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ちょっと待って!ナガヅカ君!

ん?君写真と違くない?

これを書くのは2024年12月31日。
明日には新年であるというのにブログを書き綴っている。
振り返ると今年は元旦から大地震で死にかけ私の住む町も悲劇的なダメージを負った。
12月に入ってから不幸もあり最後の最後に新型コロナに罹患した。
まったく酷い1年だった。

そんな中、身の回りの水産物事情は恵まれており下半期は怒濤のネタラッシュだった(ストックが溜まりすぎている…)
私の徘徊範囲に新しいスーパーができたのである。
普段はこうしたチェーン店は安定供給や客の需要から同じ顔ぶれの何の面白みも無い鮮魚コーナーになりがちなのだが新店舗だと客寄せパンダ的に面白い魚介類を置くので魚狂いな人種には堪らない環境になるのだ。

どどん。

ということで仕入れたのはこちら「ぎんぽ」。
江戸前天ぷらの高級天ダネである。
……ここで違和感に気づいた方はそこそこの魚好きであろうか。
そう此奴は所謂ギンポでは無いのだ。

目立つ鱗と尾鰭、特徴的な頭部。

正体は「ナガヅカ」。

生物学的には「ゲンゲ亜目」まで同じだがギンポは「ニシキギンポ科ニシキギンポ属」であるがこの「ナガヅカ」は「タウエガジ科ナガヅカ属」であり遠い親戚くらいの関係である。
またナガヅカは80cm程になりライギョの尻尾を更に引き延ばしたような風体になる。

ユニークフェイス。

今回は小さいサイズを6尾仕入れいじくりまわしてみようと思う。
というても揚げ物はなんとなく分かるし変化球で行ってみようか。

ナガヅカ実食。

煮ナガヅカ。

アナゴ風に軽く煮付けたのだが恐ろしく縮んだ…。
ギンポサイズから大きめのドジョウサイズまで…。
水分が多く加熱すると身がぎゅっと締まり厚みが増す。
皮はゼラチン質が多分で小さくともクニクニッとした弾力が楽しめる。
身質はしっかりとしているが繊維にそって解れホッケに近い。
しかし脂や個性やクセや香りが乏しいため風味としては白身魚(パンガシウス)が近い。
まぁ小型の個体なのでこれが基準にはなりえないことは考慮したい。

ナガヅカの蒲焼き。

「こういった長物は一回蒲焼きにするよね」ということで。
うぅむ…。
蒲焼きは脂や個性があってこそというのを思い知らされる。
丹念に綺麗に焼き上げる程に香ばしさとタレの旨味がナガヅカの存在意義を奪っていくような気がする…。
不味くはないがナガヅカでやる必要は無いかな。

ナガヅカの各種刺身。

水分が多い身質のため脱水シートを使ったものと昆布締めと焼き霜と湯引きに仕立てた。

左から刺身、焼き霜、昆布締め、湯引き。

刺身。
見た目はガンゾウビラメやヤナギガレイにも似た見た目をしている。
水分を抜いた分元の食感は無いがムチムチした歯触りになった。
味はというと魚らしい風味が微かにあるが主張する何かがあるわけではなく美味しいものではないかな。
若いスケソウダラの刺身に似ている。

焼き霜。
適度に加熱すると締まることなくふわっとした食感になる。
淡泊な味なことには変わらないが食感と相まると好印象に転じる。

昆布締め。
素直すぎる身には昆布の旨味を添加してやるのが定石…。
と思ったが家に置いてある昆布では旨味が強すぎて昆布味のグミみたいになってしまった。
うぅむ…大きければ活きそうな雰囲気はあるのだが評価は保留。

湯引き。
さっとだけ火を通したのにも関わらず強く締まってしまった。
水を介した加熱は一様になってしまうらしい。
ポロポロッと崩れていく身質で味のうっすいカレイの煮物のようだ。

まとめ。

2024年最後の記事、お茶濁し感もありつつほんのちょっと変わった体験をした次第でした。
ちなみに今回のナガヅカ、未成熟の小さい個体ばかりだったものの性成熟をした本種の卵巣には「ジノグネリン」という毒が含まれている。
しかしこれをもってこの魚が危険であると騒ぐのは無知からなる愚かな行為なので読者諸氏はしないように。
ナガヅカは至って普通の食用魚であり高級カマボコの材料でもある。
従ってこれを扱うお店には何の落ち度もなく普通の事なのだ。
兎角、何が言いたいかというと今後もこういった変わった魚を扱う店を応援するし買い支えるぞということだ。

2025年もたくさんいろんな魚を食べるぞ オー!
ということで読者諸氏も良いお年を。


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