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セレンディピティの残照


ここは約束の地...

それはまるで導かれたような旅だった...

意図した思いとは裏腹に、道の途上にて出逢ったものたちが共振のなかで私に語りかけてくる...その出逢いのひとつひとつが魂に深く刻印され道を示してゆく...

あてどない旅に一抹の不安を残しながらも、それはどこか… 忘れたものを思い出させるような安堵感をももたらしていた...

世に云うセレンディピティの残照に浮かび上がる未来はまた、新たな旅へと私を連れてゆく...

それは未来でありながらも、すでに記された記憶を発掘してゆくように姿を現わしてくる...時が生まれる以前に書かれた物語を辿るように...

そして遠い記憶が姿を現わした...

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幾千億の転生を繰り返した遥か昔の生において、何処かの断崖に文字を刻んでいる記憶が甦ってくる...くっきりと浮かび上がったシーンは、周囲を山脈で囲まれたなかに花開いた桃源郷のような王国だった...

私は何者だったのか...断崖に穿たれた回廊はまるで絵巻物のように続いている...眩しく拡がる国土を眼下に見下ろしながら佇む一人の男...あれは神話だったのだろうか...

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私はいまその記憶の物語りを読み解こうとしているのかもしれない...

見えない糸で繋がれた記憶が今生で響き合いながら、いま此処に在ることの不思議さとその感慨は、残照のなかに揺らめく言霊となって顕現している...その厳粛な佇まいを見せられて自我は影を潜め、自身を貫く糸だけが私が私で在ることの証しを語るかのように振動している...

その記憶が発する振動が、まるで意志を持つかのように私を導いている。
それは今生において、何故ここに来たのか… という問いの行方にも似て、日常では図り得ない世界を語っているように思われてならない...

微細な明滅のなかで繰り広げられる魂のスパークは、意識では捉えられず、追い求めようとすればするほど遠ざかってゆく蜃気楼のように見えながらも、それはしかし過ぎ去った閃光の残照に浮かび上がる物語りとして初めて気づかされる… それは誰かが届けた贈り物のしるしのように私の魂に刻印されていった...

偶然のなかに潜む意図を垣間見せられながら、自我に囚われた眼には視えない世界の在り様を紐解いてゆく...

私は新たな旅へと導かれているのかもしれない...未来のわたしからの誘いにも似て...






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