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時の稲妻



それは突然のことだった...

連なり合う時空を突き抜けて稲妻が走った...
すべての感覚が凍結するような生の裂け目を切り裂いてそれは打ち下ろされた...この石に刻まれた封印を断ち切るようにプラズマとなった言霊が大地に放たれた瞬間だった。

それは眠りについていた記憶の心臓を目覚めさせるように、時空の細胞を振動させ記憶の血潮を賦活させた...それは永遠が産み落とした一滴でもあり、それはまた時間の一滴でもあった。

稲妻となって降りた一滴は、凍結した細胞に沁みわたり、記憶はひとつの宇宙となって生きはじめたのだった。

蘇えった記憶は姿を求めて私のこころを叩く...
賦活された脈動が、微細な記憶の振動を統率し言葉のうねりを創り出してゆく...

稲妻によって起動された「言霊の磁場」のなかで言葉は妖しく立ち現れ、それは時が明けゆく色合いを纏ってゆく...言葉が産まれゆく刻の明滅に瞬きながら、眠りから目覚めた記憶の吐息は、磁場のなかに揺らめくオーロラとなって躍っている。

幾つもの時空が連なり合うなかに私は在り、この石はその磁場のなかに記憶の秘密を開示してゆく...記憶が夜明けのひかりを呼吸するように、言葉はそのかぎろいのなかに霊妙なうたを響かせていた。

明滅する言葉の呼吸とともに私は在り、未だ語られることのない記憶の呼び声を、そのかぎろいの彼方に聴いていた...言葉の幻影は誰かによって象られることを求めて、磁場の中の舞踏に生きている。

その変幻なる振動が織り成す舞踏はやがて、原初の文字を思わせる姿となって時空を切り裂いてゆく...まるで天衣を翻すように躍る言霊の姿は、まぼろしで在るが故に現実であり、我々の時空が現実で在るが故にまた幻でも在ることを見せてゆく...

ふたつの幻は共にふたつの眼であり、ともにふたつの翼となって時空を渉ってゆく...時空を貫く言霊の脈動は、幻を映し出していた帳を切り裂く稲妻の姿そのものだった。

石が見せてくる記憶の秘密は、語りえぬものの声として響きわたり、言葉として語られることを求めている。記憶はまた未来の姿でもあり、言葉とともにその姿を現わしてゆく...

稲妻によって打ち破られた帳は消え去り、幾つもの時空が織り成す振動の世界のなかに言霊の血潮は巡っている。それは語りえぬものの鼓動として顕現し、その脈動とともに明滅するものとの共振のなかに私は生きていた...

時空の連なりは私の細胞であり、その脈動こそが言葉を言葉たらしめるものだった。狂おしいまでの言葉の舞踏は、ときに法悦であり、ときに峻厳さを湛えた畏怖でもあった。

それは私が私で在ることを解き放ち、言霊の明滅は時空の火花となって私を貫いていった...もはやそこに私は無く、磁場のなかで言葉の舞踏を共に生きているという感覚だけがあるのみだった。

それは語りえぬものが伝える言葉の火花でもあり、言葉が刻印される言霊の秘儀とも言える刹那であったのかもしれない...



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