隠れた挑戦者インタビューvol.2ROXX 山田浩輝氏 自分と性格が真逆の同級生と学生起業した物語
まずは簡単に自己紹介をお願いします。
青山学院大学在学中の2013年11月、たまたま同じクラスだった中嶋汰朗とROXXを共同創業し、現在11年目になります。当時からこれまで取締役として活動してきて、2023年8月からはSVP of Corporateを兼務する形でコーポレート全体を管掌しています。
代表取締役の中嶋さんから「一緒に事業をやろう」と誘われた時、「”友達”という関係ではなかったが二つ返事で承諾した」というエピソードを記事で拝見したのですが、どうしてすぐに承諾できたのでしょうか?
中嶋とはクラスメイトでしたが、”友人”と呼べるほどの距離感ではなく、Twitter(現 X)こそ相互フォローしていたものの、LINEなどのコミュニケーション手段での連絡先は交換していませんでした。履修していた授業が同じになることはあり、教室で顔を合わせた時になんとなく会話をするぐらいの距離感でした。彼とは起業について話したりすることもなく、私のなかでは「バンドマンだな」と認識している程度でした。 それでも中嶋から起業に誘われた時、「一緒にやってみよう」とすぐに決心できたのは、中嶋の人柄に社長業への適性を感じていたからでした。
というのも、私は将来の収入面での理想イメージや自分自身のパーソナリティから「いつか会社経営をしたい」という漠然とした思いを抱いていた一方で、自分自身は社長業にあまり向いている方ではないなとも感じていました。なので、物事を起こし、そのすべてに責任を持って最終意思決定をするという社長業に向いているような人物と一緒に起業できたらいいなと考えていた矢先、中嶋から声をかけられ、すぐに承諾する流れになりました。
中嶋さんが山田さんを共同創業者として誘った理由はどんなものだったのでしょうか?
「自分とは異なるタイプの人に声をかけていた」というのは中嶋本人からもよく聞いています。中嶋はバンドマンなので、「それぞれが別の楽器を弾けるからバンドメンバーとして価値がある」という考え方を持っていて、”自分とは全く異なるタイプで、自分とは全く違うことができそうな人”に声をかけたうちの一人が私だったという経緯でした。
山田さんのnoteを拝見すると、「裏役に徹する」という印象を受けたのですが、どうして起業という道に行き着いたのでしょうか。
背景として高校時代にさかのぼるのですが、当時の私は周囲の大人たちに対して「心から信頼できない」というネガティブな印象を抱いており、「自分は社会に適応することが難しいのだろうな」と感じて過ごしていました。実は、最初に入学した高校の「勉強さえできていれば良い」という価値観が合わず、1年も経たずに転校しました。偏差値が20ほど低い高校に転校したのですが、そこで出会った先生や同級生たちの方が人としての魅力を感じられました。
その時「環境に自分を適応させるのではなく、自分に合う別の環境を選択した」という成功体験を得たことで、のちに大学卒業後の選択肢を検討するなかで「従業員として組織のルールに従うだけの働き方をしたくない」と考えていた私が回避行動として選んだのが起業という道でした。
回避行動として起業を選んだとのことでしたが、実際に起業をしてみてギャップなどはありましたか?
起業そのものに対するギャップはほとんどありませんでしたが、経営者としての中嶋の成長は私にとって想像をはるかに超えるものとなりました。社会人経験が全くない状況で起業し、手探りで経営に取り組む日々のなかで、さまざまな失敗を経験しながら意思決定の精度を磨き、組織と事業を前へ前へと進めてきました。中嶋が経営者として飛躍的な成長を遂げるきっかけとなったのは、先輩経営者との関わりを増やしていったことだと思います。毎週のように先輩経営者から学んだことを私や社内のメンバーにも伝えて、すぐに組織運営に反映したり、事業戦略にエッセンスを取り入れたり、本質にたどり着くまでのスピードが格段に早くなっていきました。
共同創業者として会社経営に取り組んできて、最もきつかった時期のことを教えてください。
1番きつかったのは、旧事業のソーシャルヘッドハンティングサービス『SCOUTER』(※)が伸び悩んでいた頃です。起業したてで始めた事業で、右も左も分からないなか、自分たちなりに試行錯誤を重ねていましたがうまくいかず。当時10名ほどの組織だったのですが、資金繰り悪化の兆しがあった場面で、「メンバーへの給与だけはどうにか確保したい」という必死な思いで「生活費にどのぐらい必要ですか?」と1人ひとりに尋ねたことを今もはっきりと覚えています。その時の経験があったからこそ、その後、事業面で「きついな」と感じることはありませんでした。何かしらの難局と向き合うことがあっても、「SCOUTERの時と比べたらまだましだね」という会話を中嶋としています。 ※2018年4月にサービスクローズ
どのような人がスタートアップに向いていると思いますか?
創業期のスタートアップは、創業メンバーと似たタイプで組織を構成するのが良いのではないかと考えています。そうすることで、コミットメントの高い組織が作られ、スピーディーな事業立ち上げが実現しやすくなるからです。
ROXXの場合、創業当初は、大学での講義に出席することよりも軽音楽部での活動や遊びを優先しがちな20代前半のメンバーを中心に、中嶋が声をかけていました。彼らは当時の私たちと同じように、創業したばかりのROXXで頑張るか、社会からドロップアウトするかという選択肢しか持ち合わせていないような状況で、前者を選択したメンバーでチームが構成されていきました。その時たまたま同じ選択肢が目の前にあり、同じものを選んだという点で、結果的に価値観の似た者同士が集まったんですね。
最後に、スタートアップに飛び込もうとしている人にメッセージをお願いします。
起業にともなうリスクがほとんどなくなったと言われる昨今、それでも「一歩を踏み出すのが怖い」という時は、1週間ぐらいかけて「飛び込むリスク」についてじっくり考えてみるのが良いのかもしれません。そして、「スタートアップに入りたい」と思っている自分の心と向き合ってみてほしいです。その心の中にある火のタネを、見逃さないようにしてください。
SHIBUYA STARTUP OASISの紹介
SHIBUYA STARTUP OASISは、「日本一オープンな、起業家カフェ。」というコンセプトのもと、渋谷駅徒歩5分に位置するコミュニティスペースです。起業家同士、先輩起業家、投資家との新たなつながりが自然と生まれる場、まさにスタートアップにとっての“ルイーダの酒場“のような場所となっています。
名前の通り、起業家はあらゆるリソースを無料で利用することができ、まさに“OASIS”として機能しています。
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