R・I・S・K⑧
司は、街中に来ると、今度は1ヶ所に数十人程度を囮にして、目立つようにカツアゲをさせ、3人組が現れるのを待った。
1時間後、3人組が現れた時、今度は1ヶ所に50人近くで取り囲んだ。
「おやおや、今度はたった3人に、こないだの倍かよ…」
好美は、いつものように低い声で、取り囲んだ連中を挑発するようにそう言い放った。
連中は、鉄パイプや金属バット、ナイフなどといった武器を持ち、一斉に襲いかかった。
だが…、
10分後、50人近くいた連中は倒されてしまった。
「いい加減、悪さするのやめとけって、そう伝えておきなっ…!」
好美がそう言いかけた、その時…、
それまで周囲にいた通行人が、一斉に3人組を取り囲んだ。軽く見積もっても、100人近くはいる。
「好美ちゃん、どうする…?」
「1人で、数十人ぐらい、大丈夫そう?」
好美は、チラッと文人を見てそう訊いた。
「うん、やってみるっ…!」
文人も、半ばヤケクソ気味に、そう答えた。
「じゃあ、行くぞっ…!」
その掛け声で、3人組は一斉に取り囲んでいた連中に立ち向かっていった。
好美と忍は、持ち前の力で、次々と連中を倒していった。
文人も、身の軽さを活かし、襲いかかってくる連中を倒していった。
だが…、
一瞬、不意をつかれて脚を引っ掛けられ、転んだ拍子に文人は足首をひねってしまった。
ーーしまったっ…!ーー
その隙に、文人より大柄の少年が体に乗り、ニヤッと不気味な笑みを浮かべると、文人の首をギュッと絞め始めた。
「ぐっ…!」
ーーくっ…、苦しいっ…!ーー
文人は、苦痛の表情を浮かべ、もがいていた。
その時…、
竜次は家から街中に直行し、到着した際、首を絞められている文人を見つけ、すぐさま駆けつけると、文人の首を絞めている少年の背後にまわり、後頭部を殴打した。
「文人っ…!」
「…りゅ、竜次君っ…」
竜次は、気を失いかけている文人を抱きかかえると、急いでその場から連れ出した。
数時間後、好美と忍、文人、竜次の4人は、公園に集まっていた。
「洋次のヤツ、何でか知らないけど、俺に嘘ついて…。それに気が付いて、急いで街中に直行したら、文人が…」
好美には、洋次が何故嘘をついたのか、だいたい察しがついていた。
文人の足首は、幸い、軽くひねっただけで済み、竜次が慣れた手付きで応急処置をした。
「ごめん、竜次君…。また、助けてもらったけど、今度は竜次君が危ないんじゃ…?」
「文人が危ない目に遭っているの見て、黙っていられるワケないだろっ…」
2人のやりとりを見て、好美はクスッと笑った。
「本っ当、2人とも仲良いんだね…♪」
好美に言われると、竜次は顔を真っ赤にした。
「条件反射なんだから、仕方ないだろっ…!」
「でも、竜次がフーちゃんを助けた事、恐らく風間に知られていると思う。このまま黙っていないと思うけど、どうするつもり?」
「…今朝の事もあるしな…。明日、風間さんのとこへ行って、ちゃんと話し合うつもりだ…」
ーーこれ以上、文人まで巻き込むワケにもいかないしな…ーー
竜次は、文人が仲間の1人から首を絞められているのを見て、ようやく目が冷め、司達から手を引く覚悟を決めた。
公園で好美達と別れてから、竜次は文人を背負って家まで送った。文人は、久々に竜次に背負われたのが嬉しくて、玄関先で降ろされてからも、しばらく竜次の背中にしがみついていた。竜次が腕を離そうとすると、文人は、背中に顔を埋めていた。
「文人…」
竜次は文人をグイッと前に引き寄せると、愛おしそうにギュッと抱きしめた。
ーーお前にも、心配かけたな…ーー
しばらくの間、2人はその場で抱き合った…。
文人が家に入ってから、竜次は自宅に帰ろうとした。
その途中、何者かに後ろから殴打され、そのまま気を失ってしまった…。
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