”do not wear brown in town” ??
英国では「シティではブラウンを着用してはいけない」との古めかしいルールがありますが、それは何故でしょうか?たしかに本邦でもベージュやブラウン等、植物系の色合いを職場で着用するのは憚られる、という方は少なくないと思います。
英国に於いてブラウンはシティで働く紳士が自宅や週末に着用する色であり、平日は黒や紺、グレーなどの濃色を着用するのが永く一般的でした。あくまでブラウンは、カントリーサイドでツイードやフェルトハット、革靴に用いる色合いということです。
しかし、これは英国に限った話です。数十年に亘り欧米の他国ではビジネスシーンに於いて黒以外の革靴を着用しており、それを以て品位や礼儀の欠如と見做されることはありません。
例えば、イタリアでは茶系以外はほとんど着用しません。CorthayやBerlutiに代表されるようにフランスでは妖艶な色合いを積極的に取り入れます。またアメリカでは濃い赤茶色(oxblood)に対する独自の強い嗜好を感じます。
* Aldenのカラー8( #8 / バーガンディー )はまさにアメリカ的oxblood の典型例です。
「ブラウンをシティでは着用してはいけない」というルールそれ自体は時代錯誤です。今や英国に於いてもブラウンの革靴、スーツ、ジャケットがビジネスシーンで禁止されることはほとんどないようです。
ルールの本質は、その場、その人に相応しい服装を心掛けるということ。職場ではプロフェッショナルとしての’正しい’装いがあるでしょう。これはビジネスに限らず、冠婚葬祭、レストラン、観劇等、皆さんの状況・立場にあった服装が求められます。
僕自身ゴルフにお誘い頂き、カジュアルなTシャツで参加したためにお叱りを受けたことがあります。僕の軽率な服選びとマナー違反により、お誘い頂いた方はおろか、一緒にラウンドした方々までクラブでの体面を傷つけたことに気付き猛省しました。
休日のジャケット - 立場のある装い
さて、こちらは2年ほど前にW.Bill のライトフランネルで仕立てたヘリンボーンのラウンジコート(ジャケット/odd jacket) & ウェストコート(vest)です。
表面は起毛していますが300g弱と軽めの生地、且つマスタードの明度を下げたような黄味がかったベージュですので、秋から春まで着用しています。またジャケットの釦はナット(ヤシの実)を選んでおり、今後の経年変化がとても楽しみです。
ジャケット丈はお尻が隠れるよう十分に長くとることで、休日ニットの上に羽織るだけでも十分に歳相応のエレガンスを表現できる一方、ウェストのスラントポケットや薄手の肩パッド、ヘリンボーンの柄がリラックスした雰囲気も演出しています。
休日にまでジャケットを羽織ることが堅苦しいという方でも、素材、色合い、ディテールを工夫することで、無理なく'正しい'服装を楽しむことができるでしょう。
自分の社会的立場や、シチュエーションに合わせつつ、装いの表現をしていきたいと思います。