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ミュージカル撮影と編集の葛藤



写真はあくまでも趣味でやっている。時々ミュージカルの撮影に行くこともあるが、これもあくまで趣味の範囲であり、仕事としての撮影ではない。それでも、ボランティアとして登録し、現地に自ら赴き、それなりの機材を用いて、1公演90分のゲネプロと3公演を2日間にわたって撮影するという大仕事をこなすことになる。実際、現場にはプロの写真家もいる。

先日も、東京から九州まで向かい、ホテルに宿泊して撮影に臨んだ。現場にいたプロの写真家も、私が持つ機材(主要カメラはNikon Z9)を見て、呆れた様子だった。まあ、それも無理はない。素人がそんなごっつい機材を持ち込んで遠くまで来て、無償で撮影しているのだから、彼らが不思議に思うのも当然である。ただ、逆に言えば、素人がこのような大掛かりなステージ撮影を、正式に「撮影者」の腕章を付けて自由に撮影できる機会は非常に稀だ。趣味とはいえ、風景撮影や野生動物の撮影でも、特別なものを撮るためにわざわざ遠方まで出かけて、無報酬で撮影することは決して異常なことではない。そう考えれば、他の趣味も同様である。無報酬で遠方までコンサートを見に行くこともあれば、旅行に行く人もいるし、高価な物のコレクターもいる。

それはさておき、今日は撮影後の編集作業におけるモヤモヤについて書きたい。後々の手間を考えて、連写はあまり使わないようにしているが、それでも1公演で1,000枚以上は撮影してしまう。その後、撮影した写真をレタッチして提出するのは、仕事をしながらの作業になるため非常に大変だ。数週間にわたり、フリータイムのすべてをこれに費やすことになる。今回は特に多く撮影してしまい、ゲネプロの写真を仕上げるだけで、2週間もかかってしまった。このペースは流石に遅すぎる。

そこで、初公演の約1,500枚ある写真を一枚一枚レタッチするのではなく、ベストショットと思えるものを選び、それをレタッチして、250枚程度の提出物とした。これなら丸一日かけずに済んだ。しかし、ここで非常にモヤモヤする点がある。

提出のタイミングは二つある。一つは、公演当日または数日以内に提出するベストショット20~30枚である。これは、主催者が公演終了後すぐに出すフォトレポートに使用される。(例:https://musical-acb.com/news/25742/ 〜見出しの写真もここからの引用)次に、急ぎではなく提出する残りのすべての写真があり、これはキャストに販売される写真となる。このベストショットを選ぶスタイルで提出すると、いわゆる「作品」としての写真の提出となる。

ただ、これだと、写真に写っているキャストのことはあまり考慮せず、フォーカスや露出、構図が美しく揃ったものを選ぶことになる。しかし、キャストにとっては、少しフォーカスが甘かったり、暗かったり、明るすぎたり、バランスが悪かったりしても、自分が写っている写真が嬉しいはずだ。100人ほどが出演するステージで、特に主役格でないキャストたちにとっては、写る機会が少なく、せっかく写っていても選ばれなけれはま、お蔵入り写真になってしまう。

自分の一番の動機も、やはりキャストへの愛情から来ている。このミュージカルの出演者はすべて素人であり、生まれて初めて大きなステージに立つ者もいる。それこそ、無報酬で100日間頑張って本番に臨んでいる。彼らの最高の瞬間を永遠に残したい、これが自分の最大の望みである。そう考えると、きれいに撮れた写真だけでなく、キャスト全員が喜んでくれるような選定をしなければならない。これが、何ともモヤモヤする部分である。

これを書いていて、残りの2公演分は、やはり一枚一枚、使えそうなものはすべて提出しようと思うようにらなってきた。仕事もようやく落ち着いてきたので、それなりに時間が取れそうだしね。


黄色大陸の皆様(フォトレポートより)
赤大陸によるベリーダンス(フォトレポートより)

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