
降圧形コンバータ(buck converter)
降圧形コンバータとは
はじめに、降圧形コンバータとは名前の通り、入力電圧に対して電圧をさげて出力するDC-DCコンバータのことです。
回路構成
降圧形コンバータの回路構成は以下のようになっています。スイッチQ、ダイオードD、リアクトルL、コンデンサC、負荷抵抗Rから構成されており、各記号は入力電圧Ei、リアクトル電流iL、出力電流Ioおよび出力電圧eoとなっております。今回は、基本的な動作を確認するために、ダイオードの順方向電圧や配線などによる抵抗などは無視し、コンデンサの容量は十分に大きいものとします。

動作モード
次に降圧形コンバータの動作モードについて説明します。表1に示すように動作モードは2つあります。

まず、動作モード1から見ていきます。図2にモード1の電流経路を示します。モード1ではスイッチがオンしているため、電流経路はスイッチからリアクトルを通じて負荷へと電流が流れます。このとき、リアクトルに印加される電圧をvLとすると、以下のように表すことができます。
$${ v_L = E_i - E_o }$$
また、リアクトルに印加される電圧vLはリアクトルに流れる電流iLを用いると$${ v_L = \dfrac{di_L}{dt}L }$$と表すことができるため、
$${ \dfrac{d i_L}{dt} = \dfrac{E_i - E_o}{L} }$$
と表すことができます。その結果、リアクトルにエネルギーが蓄えられ、リアクトル電流は線形的に上昇します。
また、ダイオードDに印加される電圧をedとすると、
$${ e_d = E_i }$$
となります。

次に、動作モード2について説明します。このモードでは動作モード1の状態からスイッチQがオフとなることで、リアクトルLに蓄えられたエネルギーが電流源のような働きをして、リアクトルL→負荷→ダイオードDへと電流が流れます。このとき、リアクトルに印加する電圧は、
$${ v_L = - E_o }$$
となるので、リアクトルに流れる電流iLは
$${ i_L = \dfrac{-E_o}{L} \times (T_s-T_{on})+i_L(T_{on}) }$$
となる。また、ダイオードDに印加される電圧edは、
$${ e_d = 0 }$$
となる。

このように、降圧形コンバータは2つのモードを繰り返すことで、入力電圧以下の値を出力します。
動作波形
以上のことを踏まえると、図4のように動作波形を書くことができる。QgsはスイッチQのゲートソース信号、edはダイオードに印加される電圧、vLはリアクトルに印加される電圧およびiLはリアクトルに流れる電流波形である。また、0~Tonまでの期間をモード1、Ton~Tsまでの期間をモード2とする。

図4のリアクトル電流iLの波形から、リアクトルに流れる電流はオン期間に上昇する分と、オフ期間に下降する分は等しく、1周期を見た時にリアクトル電流の変化量は0になることから、リアクトルに印加される電圧の積分値は0となります。
$${ v_L = -\dfrac{di_L}{dt} }$$
そのため、動作モード1と2で算出したリアクトル電流の式を用いることで以下のように表すことができる。
$${ \int_{0}^{T}{v_L}dx= (E_i - E_o)T_{on}+(-E_o)T_{off}}$$
$${=(E_i-E_o)DT_s+(-E_o)(1-D)T_s}$$
$${=E_iDT_s-E_oT_s}$$
$${=0}$$
よって、降圧形コンバータの出力電圧は以下のように表すことができます。
$${ E_o=DE_i }$$
ただし、D(0≦D≦1)はデューティー比であり、一周期Tsに占めるオン時間Tonの割合である。式にすると以下のようになる。
$${ D=\dfrac{T_{on}}{T_s} }$$
まとめ
今回は基本的な電力変換器である降圧形コンバータについて説明を行いました。このDC-DCコンバータの出力電圧は入力電圧およびデューティー比を用いることで
$${ E_o = DE_i }$$
と表すことができます。Dは(0≦D≦1) であることより、出力電圧は入力電圧以下の値となります。