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一新したい記憶の引き出し
私には3歳年上のいとこがいる。
他のいとこはもっと年上だったり性別が違ったりしたことと住んでいる地域が離れていたこともあって3歳年上のいとこが一番親しかった。
中学生の時誘ってもらって姉妹で隣県のいとこの家に泊まりに行った。
帰りがけ叔母からミッションを言い渡された。
ご近所のお世話になっている人に渡したいので私の家から20分ほど歩いたところにある有名な和菓子屋さんで飴を買って来て欲しいと。
自分たちも食べたいから買えるだけ買って来てと言う叔母から預かった1000円を持って私は飴を買いに行った。
飴は1袋350円だった。
2つ買うと700円で3つ買うと1050円。
1000円渡された場合どちらを選ぶのが正解なのだろうか。
悩んだ末に私は飴を3つ買って帰った。
で、この飴はどうやって届ければよいのだろう。
隣県の叔母の家は行き方もよく分からないし何より面倒だ。
私は飴を送ることにした。
母から住所を聞き適当な袋に詰めて叔母に宅配便で送った。
宅配便の値段はハッキリ覚えていないが300円とかだっただろうか。
1000円もらって1050円分の飴を買い300円(仮定)の宅配便で送る。
往復40分の道のりを歩いて350円も自腹を切るという何とも損なミッションだったがそれ自体は私の中でそこまで残念な話ではなかった。
飴を送って1週間ほどした時いとこから手紙が来た。
「可愛いいとこのあなただから言います。人からお金を預かって買い物をした時はレシートを渡すものです」
叔母は飴の値段を知らなかったのだろうか。
宅配便で届いた飴を見て明らかに1000円越えてるなと想像しなかったのだろうか。
私がお釣りをくすねたとでも思ったのだろうか。
「もしかして1000円では足りなかったのではないですか?」なら分かるがその言い方はないだろう。
元彼と同棲していた19歳の頃母から電話があった。
いとこから手紙が来たので今家にいないと言ったから連絡しておきなさいと。
しょうがないのでいとこに電話をかけ元彼と暮らしていることを話した。
上手くいくかどうか分からないので叔母たちには話さないで欲しいと釘を刺して。
しつこく食い下がられたので仕方なく電話番号を教えた。
それから半年経った頃だろうか。
いとこから電話がかかってきた。
叔母に同棲を話してしまったという。
私はいとこを信用していなかったのでそれは想定範囲内だった。
話してしまったものはしょうがない。
聞いてもいないのにいとこはなおも続ける。
「母がねTVのニュース見てこれ金色ちゃんじゃないかって言うのよ。金色ちゃんは今ここには住んでないから違うよって話になって言っちゃった」
「いいよ。別に。何のニュース?」
「原付バイクがひき逃げしたんだって。金色ちゃん原付バイク乗ってたでしょ?だから母が心配してたの」
えっと、それって…もちろん私がひき逃げ犯ってことだよね?
一瞬でも私を被害者として心配してくれているのかと思った自分が情けなくなった。
聞かなきゃよかった。
結婚してわりとすぐの頃。
いとこの家で同居していた祖母が亡くなった。
早朝私のところに連絡が来て手伝って欲しいと言う。
その頃私はいとこと同県に住んでいたが同県と言っても車で1時間近くかかる県の端と端。
断りたかったが母よりは私の方がまだ休みやすい仕事をしているので断って母に頼られたら困ると思い承諾した。
私たち家族の他の伯父や伯母は全員すぐに駆けつけられない距離に住んでいたので必然的に第一に頼るとしたら私たち家族だ。
尤も叔母の兄である私の父はとっくの昔に亡くなっていて本来なら祖母のことは残っている実の兄弟でなんとかするのが筋だと思う。
10年以上前に亡くなった兄の配偶者である母や子供である私を頼るって少し図々しいのではないだろうか。
…ということはまだ20代前半だった私は気が付かなかったが。
とにかく私は職場に連絡を入れいとこの家に向かった。
私が着いてすぐコートを羽織ったいとこが出て来た。
「金色ちゃんごめんねー」
「いいよ。別に」
「じゃ、行ってきまーす」
いとこは仕事に出かけて行った。
私は休んだのにいとこは仕事行くんだ。
こんな風に私はかなりいとこに嫌な目に遭わされた。
未だに覚えている辺り相当根に持っているのだと思う。
ふとした時にこのエピソードを思い出しては1人でイライラモヤモヤしてしまう。
ここに書くことで昇華してもう忘れられたらいいのにと思うがそれは多分無理でまた私は何かの拍子に思い出してはイライラモヤモヤするのだろう。
記憶の引き出しを自在に操ることが出来たらこのいとこのエピソードを記憶から捨てて新しいことを入れるのにそれが出来ないのがもどかしい。
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