«Шнурята» в Голосе/ゴーロスのシュヌリャータ

音楽という表現はこれほどに自由なのかと衝撃を受けた。世界的音楽オーディション番組『The Voice』のフォーマットをもとにした『Голос』が、ロシアでは毎年Первый каналにて放映されている。そのシーズン7が放送されていたのは、2018年のことだった。

この時のнаставникは以下のメンバー。うち3人が初出演で注目が集まっていた。ロシアのショービジネス界を代表する、超豪華メンバーだ。
(初)Ани Лорак(アニ・ローラック)
(初)Константин Меладзе(コンスタンチン・ミラッゼ)
(初)Сергей Шнуров(セルゲイ・シュヌーロフ)
Баста(バスタ)

これまでにシーズン10まで開催されてきたГолос。公式YouTubeチャンネルでは歴代の参加歌手によるパフォーマンスが全て公開されていた。しかし2022年になり、国営テレビに関係する動画やチャンネルがYouTube上から削除されてしまったのはよく知られている通りだ。

2018年、私が衝撃を受けたのは、Сергей Владимировичと彼によって選抜されたШнурята(チーム・シュヌーロフ又はシュヌーロフ・チルドレンという感じの意味合い)が創り出した音楽だった。

芸術作品から得た感動を言葉で正しく表現することは、想像以上に難しい。唯一文章らしくまとめられたが、どれほどの人に伝わるだろうか?
題材となる曲のオリジナルがもつコンテクストを考慮しながら、違う表現者によって歌われることによる効果を最大限に出すために、新しい表現者の人間性や感情的エネルギーを汲み取り、曲をゼロから再構築する。
こういう仕事をШнуров氏のチームによる作品から感じた。しかしそれが、音楽の才能には収まらない、彼のもつ高い人間的知性にも支えられているようにも感じられた。

Шнуров氏はシーズン9まで連続出演したのだが、回を重ねるごとに新しいШнурятаと共に溢れんばかりの才能を持ちより、そこから創り出された音は視聴者をワクワクさせ魅了した。

以下にシーズン7、8、9から1曲ずつ紹介する。歌は芸術であり、作品に込められる表現者の心が味わいであり、それが後に人々に受け止められ評価になるのだなと。『人間の心を評価する』。私にとっては芸術作品との向き合い方の第一歩を学んだきっかけでもあった。


Голос シーズン7 『Наше лето』
オリジナル:группа Валентин Стрыкало(2011年公開) →ソ連時代あるあるの『ヤルタ島の休暇』を楽しくコミカルに歌った曲。
Голос版:Сергей Мушта、Рушана Валиева →ヤルタで恋に落ちてしまった本人たちのロマンチックな情景が目の前に浮かぶようなアレンジ。

ГОЛОС 2018. Поединки. Яхта… Парус… Самый гармоничный дуэт! Сергей Мушта и Рушана Валиева/YouTubeチャンネル『Alex Mc』より

Валентин Стрыкало - Наше лето/YouTubeチャンネル『lurii Kaplan』より


Голос シーズン8 『Слёзы』
オリジナル:Децл(1999年公開) →思春期の心の叫びを書いたラップ曲。ロシアにおけるラップ文化の象徴的なアーティスト。
Голос版:Антон Токарев →2019年にДецл(本名はКирилл Толмацкий)が若くして急死したことへの追悼の意が込められている。

Антон Токарев Слёзы Впечатлил!/YouTubeチャンネル『Galex Brix』より

Децл - Слезы/YouTubeチャンネル『Detsl aka Le Truk』より


Голос シーズン9 『Никаких больше вечеринок』
オリジナル:Cream Soda(2019年公開) →ハウスミュージックの曲。
Голос版:Ирина Чувакова →曲に緩急とスタイルを与え、イリーナの歌唱とエネルギーも加わり、まったく新しい響きになった。

Ирина Чувакова - «Никаких больше вечеринок»/YouTubeチャンネル『Irina Chuvakova』より

Cream Soda - Никаких больше вечеринок/YouTubeチャンネル『Чикен Карри』より

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