ミドルフェーズの転換期:グローバル人材で拡がる成長の可能性
こんにちは、Startup Tech Live事務局です。「エンジニア組織のグロースに必要な知見の流通」をテーマに様々なイベントを開催しております。
こちらは2024年2月22日に開催したイベント「変化をチャンスに変えるエンジニア組織の成長アプローチミドルフェーズの転換期:グローバル人材で拡がる成長の可能性」のイベントレポートになります。
今回はモデレータとして樽石デジタル技術研究所 樽石将人さん、スピーカーとして、プレイド田尾あずさん・Tech Japan 藪押竜太さんに登壇いただきました。
是非ご覧ください。
スピーカー
モデレータ
グローバルエンジニア採用を決めた背景は
グローバルエンジニア採用の背景
田尾さん)事業の規模が拡大している中で、プロダクトのエンジニアはもちろんですし、エンジニアもどんどん広げ、拡充していきたいと思っています。
優秀な人を取りたいとなった場合の採用難易度が年々上がっているという課題感が一番にあります。
あとは日本国内における採用コストも大きくなり始めていたので海外に目を向けることになりました。
TechJapanさんのおかげでインドのエンジニアと接点を持てる機会に恵まれましたので昨年から少しずつ始めているというのが大きな背景になります。
樽石さん)日本における採用難易度と採用コストの上昇が主な背景ですね。他社さんだと他にどのような背景がありますか?
薮押さん)1つ目は、プレイドさんの例と一緒で、国内の採用難易度が上がっており、優秀なエンジニアを採用するために、グローバルという選択肢を意識する会社が一番多いと思います。
2つ目は、今後プロダクトを、グローバルの市場に展開していきたい。
その市場にあったサービスやシステムを作っていきたいというところから、グローバルエンジニアの採用を進めるお客様がいらっしゃいます。
あとは、CEO、CTOの方が、元々シリコンバレーの企業で働いた経験や、海外の大学を出ている方は、日本とグローバルという垣根を意識せず、採用を進めています。
デジタル化の進化と共に非常にエンジニアのニーズが右肩上がりに上がってきた10年間かなと思います。1人当たりの採用単価で言うと、年々10年ぐらいをかけて10万、20万円上がってきてコロナが明けた後で言うと、ここ1年で約30万前後は上がってきている状況です。
採用市場の現状
樽石さん)日本では人口が減少し、特に労働年齢層の縮小が進んでいるため、国内での採用が難しくなっています。
これに対し、人口が急増している国、例えばインドや中国などでは、採用の機会がさらに広がっています。日本での求人に対する応募数と比較して、これらの国からは人口比で見てもはるかに多くの応募があるかもしれません。
特にインドでは、情報技術系の職種に対する応募者が多いと感じていますが、具体的な応募数のデータはありますか?
薮押さん)例えば日本では、データサイエンティストのポジションに対して1ヶ月の募集で約10名の応募があるのが平均ですが、インドではインド工科大学(IIT)のようなトップクラスの大学に絞って集めたとしても、1ヶ月で平均100-200名程度、多い企業で1,000名を超える応募があります。
これは、日本と比較して応募数が大体10倍〜100倍の規模です。
この実態から、国内外での採用市場の違いが顕著に示されています。
グローバル化に向けた一人目採用とは
海外人材採用の初期試み
樽石さん)採用がなかなか難しい状況と、コストがあがっている背景の中で実際に1人目をどのように採用したか、ご紹介頂きたいです。
田尾さん)実際に弊社としても海外人材を登用する取り組み自体が初めての取り組みだったので日系企業と海外の人材が一緒に働く知見を積むところからのスタートでした。
社員として採用する場合、検証できる期間がほぼないので、弊社で海外人材との協業が実現可能なのかどうか悩んでいました。
そのときにインターンとして2ヶ月間の期間限定のインターン生を受け入れるという取り組みを昨年の夏に行ないました。
期間限定で一緒に働いてみることができたので、そこの結果を見て本当に採用に踏み切るべきかどうか意思決定がしやすかったのは非常に良い機会でした。
書類選考だけで200名ぐらい応募をいただき、面接したのが10名~15名ぐらい、実際に話してみると、想定以上に履歴書だけではわからないような、本人の強みであったり会話のスムーズさであったり、日系企業に合いそうな学生だということがダイレクトにわかりました。
面談の段階で、ぜひ入社してほしいと思える学生もいらっしゃいました。
そこから実際に2ヶ月間のインターンで一緒に働いてアウトプットをみて最終的な判断ができました。
実際に一緒に働くことができたのはすごく重要な経験でした。
樽石さん)最終選考で数名いた方から最後1人目に決められたと思うのですが、決められたポイントはありますか?
田尾さん)1つは対話のしやすさですね。こちらの開発したいプロダクトの目的をきちんと理解をしてくれているかどうか。
2つ目は弊社のカルチャーに合っているかということも非常に重要視していた観点でした。
インドの場合上下関係が割とはっきりしている印象があるんですが上から言われたことだけ緻密にこなすのがすごく上手な人もいれば、自分で目的やプランを作って自分から主体的に動いて、上司や先輩と一緒に対等に働けるような人もいらっしゃると思います。
弊社の場合は、後者のプロアクティブに目的意識を持っている人を採用したいと明確に打ち出して、面談や書類選考の段階でもカルチャーにあっている方かどうかを重点に置きながらお会いさせてもらっていました。
対話のスムーズさと、カルチャーへのフィットにすごくマッチする学生さんに会うことができたので、そこが決め手になった部分です。
言語コミュニケーションは初期の大きな課題でしたが、技術の力を借りて乗り越えていきました。
現時点で言語が大きな問題になるとは考えられていません。
コードは、世界共通言語なのでエンジニア同士だと問題なく意思疎通できます。最初は、プロダクト開発の進め方や、プランニングしていく中でうまくいかない部分もありましたが、そこも技術の力で乗り越えました。
Slackで送られてきたメッセージをすぐに翻訳して返してくれるようなツールを入れてテキストベースの会話は比較的やりやすくなったのでそこのハードルは乗り越えられたと感じています。
グローバル採用戦略の実践と課題
薮押さん)スタートアップと中堅企業では、グローバル採用に対するアプローチに大きな違いが見られます。
300名未満のスタートアップでは、グローバル人材の受け入れに積極的に取り組み、競争の激しい中でも試行錯誤を繰り返しながら前進しています。
一方、300名から1000名規模の企業では、既存の制度や文化とのバランスを考慮しながら慎重に一歩を踏み出す傾向があり、このためスタートに時間がかかることもあります。
成功の鍵となるのは、マイルストーンを細かにセットし、アジャイル的な考えで1つ1つ前に進める事です。
最終的なゴールとして良くご相談いただくのですが、
海外エンジニアに長く定着していただける人事制度設計や組織体制の構築に関しても非常に大切な事ではありますが、過去先駆的に海外エンジニア登用を進められてきた企業様は、やはり1つ1つ課題を乗り越え現在の制度や定着率に到達されていると思います。
1人目の採用から完璧に受入れ体制を整えてからと考えてしまうと中々前に進める事ができません。
まずは1-3年後のあるべき組織の姿をイメージしつつ、短期間での成果積み上げを何より大切にし、前に進めていただく事が重要です。
特に、インターンシップを活用して、本採用する前段階でのマッチングを試みることは非常に効果的です。
この過程で、言語や文化の違いによるコミュニケーションギャップを克服し、企業と人材の双方にとって最適な関係を築くことができれば、その後の成功確率を高めることができます。
また、グローバル採用を推進するには、経営層やキーパーソンからの強力なサポートが不可欠です。
トップダウンでの決断と支援により、不確実性を乗り越え、新たな取り組みにチャレンジする文化を醸成することができます。ビザの問題や法人設立など、本採用に向けた具体的な課題に対しても、しっかりと計画を立て、準備を進めることが重要です。
グローバル採用における成功のポイントは、計画的にマイルストーンを設定し、経営層の強力なリーダーシップのもと、コミュニケーションの壁や文化的な違いを乗り越えていくことにあります。
技術力だけでなく、多様な背景を持つ人材を理解し受け入れることができれば、企業はグローバルな競争力を高めることができるでしょう。
樽石さん)グローバル採用を成功させるためには、明確な意思決定と段階的なアプローチが不可欠ですね。
まず、組織としてグローバル人材の採用に対する決断を下し、その決定を徹底して推進することが重要だと思います。
また、インターン制度のようなフレキシブルな採用手法を活用することで、企業は実際に海外人材が組織文化に溶け込めるかを試すことができます。
企業としてはリスクを最小限に抑えつつ、海外人材のポテンシャルを探ることが可能になります。このようにして、一人目の採用から始め、徐々に規模を拡大していく、小さく始めて大きく育てるアプローチは、グローバル採用における成功への道を切り開きやすいと思います。
グローバルエンジニア受け入れにおけるノウハウ
グローバル採用戦略の実践と課題
樽石さん)実際に働いている中で、日々課題やその課題に対する解決策について実践していることを教えてもらいたいです。
田尾さん)現在実施中のインターンシップでは、大きな課題に直面しているわけではありませんが、コミュニケーションの強化に注力しています。
特に、Slackを活用した日常的なコミュニケーションが基本となり、技術的な質問やプロダクト開発に関する情報交換が積極的に行われています。
このプロセスは、プロダクトの最終目標や働き方に関する理解を深めるために不可欠です。
インターンシップ開始当初には、企業文化やミッションを共有するためのオリエンテーションを設け、プロダクト開発の目的や従業員体験の向上に関する共有を行いました。
このような初期段階での共有は、インターン参加者にとっても企業のビジョンや文化を理解する貴重な機会となります。
今後は加えて、組織が目指すべき方向性のシェアやキャリア開発に関するサポートにも力を入れていきたいと考えております。
例えば、経験豊富なエンジニアがメンターとして関わり、キャリア開発に関する相談を行うことで、インターン参加者と組織の成長に繋がるのではないかと考えております。
これらの取り組みは、インターン参加者が企業に対してポジティブな印象を持ち、将来的に関わり続けたいと思ってもらうために重要だと捉えています。
弊社はオフィス環境を良くすることでコミュニケーションが生まれやすくなり、会社に行きたくなるようなオフィスを設計することも大事にしています。
そういった考え方もインドにいる学生にも同じように提供してあげることもすごく重要だと思っています。同じ仲間として関係値を作っていくところは、今後も重点的にやっていきたいなと思っています。
樽石さん)今のお話を伺ってるとオンラインで一緒に仕事をする上では、実はそんなに課題は起きなくて、例えば、国内でも起きる問題ではあるし、特有な感じではないですね。
田尾さん)特に技術的な話だとむしろ文字に起こしてあげた方が、的確なコミュニケーションが取れたりするので言葉でいろいろと質問するよりも、細かい話になるときは絶対に文字に起こしてくださいとお伝えしています。そっちの方が円滑に的確なコミュニケーションが取れるというのはインターンを通じて得た知見ですね。
樽石さん)言語がない分、ちゃんと言語化する。開発するときもテストドリブンやデザインドキュメントを作りましょうと話がありますが、よりその重要性が上がるイメージを持ちました。
そもそも、それがないと業務が成り立たない環境はポジティブなのかもしれないですね。
樽石さん)実際受け入れてから、多くの企業でどんな課題が顕在化するのか。例えば日本に来てもらうときに、ビザなどの事務的手続きなど、よくある落とし穴やトラブルについてぜひ教えてもらいたいなと思います。
薮押さん)1つ目は、グローバルな環境でのコミュニケーションの成功は、効果的なツールの利用と、明確な文書化に大きく依存しています。
特に、Slackのようなコミュニケーションツールを活用し、英語でのやり取りが一般的になっています。
技術部門ではないスタッフも翻訳ツールやZoomの同時翻訳機能を使用するなどして言語の壁を克服しています。
この過程で、特に大切なのは、コミュニケーションを文字に記録することです。これにより、日本の文化や前提知識を共有していない海外の学生にも、プロジェクトの目的や期待を明確に伝えることができます。
このようにして、コミュニケーションの隙間を埋め、期待と実際のアウトプットとのギャップを最小限に抑えることが、グローバルなチームでの成功の鍵となります。
2つ目は、グローバル人材の日本への受け入れには、ビザの発行というプロセスが関わり、卒業証書の取得時期とのスケジュール調整が必要です。
特に、秋口の入社が一般的になるため、企業側はこれに対応する準備が求められます。近年、コロナウイルスの影響を受けてオンラインで働く環境が充実し、特にインドの人材を雇用する際には、インド法人がない場合でも遠隔での勤務が可能になっています。
これにより、直接対面での作業が不要な企業では、EOR(Employer of Record)という手段を活用して、インドの人材による遠隔勤務を進めているケースが増えています。
樽石さん)オンラインワークが普及して、国境がなくなってきたと思います。日本であろうが、インドであろうがスムーズに働けますね。時差も3時間程度であれば、あまり大きな課題にならないですね。
まとめ
グローバルエンジニア採用の背景として、ビジネスの拡大と共に社内でのエンジニアニーズが増加していること、日本国内での採用の難易度の上昇、および人件費の増加が挙げられます。
この状況に対応するため、企業はグローバルな視野での人材確保へと視野を広げています。特に、人口が多い国々では、高い応募数と人材の母集団を期待できるため、インドなど海外の人材採用に注目が集まっています。
グローバル採用における成功の鍵は、文化的、言語的な違いを乗り越え、企業文化に合う人材を見極めることにあります。初期段階でインターンシップを活用することで、実務経験を通じた相互理解を深めることが可能です。
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