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中国AI界の新星、DeepSeek創業者とは何者か?
中国のAIラボDeepSeekが、その最先端の推論モデルR1を発表し、瞬く間にシリコンバレーを揺るがした。このモデルは、米国のAIリーダーたちが持つ技術と比較して遥かに少ない計算リソースで同等の性能を発揮するとされており、さらにオープンソースとして公開されている。これが市場に与えた影響は大きく、DeepSeekアプリは、App StoreのランキングでChatGPTを抜き去りトップに躍り出た。
この急成長を支えるのが、DeepSeekの創業者であり、39歳の起業家・梁文峰(Liang Wenfeng)である。彼は中国のテック業界において、次世代AI技術の旗手として急速に認知される存在となった。
投資家からAI革新者へ
梁文峰は、元々AI分野の起業家というよりも金融・投資の分野で成功を収めた人物である。大学卒業後、2013年に投資会社Jacobiを設立し、AIアルゴリズムを活用して株式市場の予測を行うという独自のアプローチを確立。2015年には、High-FlyerというAI支援型ヘッジファンドを創設し、資産運用の世界でも注目を集めるようになった。このHigh-Flyerが、現在80億ドル規模の資産を運用しており、DeepSeekの主要な支援組織となっている。
彼の特異な点は、AI技術を駆使しながらも、それを利益追求のみに限定しない戦略を採用していることだ。多くのAI企業が商業化を急ぐ中、DeepSeekは完全にオープンソースのAI技術を提供することで、AI分野の進化そのものに貢献しようとしている。
政府との関係と戦略的アプローチ
梁文峰が真の意味で中国のAI業界のキーパーソンとして認識されたのは、2025年1月20日、中国の首相・李強が主催する非公開シンポジウムに参加したことだった。この会議には、中国政府関係者や国有企業の幹部、大手テック企業のCEOが招かれ、梁文峰は9人のスピーカーの1人として発言を求められた。彼の若々しい姿がCCTVにより報道されると、中国国内外で彼の存在が一躍注目を集めることになった。
この招待自体が、中国政府がDeepSeekの役割をAI業界における「革命的存在」として評価していることを示している。これまでの中国のテクノロジー業界は、海外の成功例を模倣しながら成長してきた。しかし、梁はこの慣習に疑問を投げかけ、「中国のAIが永遠に後追いの立場に甘んじるべきではない」と主張している。
「中国のAIは、1〜2年の遅れがあると言われるが、本当の差は『オリジナリティと模倣』の違いだ。」(2023年7月、Waves誌のインタビューより)
DeepSeekの戦略とAIの未来
梁文峰率いるDeepSeekのアプローチは、既存のアプリケーション開発には注力せず、純粋なAIモデルの開発に集中するというものだ。この方針は、消費者向けプロダクトを作るのではなく、最先端のAI技術を開発し、それを他社が活用できるようにするというビジョンに基づいている。
この戦略は、かつての中国のテック業界が見せた急速な模倣・拡大路線とは一線を画す。彼は「単なる利益追求」ではなく、技術そのものの進化を重視している。
「過去30年間、中国のテクノロジー業界は『金を稼ぐこと』だけを重視し、イノベーションを軽視してきた。だが、本当の革新には『好奇心と創造への欲求』が不可欠だ。」(2023年7月、Waves誌のインタビューより)
DeepSeekがオープンソースのAIモデルを提供することは、米国のOpenAIとは大きく異なる戦略だ。彼はオープンソースが単なるビジネスモデルではなく、文化的な価値を持つべきものであると考えている。
「たとえOpenAIがクローズドであっても、競争相手が追いつくのを阻止することはできない。オープンソースは文化的な実践であり、単なるビジネス戦略ではない。」
起源と未来への展望
梁文峰は、広東省で生まれ育ち、幼少期からビジネスとテクノロジーの両面に強い関心を抱いていた。浙江大学に17歳で入学し、電子通信工学を専攻。その後、情報通信工学の修士課程を修了し、2015年に量的ヘッジファンドを共同設立。2023年には、AI研究に本格的に転身し、DeepSeekを立ち上げた。
現在のDeepSeekは、中国のトップ大学の卒業生や博士課程の研究者を中心に構成され、彼らは「世界で最も難しい問題を解決する」という目的のために集まっている。
「最高の才能を引き寄せるのは、世界で最も難しい問題に挑戦することだ。」(2023年7月)
梁の最終目標は、「汎用人工知能(AGI)」の開発である。OpenAIもこの目標を掲げているが、DeepSeekはよりオープンなアプローチでこれを達成しようとしている。
彼のリーダーシップのもと、DeepSeekは単なるAI企業を超え、中国AI技術の未来を形作る重要な存在となりつつある。