メキシコの水不足に取り組むスタートアップの紹介
メキシコは現在、深刻な水不足に直面しており、国土の約68%が中度から極度の干ばつに苦しんでいます。特に北部が深刻で、多くの主要貯水池が枯渇し、多くの州で緊急事態が宣言されています。
私のいるメキシコシティでも、地下水が急速に枯渇しており、重要な貯水池の一つであるCutzamala(都市圏で必要な水の27%を供給している)は現在水位が低すぎて供給に利用できなくなるだろうともいわれています。
水不足の主な原因は、気候変動、急速な都市化だけでなく、インフラの老朽化や水漏れも大きな課題となっています。
今回は、こうした深刻な水問題に取り組む注目の3つのスタートアップを紹介します。
1. MicroTERRA
本拠地:Mexico City
創設者:Marissa Cuevas Flores, Fany Villieres, Paola Constantino Diaz
設立年:2018年
資金調達:Seed, 52万USドル
既存の水産養殖場のインフラを利用して、水生植物のLemna(ウキクサ)を栽培することにより、養殖場の廃水を削減しているFoodtech/Agtechスタートアップ。
このウキクサは、水を浄化する効果があるだけでなく、成長過程で天然の甘味料を生産します。このウキクサより抽出された成分は、砂糖に代わる甘味料として注目されており、同社はFloraという商品名で開発しています。
1kgのFloraを生産することで以下の効果があるとのことです。
1. 165立方メートルの水(1000回分の浴槽の水)を浄化
2. 平均的なガソリン車で55マイル走行するよりも多くのCO2(21kgのCO2相当)を除去
農業は世界の淡水の70%を使用しているといわれているため、MicroTERRAのアプローチは、持続可能な食料生産を目指すうえで注目すべき取り組みといえます。
2. Hydrosafe
赤外線カメラを搭載したドローンを使用して、肉眼では確認できない見逃されがちな水漏れを検出し、水資源の保護に役立つ技術をもつスタートアップ。
本拠地: Saltillo, Coahuila
創設者: Alejandro Granados, Alberto Granados, Luis Carlos Morán
設立年: 2022年
資金調達: Seed、30万USドル
コラボ例: NIAGARA, Grupo México, CONAGUA, Agua y Drenaje
2018年にモンテレイ工科大学のプロジェクトとして始まったこのスタートアップは、2022年Google Cloudによりラテンアメリカで最も有望な100社のうちの一つとしても選ばれ、既にAguascalientes、Guanajuato、Coahuilaなどのいくつかの自治体で既にサービスを提供しています。
以前よりパイプラインの漏水は飛行機やヘリコプターで検出されてきましたが、コストが大幅にかかっており、また、歩きながら音聴調査をするのでは、遠隔地やアクセスが不自由な場所の地下パイプの水漏れを特定するのは困難とされていました。
温暖な地域では漏水により周囲の地面が冷却され、寒冷な地域では漏水が地面を温めることから、ドローンに搭載された赤外線カメラで地面の温度変化を記録し、漏水やパイプラインの損傷リスクを迅速に特定することができます。
日本でも赤外線カメラを搭載したドローンは、災害時の遭難者発見やソーラーパネル等の点検に使われていますが、メキシコでも同様にこの技術が活用されていて、都市部だけでなく、農村地域やインフラの老朽化が進む地域でも、効率的な水資源管理に貢献しうるスタートアップとなりそうです。
③Hydroloop
最後に紹介するのは、住宅や商業施設における水の浪費を減らすためのシステムを開発するスタートアップ。主な製品は、シャワーでお湯が出るまでに無駄になる冷たい水を再利用するシステムを提供しています。これにより、一日6から20リットルの水を家庭で節約できるといいます。
本拠地: Querétaro, Querétaro
創設者: Hugo Iván Salazar Ugarte
設立年: 2012年
資金調達: Unknown
下のイメージのように、ボタンを押すだけで、配管に溜まっていた冷たい水が一旦給湯器に戻り、シャワーで冷水が出るのを最小限にとどめる製品を開発しました。
同社はこの製品の開発に約300万ペソを投資し、2019年に販売を開始しました。現在システムのさらなる価格削減と太陽熱ヒーターへの適応に取り組んでいるそうです。
このシステムは家庭の水道料金を大幅に削減するという経済的なメリットの他にも、地域全体の水使用量が減少することで、水道インフラの負担軽減にも貢献するでしょう。
参考記事:
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