冷蔵タイムマシン
過去をやり直したい。弱々しく軟弱だった自分は今では努力を重ねて社会人として強くなったはずだった。
同窓会で出会い頭に加島に馬鹿にされたことがきっかけで俺は今、路地の階段を降りた地下街の冷蔵庫を目の前にしている。各冷蔵庫の表面にどの年代に行けるかテープが貼られている。
俺の中学時代の汚点である加島と取り巻きに復讐しようとした。
「ご希望かい?」しわがれた男の声がかかる。
「いくらだ?」
男は黙って指を4本立てた。
「10分で4万だ」
財布から金を渡し冷蔵庫の中へと入った。中は明るく狭そうに見えない。時間制限のアラームをセットしボタンを押すと俺の体はこごえる吹雪と寒さと光に包まれガタガタと冷蔵庫が揺れる。
地下街の男はゴミ箱の隣で光が漏れる冷蔵庫を静かに見ていた。すぅーっと旧式のタバコを吹かし灰をとん。と落とすと冷蔵庫はやがて光を失い静かになった。10分経っても冷蔵庫から出ない「またか」といいドアを開けると凍ったままの彼がいた。