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バイオダイナミック農法のアルケミ― (聖なる農業 第三章の3)               Sacred Agriculture         ーAlchemy of Biodynamics by Dennis Klocek より

第三章〖マクロとミクロ〗の3


内的表象の変容

さて今度は幾何学的な形について考えてみましょう。農的イマジネーションの一つの鍵となるのは、内的に表象変容(Morphing)のプロセスを行えることです。これは、一つの表象を別の表象に、また別の表象に変形させ、しかもその三つの表象が首尾一貫しているという内的感覚が維持できるということです。これができるようになると、内的表象は自然界に入っていくための「道具」になります。例えば、畑のある場所をどうするかとか、ある植物をどう扱うかとか。

たとえば、何かの異常、(普通でないもの)を発見して、どうやってそれについてリサーチしたらいいか知りたいとします。そこで、あなたが見たもののイメージを使って、そのイメージを前と後ろの2つの方向の時間軸で変形させてみるのです。あなたが世話をしている植物に何かを発見して疑問が浮かんだら、次のように自問します。「 この植物は、こうなる前はどんな姿をしていたのだろう? そしてこの後どうなるだろうか?」これが表象の変容(Morphing)です。現在の状態を真ん中にして、その直前の状態はどんなだろうかと想像し、次にこの後どんな状態になるだろうかと想像します。

自然界から得た表象を内的に変容させた後、それを静寂の中に持ち込む方法が大切です。表象の変化の順番を、逆の順番で想像するのです。そうすることで、私はその順番について、元素界に質問を投げかけているのです。これは表象による瞑想です。ルドルフ・シュタイナーは何度も何度も、概念ではなく表象で瞑想することを学ばなければならないと言っています。概念で他の存在の中に目覚めることは不可能です。自分がコントロールする表象によってのみ、他の存在の中で目覚めることができるのです。その実体や生命体が直前にどのように見えただろうかと想像し、次にどのように見えるかを思い描く。その表象が正しいかどうかは重要ではありません。それを描く私の意図が重要です。そのモノの背後にある意志と調和しようとする私の意志の動きが重要なのです。

結局のところ、私の道徳が問題となります。私の想像の裏にどんな意図があるかです。もし私の意図が自分の利益のためだけであれば、答えはそのモノの意志と調和することではなく、利益を得ようとする私の意図と結びつくことになります。自分の飼っている牛について何か理解したいとします。秘教的な叡智によれば、牛のデーヴァ(Deva)にコンタクトすることだといいます。牛のデーヴァとは、牛という種を司る根源的存在(Elementary being)です。古代の言葉では、種の内的活動を導く存在はデーヴァと呼ばれる霊的存在です。デーヴァとは輝く存在という意味です。ネイティブ・アメリカンはその存在を「グランドファーザー」と呼びます。私たちが農的な課題について話しかけたいのは、自然界のグランドファーザーに対してなのです。

ルドルフ・シュタイナーはグランドファーザーのことを根源的存在たち(Elementary beings)と呼びます。彼らは種としての意識を担っている霊的存在です。アーキタイプとも呼ばれます。もし水について質問があるとします。現代の西洋的な水の概念はH₂Oです。水のイメージは、岩の周りを流れる小川や、塩の結晶を溶かす溶液でしょう。だから、水分子の結合角について話すこともできるし、塩の結晶が水に溶けて、水が蒸発して塩の結晶が戻る様子をイメージすることもできます。

ここでの鍵は、私の内的活動のおける意志、あるいは意図にあります。水分子の結合角のような概念を学ぶためには、自分の意志を働かせる必要があります。一旦その概念を学べば、その概念は私の意志を働かせる代わりの、一種の省略記号となります。私はすでに意志を働かせてその概念を学んだので、あとはそれを思い出せばいいのです。記憶が私の意志を概念に固定します。最初にその概念を理解するのに必要だったのと同じ強さの意志は、それを思い出すのには必要ありません。これは誰でも分かります。つまり、単に抽象的な事実を思い出しているときには、私の記憶に意志はほとんど働きません。ただ 「H₂O 」という概念を思い浮かべるだけです。概念は一種の省略記号なので、私は意志を発揮する必要がありません。

言葉も同じです。たとえば、私たちは身振りで意志を伝える代わりに、言葉でその考えを伝えます。概念というものは、意志の代理人のようなものです。言葉は、私の思考プロセスにおける意志の骸のようなものなのです。自然界に存在するすべてのものは、創造的な存在の言葉のような意思として生まれます。そして変容を経て、生きている意志の言葉(Living will word)の骸となります。意志の言葉の生きている側はロゴスと呼ばれ、言葉はその骸です。私が話す言葉は、生きた創造的な言葉(Living word)の骸なのです。私が記憶している概念は、私がそれを学ぶために考えを巡らせた活動の骸です。自然のプロセスにもっと深く入り込むためには、自分の意志をもっと生きたレベルで働かせたいのです。それが想像的意識であり、より生きた思考です。想像的な認識とは、内的表象で考えることによって、死んだ思考を生きた創造的な経験に変えることなのです。

私は覚えておきたい固定した考えや処方箋を、生きた思考に変換しなければなりません。その処方箋や概念的な思考を、自分の意志で、それまでのようには自分が答えることはできないと感じるような領域へと持ち込むのです。

と言っても、私の意志はあまり活発ではありません。しかし、もし私が実際に光合成のプロセスを思い描き、光が様々な葉緑素を通してマグネシウムに作用するところを想像し、また、マグネシウムが何なのか、カリウムが何をするのか、物質としてではなく、植物の中の活動としてイメージしているならば、霊的創造的な存在に出会うための舞台は整っています。もしカリウムを単なる記号としてではなく、ひとつの活動として知っていれば、私の意志は違った形でカリと関わることになるのです。創造的な自然の存在たちのこうした内的な活動と同化し理解するためには、自然界に存在する現象を記号化することは役に立たちません。それでは、ただ骸を積み上げているのと同じです。私たちの内なる眼で、一連の活動を描き通す必要があります。

例えば、カリウムを考えてみましょう。カリウムはイオンチャンネルを作ります。これは概念です。でも、溶液中のカリウムが植物の中を点から点へと流れ、リンに引っ張られながら、酸素を運び、炭素に届ける様子を想像すれば、これらの考えは生きた表象になります。これが、シュタイナーが農業講義で化学の授業を行ったやり方です。ただ「カリウムは電子交換の結果、硫酸塩を形成します」と言うのではなく、その物質の活動を鮮やかに描き出したのです。私は自分の概念、特に死んだ鉱物についての概念を、生きた表象として蘇らせたいのです。そのために重要なのは、その度ごとに意志の力を使って、心の眼に表象を新たに創り出すことです。

表象形成の問題は、特にバイオダイナミック農法の実践者にとっては大きなものです。簡単なコツは、ごく単純な一連の流れを思い描くことです。例えば、これは直前に起こったこと、今はこれが起こっていて、こう見えている、次はこうなるだろう、という様に、地球温暖化から堆肥の山にミミズが何匹いるかまで、どんなことでも画像的(Pictorial)に心に描くのです。それによって、単なる事実としてでなく道徳的に、私の意志がその問題に関わることになります。

画像的意識

私は真の人間として自然の中に入りたいのです。新しい参加者意識で自然界を体験できるような、真の人間になりたいのです。その新しい参加意識とは、画像的(Pictorial)なものです。そうすれば、私の意見がどうであれ、それは私の意見であり、それでいいのです。異なる意見もあっていいのです。それでも、なぜ自分の意見がそうなのかを、自分自身に立証する必要があります。私の理解の外で、私の行動と反応し合う元素的存在たちと手を結ぶ必要があるのです。観察し、内的に表象し、静寂に持ち込み、簡単に記録する。この画像的な意識が、自然の中での仕事には、有効になります。

正四面体の反転

このプロセスがどのように機能するかを試すために、ちょっとした練習をしましょう。ここに6つの図があります。一番左は正四面体で、これは分子レベルではすべての鉱物構造の基礎となっているので、農に関わる自然界では非常に重要な形です。正四面体の表平面が、すべての珪酸塩の形成に関わります。シリカに由来するものはすべて、正四面体の変形から生じます。正四面体の反転対称形はそれ自身である(Self-reciprocal)と言われます。つまり、反転(Inside out)しても同じ形になるということです。

この一連の図形は、自己反転対称性を持つ正四面体を反転する過程です。左端では、三角錐のすべての辺が等辺で、全体が球体の中にぴったり収まります。正四面体の点はすべて、球体の内面に接しており、互いに等距離であると同時に、球体の中心からも等距離にあります。つまり、正四面体は球体に内接し、4つの等しい面と4つの等距離の点を持つピラミッドです。4つの点は、球の表面上でも互いに等距離です。これが正四面体についての基本的なイマジネーションです。

二番目の形では、球体が縮小しているのがわかります。球体は4つの点を通過して縮小し、それに伴って、4つの平面が現れます。これらの平面と、球体の中心から4つの点に向かってくる直線は垂直であり、これらの直線と球体が交わる点での、接平面を表しています。それぞれの平面の中心から球体の中心へ線を引くと、やはりすべて等距離です。

このイマジネーションでは、球体は実は無数の接平面からできていて、すべての接平面が球体の表面にそれぞれ一点で接しているということになります。この球体が正四面体を通って収縮するとき、接平面は正四面体の4つの点から四面体の中心へ向かって押し込まれ、その平面は三角形として現れています。粘土でできた正四面体を想像して、その先端のひとつを切り取ってみてください。点の代わりに三角形が現れます。その三角形は動いて来る接平面を表しているのです。では、すべての先端を切り落としてください。球体が正四面体を通って縮み始めるとそうなるのです。4つの三角形は同じ速度で中心に向かって移動しており、常に同じ大きさで変化しています。つまり、すべての平面が、縮小する一つの球体の上にあるのです。

これら4つの平面の中心は、球体上に対称的にあり、したがって互いに等距離です。これがプラトン立体として知られている形態のイマジネーションです。プラトンはこの種のイマジネーションによって、まさに私が述べてきたような能力を訓練しました。プラトンの秘教学派のおいては、この幾何学的な想像力の訓練が道徳的発達の基礎となりました。球体が縮小して来るのを想像し、図形を通って中心に向かってくる接平面を見るには、意志が必要なのです。

3番目の画像では、平面はさらに球体の中心に近づき、元の正四面体で正三角形だった面が正六角形になっています。そしてこの3番目と4番目の間にある形を心の眼に描いてみることがあなたの課題です。連続した形の変化を心に描き、次の形を発見できるかどうか試してみてください。これはあなたの想像力を非常に強めるものです。読み進む前に少し時間をとって、その形がどのように見えるかスケッチしてみてください。

接平面の正三角形がさらに大きくなり、六角形がさらに小さくなって、三角形になった時、もう一つのプラトン立体、正八面体になります。点と点が近づいて触れ合ったとき、新しい形が生まれるのです。このような形は、結晶学や鉱物学の教科書でよく見かけます。結晶の形は鉱物基質(Mineral matrix)の分子パターンに基づいてできます。さらに鉱物学の本では、その鉱物基質を 「空間格子(Space lattice) 」と表現します。これは、溶液の中で特定の平面が配列してその結晶形を作り出す潜在性のことで、それがどっちの方向に向かうかは、温度によって大きく左右されます。温度、圧力、pHのわずかな違いによって、1つの鉱物基質からまったく異なる結晶形が生じることがあります。また、実際の結晶の世界では、シリカが無数の異なる形になる作用があり、有機酸によっても岩石の風化が進みます。

鉱物の領域での作用は、基本的な分子レベルでの結晶の形成を目指します。そのためには、四面体分子が特定のパターンに配列する必要があります。これは単に力関係のことなので、目に見えないのですが、理論的には分子と呼ばれます。しかし、宇宙の四面体状の平面と呼ぶこともでき、すべての珪酸塩はこの形から生まれるのです。これに瞑想的に取り組むと、非常に有益で、鉱物学をまったく新しく理解し始めることができます。

分かるという感覚

先ほどの練習で、ある形が頭に浮かんできた時、ある種の感覚が生まれます。それは、「分かるという感覚 (Feeling of knowing)」です。この「分かる」という感覚こそが、元素界を探求する際の指針となります。これは数学的に面白いと考えるような感覚ではなく、心が特定の順序に従って、形の法則性に導かれているのを感じるのです。そのとき、「分かる」という感覚があります。これが正しい順序だという感覚を得るのです。このような感覚が、元素的な意識に取り組む鍵となります。

イマジネーションに取り組んでいて、何かのイメージに焦点が合ったとき、あるいは誰かが助けてくれたおかげで見えてきた時、この「見えてきた」という感覚が導いてくれます。その感覚こそ、私たちが行動し、観察し、表現し、沈黙し、記録するときに探すべきものです。一連の流れの中で、浮かんでくるイメージが現実と何らかのつながりがあるという感覚を得ます。そのつながりが何なのかは、わからないかも知れません。それでもそのイメージに取り組み続ければ、その背後にある原型的な存在たちが協力し、私の意志のダンスに参加してくれます。そして、やがては、ある人物や本、情報源に導かれます。たとえば、ネットサーフィンで何かを探しているときに、偶然、分子構造や四面体の何かの写真に出会い、「私が見ていたものに似ている 」と思うのかもしれません。形態的な共感は、諸力の関係を示す言語であり、それは深い洞察につながります。自分が見ていると思うものと従来の科学とのつながりを見つけることで、自分の現実認識をチェックすることができます。

このように画像的に問いかけるなら、天使たちもまた、私たちを導くことができます。もっとも、問いかけがなければ、何の導きも得られません。問いかけがあれば、助けがあります。表象の形成と消去は、自然界の形の背後にある原型的存在たちに対する、対話への招待です。そして彼らは、おそらく私たちが期待するような方法ではなく、彼らのやり方で答えてくれます。時には、私たちを少し柔軟にさせるために、魚雷を送りこまなければならないかも知れません。どのくらい私たちが頑迷であったり、的外れであるかを、私たちに教える必要があるからです。

このイマジネーションの練習がマクロ/ミクロのテーマと何の関係があるのかと思われるかもしれません。私がこれを取り上げたのは、第一に、正四面体というものが土壌科学を理解するための重要な研究対象であるからです。土壌科学の多く部分は、この一連の図が表すものと関係しています。第二の理由は、「分かるという感覚(Feeling of knowing)」について取り上げたかったのです。

結晶の形

ファントム水晶

さて今度は、結晶のイメージに移りましょう。この写真はファントム水晶と呼ばれます。プラトン立体とその構造についての議論を踏まえて、この水晶の形を見て、それが成長する様子を心の眼で見ようとしてみてください。今この瞬間の直前はどのような形をしていたのか、また、今はその形で止まっているようにみえますが、次はどのような形になるのか、自分自身に問いかけてみましょう。そして次は、静寂に耳を澄まします。水晶の中でファントムが形成されるとき、何が起こっているのか想像できますか? それを観察し、表現し、静寂の中に持ち込みます。意見を作り上げるのではなく、ただ「わからないけど、あなたはどう思いますか?多分、こうじゃないかと思うのですが、、、」と言うのです。水晶の中の形はどこから来たのか? どんなプロセスでそれらが出来上がったのか、想像できますか? ファントムは、その生成過程のいくつかの順序を明らかにするので、非常に興味深いものです。観察し、表現し、しばし静寂の時を持ちましょう。

結晶学によれば、結晶は内表面の塊です。結晶学者たちは、結晶に光を当て、その光がどのように作用するかを見て研究します。水晶にある種の光を当てると、光は直接通り抜けるのでなく、回転します。これは、水晶の内部が統一的に構築されているからです。水晶は単なる物質の塊ではなく、形が作用する法則に従って、無数の表面が整合性を持って配置され、全体を構成しているのです。結晶の最も基本的な単位は四面体であり、四面体の分子形態は小さな螺旋状に配置されています。

四面体の分子は互いに重なり合い、ねじれた鎖のように回転します。その小さな鎖を何度も何度も繰り返していけば、水晶の形ができあがります。分子の螺旋状の束の間には、エネルギーを伝達する通路があります。結晶の内部空間は、回転する平面で構成され、それが光を回転させる内表面なのです。
もう一度、水晶を見て、回転する内表面と鎖のように繋がる空間について考えてみてください。岩石はそれを形成した生きたプロセスの骸です。生きた岩石とは宇宙的実在としての光です。土は太陽の子供であり、岩石は星の光に起源を持つのです。

科学によれば、結晶の内表面は電荷を帯びており、それによって光が結晶内を通ることができ、その中にパターンを作り出して、エネルギーを蓄えることができます。水晶に2本のリード線をはんだ付けし、水晶の下にマッチの火を近づけると、電流が流れます。マッチを離すと、電流は逆方向に流れます。このような反応は、圧電効果と焦電効果と呼ばれます。私たちは、水晶が光を保持することを知り、ファントムから内表面の形成の仕方を知り、水晶が無限の内表面から構成されていることがわかりました。

このように、私たちが内的表象を描くとき、最初は、普段見ているように世界は現れます。水晶を見れば、「これは岩石だな」と。しかし、イマジネーションの訓練を始めると、結晶の形を一種の知性として経験することができます。その知性は極めて高次のもので、間違いを犯しません。けれども、その高度に秩序づけられた知性がすべてだとしたら、生命は存在しないでしょう。生命は高度に秩序化された形の中に自由の余地を求めます。生命のための空間があるから、変化の余地があるのです。その変化の余地が成長なのです。

マカバ

この図形は、自己反転対称である正四面体の理想化された形で、星型正四面体として知られています。秘教界ではこれはマカバ(Merkaba)と呼ばれ、人間の光体の形だと言われています。

空間格子 ― 水の分子構造 ― シリカの分子構造

正四面体が連結し、成長し、回転すると、水晶ができます。そして、どう螺旋を描くかで、それぞれ異なった形ができます。左の図は鉱物学の本から引用した、空間格子(Space lattice)です。先に紹介した水紋の画像やクラドニ図形とよく似ています。中央は水の分子構造、右はシリカの分子構造です。基本的に、水は無限の内表面を持つ生きた結晶であり、光を集め、伝達します。

      角閃石                 シリカ

左図は角閃石(Amphibole)と呼ばれる火山性珪酸塩鉱物(Volcanic silicate mineral)の、星型分子構造です。角閃石が風化して、やがて雲母を生じ、それが土壌の主要な風化サイクルを生み出します。右図はシリカそのものの構造図です。四面体分子の鎖が同じ方向に回転して、光の通路を生み出し、光がシリカ結晶の中を流れるのです。

ブラジル・ツイン

これは、ブラジル・ツインとして知られるアメジストです。一組の正四面体が右に回転していくと同時に、もう一組の正四面体が左に回転していきます。だから双子と呼ばれます。シリカのジェスチャーは、結晶格子に沿って螺旋を描きながら光を一方の端からもう一方の端へと移動させるのに対し、アメシストのジェスチャーは、右へ行ったら、左へ行き、また右へ行き、左へ行くのです。シリカの結晶の形を見ると、光のイメージのように、光源からまっすぐに伸びていきます。しかし、アメシストの形はまったく違ったジェスチャーです。普通はジオードの中に見つかるのですが、結晶点ははっきりと形成されていて、柱は非常に短く、クラスターは内側に集中しています。光は結晶を通り抜けず、ツインの中に留まります。水晶もアメジストも四面体分子から生まれますが、両者の分子ダイナミクスの違いは、完成した結晶の全体的な成長構造に現れます。四面体分子構造のジェスチャーは、どんな力関係が働いているかのイメージを与えてくれます。アメジストを使って作った、バイオダイナミック調合剤は、植物の成長をある方向では抑え、別の方向で成長させたいときに使うことができます。

ジオードはマグマの中で形成されます。高温のマグマの中にガスの泡ができ、マグマは冷えて収縮し、ガスは空洞に集まります。マグマはさらに収縮して冷え、ガスは圧力を逃がすために小さな噴出口を作ります。マグマが冷却と加熱を繰り返すにつれて、高温の岩石中を流れる珪酸塩が波状に噴出口に送り込まれます。空洞の内部は最終的に、非常に精製された珪酸塩の溶岩が層状に満たします。コロイド状の珪酸塩は徐々に固まり、やがて分子構造によって結晶が形成されます。シリカコロイド中の金属は、この鉱物形態特有の圧力と温度の影響を受け、二重索の双子構造を生み出します。

トルマリン

秘教的には、シリカは地球が宇宙を見るための眼だと考えられています。それは地球の感覚器官として、天球を望み、どこにいても光を捉えます。光とシリカは親和性があるのです。この図は、もうひとつの珪酸塩結晶であるトルマリンです

トルマリンは地球の体内で興味深い形成過程を経ます。例えば、ソノマ山からサンタ・ローザ盆地にかけての山脈全体は太平洋プレートが大陸プレートに潜り込んでできました。 そのとき、プレート内の鉱物は高圧を受けます。加圧された岩石内では、亀裂に染み込んだ水がシリカを液化させ、地質学者が 「ロックミルク 」と呼ぶ液状化が起こります。この流れが岩盤の中を進むと、プレートの摩擦によって砕かれた小さな岩石の粒子に出会います。粒子の間を流れるロックミルクは、粒子の片側に小さな渦を作り、下流側に長い結晶が形成され始めます。この図では、真ん中の粒子の近くにある黒い塊がそれです。上流側には結晶の薄い皮ができます。その後、結晶の成長は一旦落ち着きますが、ロックミルクの流れは続きます。流れの温度、速度、圧力の揺れ動きが、結晶形成の反応サイクルにつながります。ホウ素の存在によって、上流側に成長する結晶形があり、それがトルマリン結晶の分子バランスをとります。図では、黒い部分を囲む灰色の部分がそれです。その後、第二の成長過程を経て、バランスの取れた流れが続き、独特の性質を持つトルマリン結晶が誕生します。

このプロセスはトルマリン化と呼ばれ、岩石が圧力下にある場所ではどこでも大規模に起こります。だから私たちは今、周囲の山々にあるトルマリンの、とてつもないバランス力によって座っていられるのです。トルマリンはバランスをとる珪酸塩です。水晶は流れる珪酸塩であり、アメジストは包み込む珪酸塩です。宝石の形態としてのシリカの3つの進化形ですが、その形態は、それぞれがどう光を扱うのかを教えてくれます。そして形成過程は、その結晶の性質と、農業に利用する可能性を教えてくれます。

フィロ珪酸塩

この図は、フィロ珪酸塩(Phyllosilicate)として知られる形です。フィロとは葉という意味で、雲母(Mica)のように重なった薄板状の構造を持つシリカのことです。雲母の構造は、層状の表面の間に水を引き込むようになっています。その水が腐敗した有機物によって酸性であれば、カリウムやその他のミネラルが四面体構造から溶け出します。上下にある小さな四面体列は雲母の分子です。四面体は鉱物内部の表面積を増やします。四面体が上から垂れ下がり、下から突き出しているので、水は平らな表面よりもはるかに多くの表面積を循環します。いつでも表面というのは、エネルギーが活性化する領域です。表面が微弱酸と反応すると、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リンなどが漏れ出します。つまり植物が成長するために必要なものすべてが土壌溶液中に溶出するのです。このように、四面体の形は珪酸塩の基礎であり、植物が成長するのに必要な活性化した層や表面を形成し、光がその構造を形成するのです。

水は毛細管現象によって層の間に入り込み、そこにあるすべての形態と反応します。すると突然、ミネラルを含んだ溶液が土壌を流れ、植物自体の中にも流れます。後述するように、木部(Xylem)、師部(Phloem)、形成層(Cambium)、髄線(Pith rays)などは同じタイプの表面構造でできていて、これらの層は植物のエネルギー伝達の源です。

毛細血管

この図は、動物組織の毛細血管の形状です。毛細血管が六角形の結晶の形をしているのは、各細胞に届く血液の量が最大になるように、肉体は設計されているからです。このような組織は、血液が細胞間に最大限に行き渡り、浸透するような形をしています。動物の体においてさえ、機能的な形が結晶的で、六角形であるのは驚くべきことです

このように、岩石から植物、鉱物、動物と観てきましたが、同じマクロからミクロの関係性があります。これらの形はどこから来たのでしょうか?それは円から来ています。円はどこから来たのでしょうか?無限に遠いどこかから来たのです。

極小表面の作用

石鹸膜                   桑実胚

もう一度、極小曲面の法則について考えてみましょう。左の図を見てください。これは針金でできた枠を石鹸液に浸して、持ち上げるとできた石鹸膜です。ここに見える形は、植物の中で無限に繰り返される細胞の形です。このような形態が一般的なのは、先に述べたように、極小曲面の法則によります。

風船を膨らませて、どんどん大きくすると、ついには表面の張力が内部の質量によって保持できなくなり、風船は破裂します。人体には、栄養を吸収し、通常の30倍ほどの大きさになるまで、どんどん膨らんでいくことのできる細胞があります。卵細胞です。卵細胞は受精すると、内部で30個の小さな細胞に分裂し、それぞれは体細胞と同じ体積になります。

極小曲面の法則に従わないことが許される唯一の細胞は卵細胞であり、その理由は桑実胚(Morula)と呼ばれるものを形成しなければならないからです。私たちが生きるためには、細胞は統一性を保つ必要があります。 そのためには、一定の大きさの細胞表面を保つことで、細胞内のエネルギーを表面から失い過ぎないようにするのです。だから細胞が大きくなりすぎて完全性を保てなくなると、分裂します。

授精卵細胞の分裂

この図の左の細胞内では、核が2つに分裂しています。中央は「娘」細胞ができた状態です。右は次の段階で、娘細胞も分裂を始めています。そしてやがて、卵細胞は30個ほどの細胞に分裂します。授精卵が完全に分裂すると、桑実胚と呼ばれます。卵細胞内の原形質が大きすぎるので、細胞は完全性を保つために何度も分裂を繰り返すのです。

通常の細胞分裂を繰り返すと、成長する細胞の表面が質量に対して非常に大きくなり、細胞は環境と反応し過ぎて、体細胞としての統一性を維持できなくなります。そのため、細胞は核レベルで分裂を始める二つの部分の間に膜を形成するのです。細胞が一定の大きさを保つ必要性が、極小曲面の法則です。

鞍型モデル              ヒト胚

極小曲面の法則の意味するところは、発生学をはるかに超えたところにありますが、特に発生学においては非常に明白です。右の図は21日目のヒト胚で、鞍のような形が見えています。左の図は位相幾何学(Topology)に関するウェブサイトからで、いわゆる 「鞍型(Saddle form) 」と言われる形です。極小曲面の法則の考えは、自然界の曲面には独特の性質があるということです。曲面を形成する有機体は、それ自身と環境との間のエネルギーの交換を制御し始めます。自然界における理想的な形は球体です。なぜなら、球体のどの場所も、他のどの場所と比べても同じ高さにあるからです。これは位相幾何学(Topology)の考え方です。位相幾何学は、機械の設計やエネルギーの流れを維持するための最も効率的な表面の設計に用いられます。この考え方によると、球体を一周するのは、平らな平面を走るのと、同じ量のエネルギーを消費することになります。その世界では、平らな平面と球体の表面は同じものなのです。

生物は成長していくと、球形から離れていきます。球形はエネルギーを保持する上では最も効率的ですが、極小曲面の法則に従わなければなりません。位相幾何学的によると、球体から膜を形成するには、極小曲面の法則に従う過渡的な形を作る必要があります。自然界では鞍型(Saddle form)がその過渡的な形態で、それによって極小曲面を維持しつつ、球体から平面への移行が可能になります。鞍型によって、生物は統一性を保ちながら、増殖できるのです。ですから、臓器が鞍型あるいは一連の鞍型を持つ場合、極小曲面の法則が関係しています。生物は鞍型を形成して球体を維持しようとするのです。

 鞍型の発展形               ウサギの骨盤

左図は、高度に進化した位相幾何学的モデルです。コンピューターで建築用の桁になりうる多くの鞍型の形状を生成できます。たくさんの鞍型が繰り返されることで、多くの穿孔を持った軽くて強い構造物を作れます。鞍型は、複雑でありながら極小曲面の法則に沿った、球体の原型を維持できるのです。左図は飛行機の骨組みの設計図かも知れませんが、右図はウサギの骨盤のクローズアップです。これらの形状の対応には驚くべきものがあります。

トーラス

最後に、この図にあるのはトーラスです。表面のどの部分も、他のどの部分とも同じ高度を保ちます。トーラスとはドーナツ型のことで、自然界では、強度が必要だが軽量でなければならないもの(例えば骨盤)に穴を開ける方法です。トーラスで骨に穴を開けても、極小曲面の法則を守ることができます。図に示されているように、トーラスのドーナツ型では、穴を作る壁の断面が円形になります。

ここでは、表面のすべての部分が極小曲面の法則に則っており、統一性を犠牲にすることなく、形を大きくすることができます。トーラス上では、球面や平らな平面上と同じように、どの面をどの方向に進んでも、高さが変わることはないし、同じ曲面上にいるのです。これが数学的地形の不思議な世界です。

つまり、トーラスは、球体や平面と並んで、極小曲面の法則を例証する一つの形です。この考え方は、自然の形態言語の基本であり、自然の形が持つエーテル的(生命的)な力を理解するのにも役立ちます。極小表面は、動物や植物が器官を形成する方法を規定しているのです。

毛細管現象

これは毛細管現象の理解にもつながります。極小曲面の法則は、成長するものの効率性を規定しているので、その中の液体も、この生きている世界の法則に従わなければなりません。謂わば、死んだ鉱物は生きた鉱物にならなければいけないのです。植物の中では、液体は生命を持った鉱物です。科学的にも、それは生きた結晶と認識されています。自然界に存在するタンパク質も結晶であり、酸も結晶です。生きているものと死んでいるものの境界は、時として曖昧になるのです。その意味で、ルドルフ・シュタイナーの「土壌は太陽の子」という言葉を思い出すことは有益です。彼が珪酸塩の重要性を強調したのは、その中の無限の内表面が生命を支えているのだからです。

水が無限の内表面を持っていることは、既に見てきました。植物が土壌中の水と相互作用するとき、植物内の内表面は水の内表面と反応し、水は鉱物の表面と反応することで、植物内での栄養交換が可能になります。機能的には、根毛や菌根、そして農業科学のすべては、非常に小さな場所にどれだけ多くの表面を存在させることができるかにということに関係しているのです。毛細管現象は、極小曲面の法則に起因しており、それがなければ生命は存在できません。

自然界では空間がどんどん小さくなると、奇妙なことが起こり始めます。レモン大の球体があれば、表面は二次元で、質量は三次元です。しかし、球体をどんどん小さくしていくと、ある時点で表面積の縮小率が体積の縮小率に追いつかなくなります。

最初は、球体の質量は表面積よりもはるかに大きいのですが、ある時点から、表面積よりも質量が小さくなってしまうのです。逆説的ですが、このスケールでは表面積は増加します。この現象は、土壌溶液中の分子構造、脂質、ミネラル、さらには蒸気の作用を説明するものです。これらのものは非常に小さくて、地上の現実ではなく、宇宙的な別の世界に住んでいます。その溶液は別の次元にいるのです。植物中の生きた溶液は、ほとんどそこにあるというより、宇宙にあります。このような不思議な現象が、ホメオパシー希釈法や、バイオダイナミック調合剤の撹拌方法の基礎となっているのです。物体が小さければ小さいほど、表面は大きくなるということを理解すれば、極小曲面の法則の重要性がわかります。

全く直感に反するように思われるかもしれませんが、これが生命の源です。大いなる境界線のこちら側の物理法則から見れば、生命というものは説明が付きません。基本的に、バイオダイナミクスにおけるシュタイナーの視点からは、生命は目に見えない世界にある根源的なものであり、物質はそこから目に見えるところに落ちてきた派生的なものなのです。これは、物質が生命を創造するという有機化学の観点からの捉え方とは正反対です。シュタイナーによれば、生命は光の中にあり、光のプロセスのイメージとして物質が現出して来るのです。極小曲面の法則がホメオパシーの基礎であることは、知られていますが、極度に希釈された溶液を植物が取り込み、それが植物の中で生命を宿すことの基礎でもあります。表面が反応し合うとき、そこにある種の内なる力が生まれ、水の構造がその表面に強く引き付けられます。それが毛細管現象です。

毛細管現象によって、微弱な引力が極小の表面に流れを生み、それが植物の世界では大きな活力となります。植物の成長は、土壌から太陽に向かって上昇する生命力の活動と、特徴づけられます。生命が土壌から太陽に向かうとき、それに光が関わり、鉱物が作り出した生命の化学が太陽の領域へと昇華します。そして太陽のエネルギーは植物の器官を通して齎されます。これがマクロとミクロの関わりのあり様です。


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