【本と映画】朝が来る
私は映画を先に、その後本で追っかけましたが、映画もきちんとまとめられていて今のところ、消化不良は起きていません。本では更に細かい状況や心理描写が書かれていたので、よく理解できてよかったです。本を読んでもなお、映画の印象がとてもよくて、原作があるものをここまで気持ちよく実写化してもらえると嬉しいですね。
立場の違う2人の女性の人生の葛藤の中にそれぞれ不妊治療から養子縁組、若年齢の妊娠・出産という大きなテーマが盛り込まれており、大作な気がしました。また、辻村深月さんの新しい一面を知ることが出来ました。
ここから激しくネタバレをするので、内容を知りたくない方は読まないでください!
14歳の少女が妊娠してしまった背景には、性教育の知識の乏しさ、両親の子どもにかける大きな期待や周りに取り繕う姿勢や圧力、大人のデリカシーの無さ、男性の弱さや身勝手さがあり、その末の家出、未成年者が一人で世の中で生きるのは苦労が伴う。嫌な大人がまとわりついてくる。その中で懸命に生きる彼女の事を誰が責められるのか。
「なかったことにしないで」
これは、本の中で彼女が心に強く思うことです。男性側や両親は14才である彼女の妊娠をよく思っていない故に早く無かった事にしようとしてきます。でも中絶期を過ぎてしまった彼女の身体の中では、すくすくと育っていく赤ちゃんの存在は確かにあって、、この言葉が切なく響きます。赤ちゃんが生まれることというのは、大人になってからなら、祝福される出来事なのに…
一方、不妊治療の末に養子縁組をして、後ろ暗いところは全くなく、我が子を育てる女性。こちらにも長い背景があった。真面目な二人の夫婦には子どもができない。両親、義両親からの孫催促、頑張っても結果が出ない不妊治療。でもそこに養子縁組という希望が差します。時間が前後して過去に戻ったりしながらこの二人の人生を追い、
そして、2人の人生が再び交錯する。
かたや、望まれない妊娠、かたや、強く望んでもおとずれない妊娠、その対比も素晴らしいし、少女の葛藤、人生の歯車はどんどんずれていき、止まらない。幸せであればそんな考えには至らなかったと思うのに、悲しい思考になっていく。これってどんな人にも起こりうると思う。ある程度の生活に対する安心や安全が保証されていれば、そんな風にはならないけど、もしそれを失ったら…?それでもあなたは真っ当に生きられると言い切れますか?と問いかけられているようでした。
全体的に、作者の描写力が細かいので一人一人の人生を見せられている気がします。本の世界に浸ることができて、章の構成も先が気になりつつも、ゆっくり読み込んでいきたい雰囲気が出ています。
それでは、私がエンドロールでボロボロ泣いて、歌う度にある場所が来ると泣いてしまい、なかなかカバー収録ができなかった曲、youtubeとスタエフにやっと載せることができましたー。