ロープ自走式輸送機で、建設業界の課題を解決するプロジェクト【LIFT】~プロジェクト紹介から実証試験まで~
はじめまして。
東北大学工学部機械知能航空工学科2年のゆきとです。
僕は現在、【LIFT - 建設現場の輸送を効率よく、安全に。-】というプロジェクトのプロジェクトオーナーをしています。
この記事では、このプロジェクト【LIFT】についての説明と、クラファン開始から実際の建設現場での実証試験を実施するに至るまでの過程をまとめてみました。
ツイートは飽きるほどしていますがnoteで書くのは(個人では)初めてなので、見にくいところもあるかと思います。長い記事ですが、どうか温かい目と広い心で読んでいただけますと幸いです。
Twitter、Facebookを見るとさらに詳しく、時系列でLIFTの活動をご覧いただけます。お時間のある時にぜひ読んでみてください!
クラファンのサイトはこちら
まず、LIFTってどういうプロジェクトなの?🤔
【LIFT】というプロジェクトは、簡単に言うと、『ロープ上を自走する輸送機を用いて、建設現場の輸送を安全で効率の良いものにする』というプロジェクトです。そして、このプロジェクトの目標は、『建設業界における人手不足という課題を解決する』ことです。
現在、東北大学工学部の学生と大学院の学生を中心に活動をしています。
『ロープ上を自走する輸送機』がなかなかイメージしにくいと思いますので、まずはこちらの映像をご覧ください。
このように、固定されたロープ上を伝って、自動で昇降する輸送機を『ロープ自走式輸送機』または『ロープ自走式エレベーター』と呼んでいます。
ロープウェイとは異なり、輸送機自体に動力が搭載されているため、ロープさえ固定できればどこでも輸送できるのが最大の特徴です。
じゃあその『ロープ自走式エレベーター』っていうのは何の役に立つの?🧐
一つ前で話したように、『ロープ自走式エレベーター』の最大の特徴は、「輸送機自体に動力が組み込まれていること」です。これにより、以下のことが可能になります。
簡単な設営 (ロープさえ固定すればよいのでどこでも取り付けられる)
電力の無い場所での使用 (バッテリー式なのでコードレスで使用可能)
短区間の輸送 (1階から3階まで、など限られた区間でも効率よく輸送できる)
特に強調したいのは、最後に記した「短区間の輸送」が可能になることです。
現在、建設現場では、大きく重い荷物を高い場所まで運ぶ際にはクレーンを用いており、小さく軽い荷物は主に人力で運んでいます。
しかし一方で、その中間にあたる部分(例えば、パネル材などかさばるけどクレーンで運ぶには軽いような資材の運搬や、1階から3階まで運ぶような場合)は、コスパは良くないがクレーンで運んだり、人力で頑張って運んだりしています。
これはコスト面や安全面、効率面でみてもあまりよいとは言えません。クレーンはお金と場所をとりますし、人力で輸送する場合は時間もかかり、階段などを上って輸送する場合は効率が悪く、事故の危険もあります。
特に建設業界では少子高齢化に伴う「人手不足」が長年大きな課題となっています。貴重な人的リソースを必要な場所に回し、効率の良い持続可能な建設を行うには、機械で代替できることは代替していかなければなりません。
そこで僕たちが開発している『ロープ自走式エレベーター』が役立ちます。この輸送機は任意の地点での輸送ができるので、人力での輸送を代替し、効率よく輸送することが可能です。
こちらの映像のように、階段や足場にロープを取り付けて輸送を行うことができます。1階から3階までは約10秒、最大で100㎏*の物資を輸送することが可能です。
*この値はインタビューにより判明した、建設現場で使うにあたり必要な最低限の値である50㎏を超えてはいます。ただ実際に使うとなると1トンほどは必要だという意見もいただいているため、今後モーターやバッテリーをアップグレードすることで可搬重量を大きくしていく予定です。
そして、このプロジェクトは建設現場という単位でのみインパクトを与えるものではありません。建設業界全体にも良い影響を与えると信じています。LIFTにより安全で効率の良い作業が実現されることで、危険な作業が多いという印象を払拭し、建設業界の労働人口の増加と業界全体の活性化につながるのではないでしょうか。
これまであなたたちはなにをやってきたの?😯
この2か月間の概要は下のツイートのとおりです👀
ちなみにこの投稿の3日後にクラファンの寄附金が目標金額の94%に到達しました!!みなさまありがとうございます!!
日常の活動としては次の4つです
輸送機開発
建設現場の方々、建設企業へのインタビュー
SNS更新(めちゃがんばってます)
輸送機開発
輸送機の開発は、主にSELECTというサークルで行っています。LIFTというプロジェクトは、「このSELECTで開発しているものを社会に応用させよう!」という思いから始まったものです。SELECTはどういう団体なのか、どういう学生が集まっているのかといったことはWebサイトやTwitterに預けることにして、ここではLIFTで行っている活動をご紹介します。
建設現場の方々、建設企業へのインタビュー
文字通りインタビューを行っています。僕たちのプロジェクトは、すぐに販売する!といった段階ではなく、『ロープ自走式エレベーター』の可能性を探っている段階です。
建設業界の課題を深掘り、この輸送機についての率直な意見を現場の目線から聞いています。
建設業界を一から勉強している僕たちにとってはまだまだ知らないことばかりで毎回新たな学びがあります。
インタビューはメンバーがコネクションのある人に直接依頼したり、知り合いを紹介してもらったりしてインタビュー相手を探しています。(仙台市経済局の方にもお世話になりました🙇♂️)
これまで累計で10回ほどインタビューを行ってきました
(LIFTの前プロジェクトも含めると数十回ですね🤔)
このインタビューの経験もいつか記事にしようと思います!
SNS更新(めちゃがんばってます)
このクラファン期間の2か月間、毎日欠かさずTwitterを更新しました。
最初の1か月間はとにかく多くの方にこのプロジェクトを知ってもらうことを目的とした投稿をしていました。建設業に携わっている方のアカウントをたくさんフォローし、プロジェクト内容や目的、資金の使い道やロープ自走式エレベーターの優位性などを繰り返し投稿しました。
フォロワーがある程度まで増えたのちは、それまでの投稿の内容に、活動の様子や思いを含めて投稿するようにしました。一度フォローしていただいた方に、どんな人がどんな思いでこのプロジェクトをやっているのか、ということを伝えるためです。具体的にはインタビューや開発の様子、取材していただいたことへの感想を投稿したり、プロジェクトの必要性などをこれまで以上に強調したりしました。そのほかにも、スピードや可搬重量など具体的な数字を含めて定量的な視点からアピールをしました。
そして実証試験や公開昇降実験などのイベントを行い、ライブ感を演出しようと努めました。クラファンが終わるのをただ待っているのではなく、イベントの様子を画像や映像で見せることで、徐々にプロジェクトが大きくなっていることを伝えられるような投稿を心掛けているところです。
実証試験ではなにをやったの?🐶
上のツイートにもありますが、僕たちは実際の建設現場で輸送機を使用してみるという実証試験を行いました。
この実証試験は、仙台市の土木・建築企業の「深松組」さまと連携し実現したものです。深松組の皆さま、ご協力いただきまして誠にありがとうございました。
今回の実証試験の会場は、仙台市内のとある小学校でした。
現場に着くとまずは深松組の方と打ち合わせ。
今回の工事についての簡単な説明をしていただき、危険な点や気を付けるべき点について教えていただきました。
その後、輸送機のセッティングを行い、昇降試験を始めました。
はじめは、ロープを斜めに張った状態での昇降。
荷物がない状態ではスムーズに動くことが確認されました。
次は私たちが持ってきた「もっこ」をつけてみました。
もっことは、建設業界ではよく使われる、資材を運ぶための道具です。風呂敷のような要領で包み、運びます。
この時のおもりは、2Lペットボトルを5本。10㎏ですね。
途中で引っかかってしまいました。
これは実際の建設現場で試さないとわからないことの一つですね。
建設現場ではよく、このように足場を支えるために、建物と反対側に足場を建てているそうです。
建物に向かう方向に風が吹いたときは、その建物が支えになるので心配いらないですが、反対に建物側から吹いた時は何も支えがないので倒れる危険性があります。それを防ぐために、この映像のようによく横に鉄骨を渡しているそうです。
そこで、垂直での昇降に切り替えました。
このロープ自走式エレベーターの強みを活かせるのは、場所を取らない垂直な輸送です。その試験の様子がこちらです。
資材(おもり)の輸送には、「電工バケツ」※と呼ばれるものを用いてみました。
場所を取らず、効率よく運搬できているのが伝わるかと思います。
※これは本来輸送するためのものではないのですが、運搬量が軽いこと、安全が確保できていることから特別に使用を許可していただきました。
この輸送が私たちが想定していたものと最も近いものであり、実現できたときには達成感を覚えました。
実証試験で何を学んだの?🫠
実証試験を通して、多くの改善点も見つけることができました。
主なもので言うと、
資材の受け取りの問題
資材を運搬する道具
ロープにエレベーターを取り付けるのに時間がかかること
が挙げられます。
課題①資材の受け取り
資材の受け取りに関しては、上まで資材を届けた後に安全に受け取るための工夫が必要となります。
現状のままでは、身を乗り出して資材を取り出す必要がありますが、これだと危険です。
現在考えている案としては、
・足場ブラケットを用いて張り出した場所を作る
・ウィンチのようにロープの先端が足場より奥に出るようにする
といったものです。
もし良いアイデアがあれば教えてください!
課題②資材を運搬する道具
資材を運搬する道具については、今回はモッコや電工バケツを用いました。しかし先ほども申し上げた通り、それぞれ取り回しや安全性の面で問題があります。
この輸送機で運ぶものとしては、かさばるパネル材や塗料、足場の骨組みを考えています。それぞれに合ったインターフェースを作ってみてもよいかもしれません。
課題③ロープへの設置の簡便化
現在、輸送機をロープに取り付けるのには約10分ほどかかってしまいます。
これは締めなければならないねじが多く、一つ一つに時間がかかってしまうからです。
このままでは実際に建設現場で使うことは到底難しいととらえています。
セッティングを誰にでもできるように簡便化し、すぐに使える状態にしたいと思います。
以上が実証試験をやってみて見つけた主な課題です。
まとめと今後やりたいこと
ここまで長い記事を読んでいただき、誠にありがとうございます。
拙い文章ではありましたが、私たちのこれまでの活動が伝わっていたら幸いです。
私たちが開発している『ロープ自走式エレベーター』はまだプロトタイプです。発展途上のプロダクトなので、まだまだ課題は山積みです。
今後やりたいことも、山のようにあります。
先ほど申し上げたような課題を解決するために、
資材の受け取りを簡単にするような仕組みの考案
資材を運搬するインターフェースの開発
誰でも使いやすいようにするための、取り付け機構の改良
より高性能なモーター、バッテリーなどの購入
上記課題を解決し、再度実証試験の実施
もう一つ輸送機を製作し、安全性の検証
などをしていきたいと思っています。
しかし、最初にもお話ししたように、プロジェクト【LIFT】は学生のみで進めています。そのため、上記のようなことを実行したくても、金銭的に難しい、ということが多々あります。
最後まで読んでいただいたところ恐縮ですが、そんな私たちの活動を応援したい!と思ってくださった方は、下記リンクからご寄付をしていただけますと、この上なく幸いです。
執筆時点で、目標金額まで残り1.6万円。
頂いた寄附金は、今後の活動のために大切に使わせていただきます。
今後もLIFTの活動の記事を更新していきたいと思いますので、フォロー、いいね、SNSでのシェア等をしていただけると励みになります。
5000文字を越える文章をお読みいただき、ありがとうございました。
今後の活動にもどうかご期待ください。
プロジェクトオーナー ゆきと
LIFTのTwitter
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