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ポートレイツ

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堆積した時間のなかから、記憶のかけらが浮かび上がってくる。

かろうじて掬い取られた記憶のつながりは、過去と未来が重なって、その姿を現わしてゆく。

時が過ぎ去ってゆくように見えるのは幻影なのかもしれない… と思えるほど、いくえにも重なった時間を貫くように、立ち昇る香気… とでも呼べるようなこの気配は、いったい何処から来るのだろうか。

五感を超えたところに触れるこのさざなみは、時にささやくように、ときにうつむいては、行きつ戻りつしながら、微かな記憶の糸を編んでゆく。

それは私の記憶なのか、それとも、この石がかつて聴いた遠い思い出なのか、あるいはもしかしたら、それはあなたの記憶なのかもしれません。

微細なヴァイブレーションは、細胞が増殖してゆくように、やがてひとつの言葉を囁きはじめる…

あなたにも聴こえるでしょうか… 

胸の奥がくすぐられるような、そのささやきが…


Art MAISON INTERNATIONAL  Vol. 23 掲載作品



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