不安になっていた。
「武器を持っていようが、何百人でかかって来ようが、今更、逃げ出すワケにはいかないのっ…」
「でもっ…」
忍が不安を顕わにした表情をしていたので、好美は忍の額を指でバチッ!と弾いた。忍は痛くて思わず涙をこぼした。
「大丈夫、アタシ達は、絶対負けないっ…」
好美は、強い眼差しでそう言い切った後、ニヤッと笑った。
ーー植村さん…、君は、本当に、意志が強いんだね…ーー
文人は、好美が強い意志を持っている事を、再認識した…。

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