a16z - Zapierの成功の秘密:3年で黒字化、時価総額50億ドルへ
a16z
フェイスブックやAirbnbなどへの投資で知られる米国を代表するトップクラスのVC
How Zapier Became Profitable in 3 Years and Scaled to $5B with Wade Foster
スタートアップが成功するためには、顧客の声に耳を傾け、迅速に行動する能力が求められます。Zapierはその好例であり、わずか3年で黒字化を達成し、現在では時価総額50億ドルを超える企業へと成長しました。本記事では、共同創業者ウェイド・フォスター氏の言葉をもとに、Zapierがどのように製品を磨き、顧客を獲得し、スケールアップを実現したのか、その具体的な戦略を深掘りします。
Zapierとは?
Zapierは、異なるアプリケーション間を自動で連携するプラットフォームです。コードを書く必要なく、例えば「Googleフォームに入力があるとSlackに通知を送る」や「メールの添付ファイルをGoogleドライブに保存する」など、日常業務を効率化する自動化ワークフロー(「Zap」と呼ばれる)を簡単に作成できます。現在、5,000以上のアプリに対応しており、企業や個人が反復作業を削減し、生産性を向上させるのに役立っています。
1. アイデアの発見と行動の早さ
Zapierの起源は、2011年にミズーリ州の小さなハッカソンイベントでした。ウェイド氏と共同創業者のブライアン、マイクの3人は、当時の職場で感じた「業務ツール間の連携の難しさ」を解決するために集まり、週末で初期プロトタイプを作成しました。このプロトタイプは、異なるアプリケーションのAPIを統合し、「もしこのアクションが起きたら、次にこれを実行する」という仕組みを構築するものでした。
彼らはすぐにこのプロジェクトを副業として続けることを決定しました。大きな資金調達が難しい地方での創業だったため、「利益を出せるビジネスモデルを早急に作る」ことが必須でした。
2. 顧客の声を活用した製品改善
最初のプロトタイプは、エンジニア以外のユーザーにとっては非常に使いづらいものでした。しかし、ウェイド氏は一人ひとりの顧客と直接向き合い、スカイプを通じてどこでつまずくのかを観察しました。
例えば、フォームのトリガーを設定する際、選択肢が「フォーム名」ではなく「フォームID」で表示されるなど、一般ユーザーには不親切な仕様がありました。この問題を解決するために、毎回のセッションで得たフィードバックを開発チームに伝え、迅速に改良を進めました。この地道なプロセスを100回以上繰り返すことで、製品の完成度を徐々に高めていきました。
3.初期顧客の獲得戦略
初期段階では、大規模な広告やマーケティングに頼る余裕はありませんでした。その代わり、以下の戦略を活用しました:
1. コミュニティフォーラムの活用
SalesforceやEvernoteのフォーラムを調査し、「このツールを統合できる方法はないか?」という要望が多いスレッドを見つけました。ウェイド氏はこれに返信する形で「自分でAPIを使って統合する方法」と、「Zapierで簡単に実現できる方法」を提案しました。この手法で得られるトラフィックは少なくとも、熱心な顧客を確実に引き付けることができました。
2. 個別対応による信頼構築
最初の顧客であるポッドキャスターのアンドリュー・ワーナー氏には、必要な統合機能がまだ実装されていませんでした。しかし、ウェイド氏は彼のリクエストを聞いたその日に機能を追加し、迅速な対応で信頼を獲得しました。このように、少人数の顧客でも深く対応することで、満足度とリピート利用の両方を確保しました。
4. SEOとパートナーシップによる拡大戦略
顧客獲得の効率化を図るため、ZapierはSEOを活用したアプローチを取りました。特に注力したのは以下の点です:
検索エンジン向けのアプリディレクトリ作成
「PayPalとHighriseの統合」など、具体的なニーズに応える検索結果が乏しい状況を改善するため、Zapierは各種統合機能の紹介ページを作成しました。これにより、特定のキーワード検索から多くのトラフィックを獲得できるようになりました。パートナー企業との協力
Zapierの統合機能を提供するアプリ(MailchimpやDropboxなど)の開発元と協力し、各社のブログやメールでZapierの紹介をしてもらいました。この相乗効果により、Zapierは初期から効率的な顧客獲得を実現しました。
5. 価格設定の工夫とブランド戦略
Zapierの初期価格設定は、必ずしも完璧ではありませんでした。しかし、その過程で重要なポイントを学びました:
価格設定の実験
最初の顧客には100ドルでベータ版のアクセスを提供し、その後は5ドルという手頃な価格でベータ版利用者を募集しました。このように、価格を設定することで「本当に必要な人」を絞り込む効果があり、質の高いフィードバックを集めることができました。ユニークなプラン名
初期の価格プランでは、Fibonacci数列を基に「$1、$23、$58」と設定し、それぞれを「アンペア」「ボルト」「オーム」と名付けました。この遊び心のあるアプローチが顧客の興味を引き、ブランドの独自性を確立しました。
6. リモートワークを活用したチーム構築
Zapierは創業当初からリモートワークを採用しており、地理的制約を超えた人材採用を実現しました。最初の採用はカスタマーサポート担当者で、顧客対応に多くの時間を割いていた創業者の負担を軽減しました。その後、統合機能の開発を加速させるためのエンジニアリング人材や、SEO強化のためのコンテンツ作成者を採用しました。
7. 顧客中心主義を貫く哲学
ウェイド氏は、「顧客の声に耳を傾け、迅速に対応すること」の重要性を何度も強調しています。また、成長するにつれて「奇抜さ」を失わないことが、競争の激しい市場での差別化に繋がると述べています。実際に、彼は顧客からのバグ報告に対して数時間で修正し、個人的なメッセージを送るなど、個別対応を重視していました。
VCの教科書―VCとうまく付き合いたい起業家たちへ
スタートアップとVC(ベンチャーキャピタル)のリアルを知りたいなら必読!著名VCアンドリーセン・ホロウィッツの元事業運営責任者スコット・クポールが、資金調達やVCの投資基準、起業家との関係構築の秘訣を徹底解説します。エリック・シュミットや『リーン・スタートアップ』著者エリック・リースが推薦する本書では、タームシートの読み方やピッチの技術、イグジット戦略まで、シリコンバレーの現場で培った実戦知識を網羅。起業家や投資家が成功するための必須ノウハウを提供します。
Zapierの成功は、顧客のニーズを理解し、それを迅速に解決する姿勢によって成し遂げられました。初期のリソース不足や技術的な課題を克服するための創意工夫と、常に顧客と密接に関わる姿勢が、成長の鍵となったのです。このストーリーは、どの規模のスタートアップにとっても、成功への実践的な指針となるでしょう。
関連書籍