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誰がために服は着る
世の中には服装にあまり意識を向けない方が多々います。
興味がない、面倒くさい、よく分からない、お金がもったいない、非合理だ、社会に迎合したくない、自分には不必要だ、陰謀論だ…etc.
理由は様々かと思いますが、洋服を着ることは非常に社会的な行為であり、自分本位の発想でそれをないがしろにすることは批判の対象ともなり得ます。
今の無頓着な服装が成立している(ように見える)のは、その方の生活している地域や、共に行動する人々の年代・常識などに限られている可能性が高い。
それでは紳士のマナーについて世の中でどう捉えられているのでしょうか?
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『Men and Manners』
この本はNew York Times紙のベストセラーであり、著者David CogginsはEsquire, Financial Times, Wall Street Journal など、日本人の我々でも頻繁に耳にする著名な雑誌や新聞などで執筆をするライターです。すなわち米国(もしくは先進各国)のスタンダードに知悉した人物。
マナーの観点から、米国では洋服についてどのように捉えられているのか分かりやすく記載がありましたので、当該箇所を和訳(意訳)・引用します。
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Quote
あなたがダンディである必要はありませんが、イベントでの服装は、イベント主催者やデート相手に対するあなた自身の興味の度合いを自然と表現しており、彼らもまたあなたを判断する材料とします。
しかしそれ以上に、あなたがまだ10 代の青年のように見えることで得する人が誰かいるでしょうか。 基本的には、出かける場所と、一緒に出かける人々に敬意を示しきちんとした身なりでいることが求められます。
あなたがパーティーに参加する時、その主催者は大学を卒業したばかりの幼稚な服装の男性に会いたいと思うでしょうか?
更にはあなたが女性と一緒に参加するとなれば、彼女は、母親に服を着せられた少年のように、ジャケットを渋々着ている男性の隣に立ちたいでしょうか?
着心地の良いスーツを手に入れましょう。
たとえ仮に年に数回しか着ないとしても、その数回は日常と比べて特別なシチュエーションであり、人生に於いて大切な機会であるはずです。
服装はあなたについて多くを語りますが、それと同じくらいあなた自身が一緒にいる人たちについてどう思っているかも語ります。
Unquote
前述したような理由を元に、大切な場面でもパーカーを着続けることは近視眼的過ぎるのが容易に分かります。普段から見慣れているならいざ知らず、世代や環境が異なる人たちから見たらそれは大変無粋な服装として見えるのです。
最初の一着
上記を踏まえて、それでは何を着れば良いのか?きちんとして見える服とは何なのか?
世界的なスタンダードと呼べるのはネイビースーツ、またはネイビーの単体ジャケット(sports coat / sports jacket)です。
スーツの場合、基本的にはジャケットのみで着ることやネクタイなしで着ることはできません。従い、フォーマルなシーンを想定するのであればスーツ、そこまでかしこまったシーンでなければジャケットと、ご自身の着用シーンを想定してご準備するのが良いでしょう。
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そしてジャケットは必ず身体に沿ったシルエットであること。仕方なく着ている服と、自ら進んで楽しく着ている服の違いは何よりもこのシルエットに現れます。
こちらのお客さまは、身長は小柄ですがスポーツ経験により上半身に厚みのある方。日本で既製品を見つけることは非常に難しい体型ですから、服についてモチベーションが上がりづらいのは想像ができます。
しかし今回仕立てたネイビーブレザーのように身体に合うシルエットであれば、とても楽しんで着ることができます。(お顔は写していませんがにこやかに笑っています。笑)
こうした1着が手元にあることで、世の中が自分に対して何を期待していたのか強烈に認識することができます。友人や家族、女性などあらゆる人があなたの変化に気づきます。
そしてこれによりどれほど外出が楽しくなるか、誂える前には想像できない大きな副産物が付いてくるのです。
誰がために服は着るものか。
まずはあなたと一緒にいる方々。そしてその方々の喜びを通じて、結果としてあなたご自身にとって価値を感じることができるのです。