
デビュー作について、今だから言えること
私のデビュー作。
オーバーラップ文庫から刊行された『美少女と距離を置く方法』シリーズについて
今だから言えるあれこれを思いつくままに書いてみます。
『美少女と距離を置く方法』
ひとりで行動するのが好きな楠葉廉が、同じくひとりを好む美少女の橘理華と出会い、ゆっくりお互いのことを知って、親しくなっていく青春ラブコメ。
「小説家になろう」からの書籍化作品。
打ち切りにより2巻まで刊行。
なぜ書いたのか
この作品を書いた理由はいろいろあれど、今回は戦略的なことではなく、趣向的な話をします。
私はひとりが好きです。
正確にいえば
「やりたいことの多くがひとりでできることである」
「趣味嗜好や価値観があまり多数派に近くない」
このふたつの自身の特性を優先すると、ひとりが都合がよい、ひとりの時間がたくさんほしい、ということになるのです。
しかし、この考え方、スタイル自体が、あまり人の理解が得られやすいことではありません。
ただ、私は自分の考えに納得しているので、やっぱりひとりの時間が多くほしいのです。
そして、私と同じ、または近い考えの人は、世界にも多くいると思いました。
私が思う小説の価値のひとつに「自分に共鳴してくれるものと出会える」というものがあります。
私はこの作品を通して、自分と同じ考えの人たちに「私にはあなたの気持ちがわかるよ」と言いたかった。そう言ってくれる存在が、私もほしかったからです。
そこで、ひとりを愛する楠葉くんが、自分を理解してくれる人に出会い、結ばれるお話を書こうと思いました。
ちなみに、当然ながら「作品から何を受け取るか」は受け手の自由なので、この内容はあくまで私の勝手な思いです。
読者の方は、ふーん、と思っていただければ幸いです。
あなたと作品の関係にとって、作者は部外者でしかありません。
ヒロイン橘理華について
本作には橘理華という女の子、すなわちヒロインが登場します。
彼女は主人公の楠葉くんに近い価値観と悩みを持っていますが、楠葉くんと同じくらい悩んで成長するので、もうひとりの主人公だともいえます。
自分の中に確固とした価値観、理想を持ってそれに従って生きようとしているけれど、その気持ちが挫けてしまいそうになる出来事にもたくさん出会う。
そんな日々を友達や楠葉くんに支えられ、彼女も周りを支えて、ゆっくり前に進んでいきます。
気持ち悪いことを書きます。
私はこの子が大好きです。
人間としても、女の子としても、キャラクターとしても、自分の好みがほぼ完璧に込められたと思っています。
もちろん、他のキャラクターも大好きなんですが、彼女への満足感は群を抜いています。
だからこそ「人気が出る」と確信していました。
好きになってくれた方が多くいらっしゃれば嬉しいです。
須佐美千歳について
本作のサブキャラクターであり、ヒロインの親友のひとり、須佐美千歳。
彼女はサブキャラの中でも最も「凝って」作ったキャラクターだといえます。
悩める主人公やヒロインをサポートする暗躍お助けキャラでありながら、自身も悩みを持っている。
しかしその中身はなかなか見えてこず、端々から感じることしかできない。
彼女の有能さと精神性には、作者としてもかなり助けられらました。
ちょっとクサいセリフも様になるし、普通なら気づかないところに勘が働いても違和感がない。
まあ逆に、「この人がいるならもっとうまくできたのでは?」という可能性が作品全体に生まれてしまい、妥当性の検討に苦しめられた部分もありますが。
とはいえやっぱり、いかにも私の好きな感じのキャラクターだなぁ。
結局シリーズは打ち切りになり、彼女の苦悩の全貌は明かすことはできませんでしたが、3巻以降が出れば、きっと彼女の、いや、彼らの話をしていたでしょう。
本作で出た私のフェチについて
この作品は、当時まだプロを目指す身だった私の、とある考えに基づいて生まれました。
「好きなものじゃないと全力で楽しんで書けなくない!?」
はい。
そういうわけで、「小説家になろう」でランキングを勝ち抜こうと考えていた前作(アマチュア作)と違い、自分のフェチがほぼ妥協なく、打算なく込められています。
そのフェチとは。
「頭がいいキャラクター」!!
大好きです。
正直これに当てはまれば、ビジュアルや性別、その他の属性に関わらず、キャラを好きになれます。
理由はいろいろありますが、端的に書くなら、私は
「キャラクター=人格だと思っている」
「人格=精神だと思っている」
「精神は知能が作ると思っている」
「高い知能はいい人格を作りやすいと思っている」
からです。
結果、『美少女と距離を置く方法』に登場するキャラクターは、8人のうち成績優秀者が4人という偏りを見せています。
楠葉くん、橘さん、須佐美さん、隠岐くん。
とはいえ、「成績優秀」はあくまで「頭がいい人の傾向の一側面」であるので、そうじゃないキャラクターが頭がよくないとは思っていません。
『美少女と距離を置く方法』は、最終的にかなり満足のいく出来になりました。
読者さんにいただく感想もすごく好評なものが多く、自他ともに見て良作だった、と思っています。
なにより、私をプロにしてくれた作品です。
「好きなものじゃないと全力で楽しんで書けなくない!?」という考えのおかげかどうかはわかりませんが、きっとそうであると信じています。
そして、プロになった今でも、この考えは貫いていこうと思っています。
つまり、私の作品には今後も「頭のいいキャラクター」がほぼ確実に登場しますので、同じ好みを持っている方は、ぜひチェックしていただくと嬉しいです。
思っていたより長くなってしまいましたが、今回の記事はここまで。
読んで下さった方、それからびきょりを好きでいてくださる方、ありがとうございます。