見出し画像

Uber、Lyft、Instacartの広告事業成長と収益・利益への影響

過去3年間の広告事業の成長率

Uber・Lyft・Instacart各社とも近年、プラットフォーム上の広告事業を新たな収益源として急成長させています。

利益への影響

広告事業は各社とも利益率が高く、企業全体の収益構造・収益性に寄与し始めています。

競合比較(市場シェア・競争環境)

オンデマンドサービス各社の広告ビジネスを取り巻く競争環境を見ると、小売・配車プラットフォーム各社がこぞって広告収入の取り込みを狙っている状況です。

広告フォーマットとターゲティング手法

各社とも、自社サービスの特性を活かした広告フォーマットを開発し、独自のデータを用いて高度なターゲティングを行っています。

  • Uber: Uberはモビリティ(配車)とデリバリーの両面で広告商品を展開しています。乗車中のアプリ画面に表示される「Journey Ads」や、地図・ルート表示画面でのバナー広告、Uber Eatsアプリ内での検索連動型広告(スポンサー掲載)が代表的です。またUber Eatsでは出前・小売向けに「Sponsored Items」と呼ばれる商品プロモーション枠を提供し、飲食店やCPGブランドが自社商品を目立たせることができます ( Uber Technologies, Inc. - Uber Announces Results for Second Quarter 2023 )。加えて、車内タブレット広告や車両上部のデジタルサイネージ(提携するAdomni社経由の車載スクリーン)によるアウトドア広告も展開しています (Lyft forecasts 15% annual growth in gross bookings through 2027, shares jump | Reuters)。ターゲティング手法としては、ユーザーの所在地・行き先データや利用履歴に基づく文脈ターゲティングが特徴です。例えば「ユーザーがWalmartに向かっている時にP&Gの商品広告を表示する」といった目的地ベースの広告配信も可能です (Uber, DoorDash announce ad business expansions )。Uberはまた、2023年には動画広告の提供も開始し、UberおよびUber Eatsアプリ、アルコール通販のDrizly、提携する車内タブレット上で動画広告を配信しています ( Uber Technologies, Inc. - Uber Announces Results for Second Quarter 2023 )。これらの広告はUberの持つ多面的なデータ(移動・飲食履歴等)を活用しており、広告主にとって精度の高いターゲティングが魅力となっています。

  • Lyft: Lyftもアプリ内広告、車内タブレット、車載デジタルサイネージといったフォーマットを導入しており (Lyft forecasts 15% annual growth in gross bookings through 2027, shares jump | Reuters)、Uberに近い形でのマネタイズを進めています。Lyftアプリ内では乗車待ち時間や経路マップ上にブランド広告を表示でき、車両のデジタルスクリーンでは都市走行中に広告映像を流すことが可能です。ターゲティングは主に地域・時間帯・イベントなどに応じたものや、ユーザーの過去の乗車パターンに基づくセグメント配信が考えられます。特に小売店や飲食店、旅行・観光施設など「目的地」と親和性の高い広告主がLyftのデータを活用し始めており (Lyft forecasts 15% annual growth in gross bookings through 2027, shares jump | Reuters)、例えば空港への移動が多い利用者に旅行関連サービスの広告を出す、といった使い方がされています。Lyftはまだ広告ネットワーク規模ではUberに劣りますが、自社プラットフォーム内に閉じた形で精度の高い広告ターゲティングができる点を売りに、広告主を開拓しています。

  • Instacart: Instacartは小売プラットフォームとしての商品検索連動広告が中心です。ユーザーがInstacart上で検索・閲覧する商品リストに対し、ブランドメーカーが「Featured Product」広告(スポンサー商品)を入札・掲載できます (Instacart Advertising: Unleashing Your Brand's Potential Across the Customer Journey) (Instacart Advertising: Unleashing Your Brand's Potential Across the Customer Journey)。これらスポンサー商品は通常の検索結果に類似した形式で表示されますが、「sponsored」とタグ付けされており、目立つ棚位置を買うオンライン版の「棚代(フィーチャー料)」とも言えます (Instacart Advertising: Unleashing Your Brand's Potential Across the Customer Journey)。また、特定カテゴリーのトップに表示するバナー広告やクーポン、購入後のレコメンデーション枠など、購買ジャーニーの各段階に沿った広告メニューを提供しています。Instacartの強みは、膨大な購買データに基づく精緻なターゲティングです。ユーザーの過去の購入履歴や現在閲覧している商品カテゴリーに応じて関連性の高い広告をリアルタイムに表示でき、「買い物の意思決定点」で広告メッセージを届けることが可能です (Instacart Advertising: Unleashing Your Brand's Potential Across the Customer Journey)。例えば、特定ブランドのシリアルをよく購入するユーザーには競合他社の新商品をクーポン付きで訴求するといった戦略が取られます。Instacartはこのようなデータ駆動型のPPC広告モデルを採用することで、高いクリック率と転換率を実現し、広告主であるCPGメーカーにとって重要なデジタル販促チャネルとなっています (Instacart IPO breakdown: On the grocery market, ads, memberships, profitability and valuation | Wing Venture Capital)。

今後の成長予測

Uber、Lyft、Instacartはいずれも、広告事業を今後の重要な成長エンジンと位置付けています。 業界全体でも小売・オンデマンド分野のデジタル広告は拡大が続く見通しで、各社は以下のようなトレンドや計画を示しています。

以上のように、Uber、Lyft、Instacartはいずれも広告事業を通じて収益基盤を強化しつつあり、特にInstacartとUberはその高成長・高利益率に支えられて業績を伸ばしています。競合他社との競争はあるものの、各社が持つユーザーデータとプラットフォーム内エコシステムを活用できる広告ビジネスは今後も拡大が予想され、収益全体に占める広告の比重および利益への寄与は今後さらに大きくなるでしょう。


いいなと思ったら応援しよう!