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ミスティック・オペラ 「 呪文 」

呪文」


ときに囁くように… 時に低く唸るように...石に秘められた言葉は、意識の深いところから聴こえてくる。

原初の響きを湛えたその声は、謎に満ちた世界を語りだすかのように私には聴こえる。それは大地の脈動とともに太古の語り部の如くに、秘密の物語を語り始める。

古来から口伝によって語り継がれた神話のように、それはまだ誰も聴いたことのない、この世界の成り立ちを歌う儀式のようでもあった。

我々は何処から来たのか... 私は何者なのか...

解き明かされる真実に天と地は震え、時は色を静めてその歌を聴く...今日も昨日も語りのなかに消え、「原初の刻」が顕現する様は天と地を還流するいのちが、神に仕えし者の気息となって燃えるかのようでもある。

気息はしだいに鼓動のなかにうねる呪文となり、重なり合う呪文はときに雷鳴となって響き渡る。

時はふたたび蘇り、ここに伝授は完結される。それはさなぎの中の命が変容を遂げるように、この世界もまた、其の色を変え新たな姿に生まれ変わってゆく...

秘かに歌われた物語は、一夜かぎりのオペラのように激しくそして静かに「いのちの在り様」を歌い、世界はひとつではないことを語っていった。

それはまるで蝶になったいのちが、光によってその色を変え、幾つもの次元を渡ってゆくように、我々にもまた変容を遂げる羽化が始まったことを暗示しているのかもしれない...


Art MAISON INTERNATIONAL    Vol . 23 掲載作品



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