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10万円ちょっとで作る緊急地震速報割込み放送装置

先日発生した石川県能登半島沖を震源とする地震において、弊社提案の緊急地震速報割込み装置が無事に動作したそうなので、その概要をまとめておく。なお、これらの機器はすでに市販されているものなので、これを見ている各局の方でも簡単に導入することができる。
なお、この記事は有料ですが無料で最後まで読むことができます。

実際の動作音声(2024/6/6 14:45追記)

実際に動作したときの音声を公開しました。(音源提供:FMかほく様)
このシステムはOffice Stray CatとFMかほく様で共同考案しています。再生後5秒後頃に、緊急地震速報の割込みが発生します。緊急地震速報の警報音が再生されますのでご注意ください

用意したもの

・YAMAHA AG08ストリーミングミキサー
YAMAHAから販売されているネット配信用の機能てんこ盛りのミキサー。マイクで喋るとほかのチャンネルをいい感じにBGレベルに下げてくれる「ダッキング」という機能を利用する。

CENTURY 地震の見張り番@home
自身の他、噴火や津波にも対応。気象庁の予報業務許可を受けている製品で、設置した場所における予測震度や到達時間を独自に算出するため、より精度の高い地震速報が可能。

これらの2点を用意して、マスターと送信機の間に挟むだけで、緊急地震速報の割込み装置の完成です。なお、自身の見張り番の音声を放送で利用する場合、販売元であるCENTURYの承諾を受ける必要がある。

ダッキングの設定

YAMAHA AG08は、CH1とCH2に入力される音声に反応して、ほかのチャンネルの音声を一定時間減衰させることができ、この機能を「ダッカー」と呼んでいる。

ダッカー機能の設定

上の図はAG08のダッカー機能を設定する画面で、CH1/2以外のすべてのチャンネルに設定項目が存在している。上記の設定例では、
・CH3/4の音声を
・CH1/2の音声が-20dBを超えた場合(THRESHOLD)
・0.092秒で(ATTACK)
・24dB減衰させる(RANGE)
・音声が-20dBを下回ったら3秒かけて元の音量にもどす(DECAY)
という設定が入っていることが分かる。各社規定の音声レベルなどを参考に設定値を変更することが必要と思われる。同様の設定をCH1/2以外のすべてのチャンネルに設定しておく。

自身の見張り番@homeの音声はCH1または2に接続し、テスト音声を利用して適切なレベルに合わせておく。また、この時ダッカーの動作を確認し、RANGEの値を調整しておく。調整が終わったら、マスターOUTをAG08のCH3/4等に接続、AG08のモニターアウトをコーデック等に接続すれば設置完了となる。

その他の割込み放送にも

たとえばコミュニティ放送の中には、地元行政機関や消防等との協定により、割込み放送を実施しているところが多い。災害協定を今後結ぶ予定がある場合、割込み装置の有無がキモとなってくるものの、装置自体がそれほど安くないという場面も多く、IPベースの音声伝送装置(LANdeVOICE等)との組み合わせで、かなり費用を抑えて割込み放送システムを構築することが可能となる。またIP音声伝送も、SonoBusなどのソフトウェアベースのものを利用することで、行政側マイクとしてスマートフォンなどの端末でも利用可能とでき、さらなる費用圧縮が期待できる。

結構安くて確実に動く

上記リンクにもある通り、いずれの製品もAmazonで購入することができ、民生品の手軽さで設置が可能となっている。設定自体もそれほど複雑でもなく、しかも「素人が操作する」ことを前提に設計されたものだけあって「簡単に、確実に動作する」ことが最大の利点といえる。しかも両方買っても15万円程度(ただし「地震の見張り番」は5年間の使用制限あり…一種のライセンスと考えられる)で導入が可能。コミュニティ放送での利用価値はかなり高いといえるのではないだろうか。

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