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ヨーロッパのスタートアップ市場の現状:停滞から新たな成長へ

2024年、ヨーロッパのスタートアップ市場は投資額の減少が続きながらも、パンデミック以前の水準を上回る安定した成長を見せました。しかし、2021年の市場ピークからは44%の水準にとどまり、特にレイターステージの資金調達が著しく落ち込んでいます。本稿では、主要国やセクターごとの動向を具体的に掘り下げ、ヨーロッパ市場の現状と未来を見据えます。

引用記事:


ヨーロッパ市場の全体像


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2024年、ヨーロッパのスタートアップ市場への投資額は510億ドルに達しましたが、前年比では5%減少しています。これは2023年の540億ドルから減少したものの、パンデミック以前の水準を依然として上回っています。

グローバルなベンチャーキャピタル投資に占めるヨーロッパの割合は16%となり、2022年以前の18%からわずかに低下しました。この背景には、一部のヨーロッパ企業が本社をアメリカに移転する傾向があり、これがアメリカの投資額を押し上げている可能性があります。

レイターステージの資金調達は特に大きな打撃を受け、2021年の市場ピーク時の31%にまで縮小。一方、シードやアーリーステージの投資活動は比較的活発で、市場ピーク時の60%を維持しています。

国別の市場リーダー


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ヨーロッパ内で最も多くの投資を集めた国はイギリスで、総額170億ドルを占め、ヨーロッパ全体の3分の1に達しました。続くフランスが79億ドル、ドイツが76億ドルと、それぞれ全体の15%を占めています。スイスも健闘し、28億ドルを調達しました。

これらの国々は、独自のスタートアップエコシステムを育成し、国際的な注目を集めています。

セクター別の投資動向


  1. ヘルスケア/バイオテクノロジー
    ヨーロッパ最大の投資分野は、ヘルスケアおよびバイオテクノロジーで、110億ドル以上の資金が投入されました。ドイツの「Isotopen Technologien München」、ロンドン拠点の女性向けヘルスケア企業「Flo Health」、フィンランドの健康追跡プラットフォーム「Oura」などが注目されています。

  2. 金融サービス
    金融サービス分野では96億ドルが投資され、ロンドンの「Monzo」や「Abound」、バルセロナ拠点の「SeQura」などが大規模ラウンドを成功させました。

  3. AI(人工知能)
    AI分野への投資は88億ドルに達し、これはグローバルAI投資の約9%に相当します。ロンドン拠点の自動運転スタートアップ「Wayve」、パリの基盤モデル企業「Mistral AI」、ベルリンのAI防衛企業「Helsing」、そして翻訳分野の「DeepL」が主要プレーヤーです。

四半期ごとの動向と資金調達ステージ



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Q4での堅調な締めくくり
2024年Q4の投資額は120億ドルに達し、前年同期比で安定的に推移しました。特にレイターステージの資金調達は52億ドルで、前年同期比25%増加しています。

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シード・アーリーステージの資金調達

  • シードステージの投資は16億ドル(前年比29%減)、800件以上の取引が行われました。

  • アーリーステージの投資は51億ドル(前年比7%減)で、300件近いラウンドが成立しました。

これらのデータは、ヨーロッパ市場における投資家の関心が依然としてアーリーステージのプロジェクトに集中していることを示しています。

ヨーロッパ市場の展望


ヨーロッパのスタートアップ市場は、パンデミック後の調整期を迎えています。現在の課題は、レイターステージの資金調達を再活性化させることと、グローバル競争力を高めることです。特に、AI分野やヘルスケア分野では、さらなる技術革新が期待されています。

国際的な資本の流入を促進しつつ、シードやアーリーステージでのエコシステム構築を進めることが、長期的な成長を支えるカギとなるでしょう。

2024年のヨーロッパスタートアップ市場は、厳しい環境下で安定性を維持しましたが、さらなる成長の余地を残しています。主要セクターでのイノベーションを促進し、新興市場へのアクセスを広げることで、ヨーロッパ市場の競争力を再び高めることが求められます。

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