Re・Birth③
町の山々が紅葉で鮮やかに彩られた頃、好美はようやく学校にも慣れてきた。
だが、その頃から毎晩、『不思議な夢』を見るようになっていた…。
夢の中で、好美は、他校の不良グループと喧嘩していた。そして、ひと通り倒した後、いつも好美の前に、背の高い男が現れた。
男は、好美が何度も拳を振りかざしても、蹴りを入れようとしても、軽々とかわしてしまうのである…。
ーークソッ…! コイツ、何て素早いんだっ…!ーー
好美が疲れ果てた時、男は、好美の両腕をグッ!と掴むと、何か呟いた。
好美が、男の顔を見ようとして、顔を見上げた瞬間、目覚ましが鳴り響いた…。
ーーまたあの夢…。あの男、一体何者なんだろう…ーー
最初は、「漫画の読みすぎか?」という程度にしか思ってなくて、大して気にも留めなかったが、夢が日毎にリアルになっていくので、好美は言い知れない不安にかられていた…。
冬休みが近くなったある日、好美は、同級生と教室で他愛のない会話をしていた。
その際、一人が、「生理痛がひどくて…」という話になり、同級生の話を聞いているうち、好美は、自分がまだ生理になっていない事に気付いた。
「アタシ…、まだ、生理始まってないんだけど…」
「…えっ? まだ…?」
「うん…」
一瞬、好美達は、シーンと静まり返ってしまった。
「…ねぇ、植村さん。一度、病院で診てもらった方がいいんじゃないの?」
同級生の一人がそう言うと、他の者達も、同意したようにうなずいた。
「…そうかなぁ…? でも、生理って、個人差あるんでしょ?」
「そりゃ、個人差はあるけど…。でも、もう14歳なのに、まだっていうのも、ねぇ…」
「そうよ、一度診てもらったら?」
好美は、この時まで生理がない事を大して気に留めていなかったが、胸がなかなか大きくならない事や、身体の『違和感』、毎晩見る夢の事もあるので、学校から帰ると、札幌の家族に連絡をして、しばらく話した結果、冬休みに札幌市内の病院で診てもらう事になった…。
冬休みに入ると、好美は病院で検査を受ける為、札幌に住む家族のマンションに来た。
そして、その日のうちに忍に連絡をして、JR札幌駅で待ち合わせをした。
20分程経つと、忍が、息を切らしながら走ってきた。
「ごめん、好美ちゃん、待った…?」
忍は、嬉しそうに顔を見上げたが、好美を見た次の瞬間、驚いた。好美は、夏休みに会った時より背が伸びて、忍より20センチ以上は高くなっていたのである。
「…ねぇ、オレより背、また高くなったね…」
「…うん…。こないだ、学校の保健室で身長測ってもらったら、180センチだって…。クラスの女子の中で、一番高くなっちゃった…」
好美はそう言うと、苦笑いした。
好美と忍は、しばらくぶりに一緒に街を歩いていた。好美はこの日、黒のロングコートとジーンズ、ブーツといったロッカーっぽい格好をしていたので、どう見ても、好美より背の低い忍の方が『彼女』だと思われる。すれ違う女の子達は、好美を見ると、ポッと頬を赤くしていた…。
「…参るよね、全く…」
「黙ってたら、好美ちゃんの方がカッコイイもんね…」
忍は、クスクスと笑っていた。
「ちょっと、忍ってば、もうっ…、笑い事じゃないよ〜っ。アタシ、まだ生理も始まってないんっ…」
ーーあれっ…?ーー
そう言いかけた時、好美は、急に目眩がしてきて、忍の肩にもたれかかった。
ーーなっ…、何っ…?ーー
好美の顔は真っ青になり、額から一気に汗をかくと、崩れるように倒れ、そのまま気を失ってしまった…。
「えっ…? ちょっと、好美ちゃんっ…!」
忍は、何度も好美の身体を揺すったが、一向に意識を取り戻さないので、急いで救急車を呼んだ。そして、忍も一緒に救急車に乗り込むと、市内の病院に運ばれた…。