【1/28】注目の海外スタートアップ資金調達5選
近年、多種多様な分野で革新的なサービスを展開するスタートアップが大規模な資金調達を実現し、世間を賑わせています。新技術やユニークなビジネスモデルで投資家の注目を集め、さらなる躍進を目指す──そんなスタートアップの台頭は、あらゆる業界に大きなインパクトをもたらすでしょう。ここでは、注目を集める資金調達ニュースをピックアップし、その魅力と可能性に迫ります。
1. Token Security:サイバーセキュリティ
クラウドとAIの成長に伴い、機械アイデンティティ(Machine Identity)の数が急増し、それに伴いハッカーにとっての侵入ポイントも爆発的に増加している。2023年には認証アプリ「Okta」が、サービスアカウントの悪用によってハッキングされ、2024年には、Microsoftが古いテストアカウントを介した重大なハッキングを公表した。
この問題に立ち向かうため、2023年に創業された「Token Security」は、今年シリーズAラウンドで2,000万ドルを調達した。このスタートアップは、企業の技術基盤全体を分析し、自動的に機械アイデンティティを特定し、管理者が誰であるかを明確にすることで、侵害を未然に防ぐ仕組みを提供する。
「ハッカーは侵入するのではなく、ログインするのです」と、Token SecurityのCEOであるItamar Apelblatは語る。企業が人的アイデンティティのセキュリティを強化している一方で、自動化されたシステムは十分に保護されていない。このような問題を解決することが、今後のサイバーセキュリティにおける大きな課題となる。
2. Manas AI:創薬AI
LinkedIn創業者のReid Hoffmanと癌研究者であるSiddhartha Mukherjeeが共同設立した「Manas AI」は、AIを活用した新薬開発を進めるスタートアップである。特に、乳がん、前立腺がん、リンパ腫の治療薬開発に焦点を当て、2,400万ドルの資金調達に成功した。
他のAI創薬企業と比べると資金調達額は控えめであるが、Manas AIは、MicrosoftのAzureを活用し、強力なAI技術とクラウドコンピューティングを駆使して新薬の設計と試験を行う戦略を採用している。これは、AIの力で分子設計を効率化し、従来の手法よりも迅速かつ精度の高い創薬を実現することを目的としている。
3. TravelPerk:企業向け出張管理SaaS
ビジネストラベル管理プラットフォーム「TravelPerk」は、2億ドルの資金調達を行い、企業価値を27億ドルに倍増させた。パンデミック後、世界のビジネス旅行市場は急速に回復しており、2024年には1.5兆ドル規模に達すると予測されている。
TravelPerkは、企業の出張管理を一元化し、HRや経費管理システムと統合する機能を提供する。また、スイスのスタートアップ「Yokoy」を買収し、AIを活用した経費管理機能を自社プラットフォームに組み込むことで、より包括的なサービスを展開する。
「リモートワークが増えても、対面での会議や業務が必要なケースは依然として多い」と、TravelPerkのCOOであるJean-Christophe Taunay-Bucaloは指摘する。このようなニーズに応えるために、企業は効率的なトラベル管理ツールの導入を加速している。
4. Helion:核融合エネルギー
核融合発電の分野で注目を集める「Helion」は、4億2,500万ドルの資金調達を発表し、企業価値を52億4500万ドルに引き上げた。Helionは、2028年までにMicrosoftに電力を供給する契約を締結しており、業界の中でも特に野心的なスケジュールを掲げている。
従来の核融合技術とは異なり、Helionは「フィールド反転構成(Field-Reversed Configuration)」という独自の方式を採用している。この技術により、プラズマの運動エネルギーを直接電気に変換することで、従来のタービン方式よりも高効率な発電が可能になる。
同社の最新プロトタイプ「Polaris」は、業界標準よりも迅速に開発されており、2028年の商用化に向けて重要な一歩となる。HelionのCEOであるDavid Kirtleyは、「当社の技術は、従来の方法とは根本的に異なるアプローチを採用しており、核融合発電のブレークスルーを生み出す可能性がある」と語る。
5. Alice & Bob:量子コンピュータ
フランスの量子コンピュータ開発企業「Alice & Bob」は、1億400万ドルの資金調達を発表し、「フォールトトレラント(Fault-Tolerant)」な量子コンピュータの実用化を目指している。
同社は、「Cat Qubit」と呼ばれる新しい量子ビットの設計を採用しており、ハードウェアレベルで誤りを自動的に修正する技術を開発している。この技術は、シュレーディンガーの猫の原理に基づいており、誤り耐性を持つ新しいアーキテクチャを実現する。
投資家の間でも量子コンピュータに対する期待は高まっており、GoogleやMicrosoftも量子コンピュータの開発を加速させている。「計算能力の需要が急増する中で、量子コンピュータは、次世代の革新的技術として注目されている」と、AVPのパートナーであるFrançois Robinetは語る。
注目スタートアップの資金調達ニュースは、最新技術やビジネスモデルの進化だけでなく、投資家や企業パートナーにとっても大きな可能性を秘めています。今を逃さずに連携や出資を検討することで、業界に先駆けるテクノロジーの恩恵や新たな収益機会を得ることができるでしょう。今後の動向に引き続き注目することで、さらなるイノベーションとビジネスチャンスが広がります。
先週の大型資金調達