【”女”と”母”のアイデンティティ・クライシス】
【”女”と”母”のアイデンティティ・クライシス】
ㅤ
女が口をつぐむときは、心も閉じている時だ。
ㅤ
このところ“女“であることがしんどい。
ㅤ
「“女“にはコストがかかる」という記事にも書いたが、
“女“を維持するのが無理になってきた。
ㅤ
妊娠9ヶ月も半ばとなり。
何をするにもおっくうでならない。
ㅤ
ホルモンの変化により、顔のシミも増える。
腹の出っ張りにより、デリケートゾーンのムダ毛処理もうまくできない。
巨大化し続ける腹と胸で、肌がやたらとかゆい。
ㅤ
もう、とにかく「ラク」でいたい。
ㅤ
妊娠中期よりもさらに急速に失われていく「女感」
ㅤ
そしてこうなってくると
「女扱い」というものがほぼほぼゼロになり。
どっぷりと「妊婦」というカテゴリに分類される。
ㅤ
つまり、「女」という生き物ではなくなり
「妊婦」という生き物になるのだ。
ㅤ
「妊娠してからずっとそうだろ!」と思う人もいるかもしれませんが。
ㅤ
あのね、男はずっと変わらないの。
この9ヶ月、変わらないのです。
ㅤ
言い方あれですけど、端的に言えば、射精しただけ。
ㅤ
腹が膨れるわけでも
つわりが起きるわけでも
体重が増えるわけでも
意味不明なホルモンバランスにより
精神的な崩れを起こされるわけでもなく。
ㅤ
相変わらず、普通に仕事もできるし。
よくわからない食欲に振り回されたりもしない。
ㅤ
もちろん、多少なりとも「赤子のいる生活」に
思いを馳せるかもしれませんが・・・
ㅤ
それはあくまで「想像」の話しで
現実の変化はせいぜい隣でパートナーの腹が膨れたり
マタニティブルーになっていたりするだけなのだ。
ㅤ
ところが女はそうはいかない。
ㅤ
どんなに“女“であるべくコストをかけようとしても。
赤子錬成による、肉体的・精神的負担で余裕がない。
ㅤ
余裕がないから、コスト維持ができない。
さらには肉体の変化という物理攻撃により
“女“から強制的に“妊婦“にさせられる。
ㅤ
どんなに「“女“として扱われたい気持ち」があったとしても
物理的に失われていく。
ㅤ
正直、初めての妊娠の時はそんな余裕もなく。
ただただ必死に“妊婦“をまっとうするしかできなかった。
ㅤ
今回、5年ぶり、4回目の妊娠。
しかも離婚を挟むので
「もう妊娠なんてしない」と思っていたし。
ㅤ
24歳から断続的に続く、過去3回の妊娠・出産で
2年以上のレス期間などを含めて失われてしまったものを。
ㅤㅤ
起業したりする中で「必死に取り戻した“女“」なのだ。
ㅤ
それも離婚をする時にあきらめたのだけど。
ㅤ
今のパートナーとの出会いにより
10年ぶりに“女“に戻ることができた。
ㅤ
ものすごく貴重な2年半だったのだ。
ㅤ
それが、たった9ヶ月で失われていく。
ㅤ
もともと子ども好きな上に(とても好ましいと思っている)
非常に気遣いの彼は
ゲロゲロしているわたしに手を出すはずもなく。
ㅤ
非常に優しい。
とても優しい。
ㅤ
その優しさはとてもありがたいし、嬉しい。
ㅤ
の、だけども。
そうされればされるほど
「妊婦だから」と感じてしまうのだ。
ㅤ
もちろん、そうでないことは頭では理解しているのだけど。
ㅤ
当然、「妊婦としてのしんどさ」などへの理解と気遣いがあればあるほど
「“女“として扱われていない」とわたしの中の“女“が悲鳴をあげる。
ㅤ
余裕があれば、「自分のために“女“であれる」のだけど。
そもそもそんな余裕はない。
ㅤ
そうなると“女“であることのアイデンティティを保つには
パートナーシップという最小の社会の中での他者である
パートナーからの評価に依存するしかなくなる。
ㅤ
しかしそのパートナーが「妊婦」として接してくる。
ㅤ
(実際そうでなくとも、そのようにしか受け取れないのだ)
ㅤ
その絶望感たるや。
ㅤ
“女”という生き物から、強制的に”妊婦”にされ
さらに産後は”母親”となり、
より余裕がなくなっていくことを知っている。
ㅤ
しかも、わたしはめんどくさいことに。
ㅤ
恋愛モードの時はパートナーのにおいをかぎまくり
ベタベタにスキンシップを求め
セックスを求め
おはようからおやすみまでうざLINEしまくる女なのだ。
ㅤ
しかし「妊婦」だったり「母親」のわたしは
まったくそういうことをしなくなる。
ㅤ
さらにはわたしの中の”女”は
存在を無視される怒りにより、こじれる。
ㅤ
「じゃあお前(パートナー)も”男”としてなんて扱わねーわ」となる。
ㅤ
(だいぶめんどくさいけど、わりとこういう女性は多い)
ㅤ
あんなに匂いをかぎまくってたくせに、心が閉じた途端に不快になったりする。
ㅤ
わかっているのだ、頭では。
別に“女“扱いされてないわけでもないし。
「優しさ」が「妊婦としてのわたし」に向けられているわけでもないと。
ㅤ
でも気持ちが全然ついていかない。
ㅤ
パートナーからしたって
「正しく、できる限りの優しさや気づかい」を供給しているにも関わらず。
ㅤ
相手の態度が180度変わっていくには戸惑うだろう。
ㅤ
でも残念ながら、アイデンティティ・クライシス真っ只中のこちらにそんな余裕はない。
ㅤ
自分自身の変化に、誰よりも自分がついていけてないのだ。
ㅤ
そうして多くの夫婦が「ママとパパ」になることで
どうにかやり過ごし。
ㅤ
そのまま年月を重ねて「家族」となり。
「家族とはセックスなんてできないでしょ」となる。
ㅤ
わたし自身、1度目の結婚でその道を辿り。
元旦那さんを毛嫌いし、2年以上レスとなり
本気で浮気を考え
必死で気持ちを取り戻した過去がある。
ㅤ
正直、このままいけば。
「母」となり、「仕事」に逃げられるし。
子ども好きなパートナーは「いいお父さん」になり。
「家族」としてやっていくことができると思う。
ㅤ
でも、わたしの中の“女“はそんなのを望んでいないと知っている。
ㅤ
そして、「家族」となったパートナーを「男」として認識するりも
さっさと別の「新しい男」を見つけた方が早いことも知っているのだ。
ㅤ
このアイデンティティ・クライシスの中で
置き去りになっているわたしの中の“女“が
ひたすらさみしさを募らせていて。
ㅤ
好きな気持ちも変わらないのに心が閉じていて。
ㅤ
大事にされていることもわかるのに、気持ちが動かない。
ㅤ
こんなに一緒にいるのに、ただたださみしい。
(たぶんパートナーさんもそうであろう)
ㅤ
どうしていいのかわからなくて泣けてくる。
ㅤ
誰が悪いわけでも、「正しい解決策」があるわけでもないからこそ。
ㅤ
出口が見えなくて途方に暮れる。
ㅤ
いいなと思ったら応援しよう!
![倉持亜希子@バツイチ4児ママ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40103641/profile_8f6fd7fc5c6b2b650fb346718bbb6374.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)