会社オフィスにおける温度、湿度管理の考察
目次
・クールビスの発端
・事務所衛生基準規則と不快指数
・エアコンのセンサーにおける誤差
・兵庫県姫路市での取り組み
・28度設定の会社に勤務している人で、暑いと思う人へ
・クールビスの発端
2005年(平成17年)当時環境大臣の小池氏が、呼びかけたことより広まった。
※「ノーネクタイ・ノージャケット」キャンペーン
夏場の軽装による冷房節約を目的としており、夏季に摂氏28度以上の室温に対応できる軽装 の服装を着用するように呼びかけた。
実施期間は、環境省の想定では「6月1日から9月30日まで」の4ヶ月。
ただし、2011年(平成23年)には東日本大震災に伴う、東京電力・福島第一原子力発電所での事故による電力不足・電力危機も考慮して、政界・官公庁や一部の上場企業によって5月1日より実施された。
2012年からは環境省が「スーパークールビズ」を打ち出している。
以上のことより、企業での下記エアコン設定温度は28度とされているケースが多いのだが、
2017年、28度設定を見直すケースが増えてきたことをネット、新聞が報じている。
・事務所衛生基準規則と不快指数
事務所衛生基準規則においてオフィスの環境基準が定められています。
温湿度に関しては「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十八度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。」とされています。
ここで室内の温度だけでなく、湿度にも言及されている理由が下記の不快指数票だ。
※湿度とは一般的に使用されるのは相対湿度である。空気が水蒸気の形で包含できる水分量(飽和水蒸気量)は、温度により一定している。
この限度を1として、実際の空気中の水分量が最大限度の割合で表した数値が、湿度である。
仮に、室温が28度であったとき(設定温度が28度ではなく、実測値が28度だった場合)を見てみると、湿度40%までは「暑くない」、湿度50~80%では「やや暑い」というところにあてはまる。
1度上がって室温が29度であった場合には、湿度30%までが「暑くない」、湿度40~70%までが「やや暑い」となる。
暑い、暑くないという指標は体感によるもの、個人の感覚によるところなので、一概に数値化できるものではないが、数値が上がれば上がるほど「暑い」「不快」と感じる人が多くなる。
「暑くない」をオフィス内で実現するのであれば、現実的な室温は、24~25度であると考えられる。
夏場の室外の湿度は50~60%程度が多く、雨が降ったりしていると90~100%となる。
天気が悪い日は、湿度100%でも「暑くない」に該当する24度。天気が良く、湿度も比較的低いからっとしている日は、25度。
とすると、最低限、「快適」にはならずとも「暑くない」オフィス内が実現できる。
※「快適」を実現するのであれば、21~22度とするべき。
※エアコンによる除湿機能
前述のように、空気中に含まれている水分量は温度によって一定です。
したがって、強制的に温度を下げる→空気中の水分が液体となりドレーンとして排出されるわけで、空気中の水分は少なくなります。
イメージとすると、氷と水を入れたコップを置いておくと、夏場は特にコップの外側に水滴がつきます。それは、空気中の水分は冷やされ液体になったという証です。
その分、空気中の水分が少なくなったといえます。
・エアコンのセンサーにおける誤差
設定温度=実測温度ではないということを考えておく必要がある。前述の温度は、実測値を目安に考える必要があり、エアコンの設定温度とは異なる。
エアコンにおける温度設定は、設定温度になるまで、冷房(暖房)を続け、目標温度を達成したら運転を止める、もしくは緩めるというものだ。また、エアコンの点検業務に温度センサーの精度、また校正はほとんどの場合含まれていない。
したがって、年数の経過したエアコンがきちんと精度高く温度管理をできているかは個別調べてみないとわからないし、設定温度の達成の間は設定温度より高い室温の時間帯があるということになる。
なので、事務所衛生基準規則においてオフィスの環境基準をしっかり整えようとするのならば、オフィス内に温度計と室温系を設置し、その実測値を基準に温度設定するべき。
・兵庫県姫路市での取り組み
夏季のエアコン設定温度を28度から25度へ変更。
その結果、光熱費は前年より7万円程度増加したものの、残業時間減少による人件費が4000万円も削減されたというもの。
職員へのアンケートでも「業務効率が上がった」と答えたものが85%、「勤務後の疲労感が軽減された」と答えたものが83%と効率面での向上と就業意欲へのプラスの効果があったとされる。
以上のことにより、オフィスの執務室での室温の管理は、晴れている日(湿度50%以下)の日で25度、雨の日、または曇りの日など湿度が高い日(湿度60%以上)は24度を基本として空調を管理することが、望ましい。
この設定であれば、「暑い」にならないようなバッファーが保たれているため、おおよそエアコンの設定温度もニアリーでも構わないと考えられる。※もちろん執務室内には温度湿度計を設置し、確認する。
・28度設定の会社に勤務している人で、暑いと思う人へ
理屈はわかっても、会社の総務部や上層部が28度って言っているので、どうしようもないと思っている人はどうするのがいいでしょうか。
下記の理由書をもって、職場環境整備目的に提案しても全く話にならないのであれば、退職も考えましょう。
手順1
執務室の温度、湿度を計測する。
手順2
エアコンの設定温度を確認する
手順3
(会社が)28度設定としている根拠を確認する
※おそらく、なにも考えずに何かで見た指標を参考に28度としているケースがほとんどと思われる。
その上で、下記のように提案してみましょう。
提案の構成
1、現状把握
当社の執務室エアコン設定温度は28度となっているが、
実測値では温度〇度、湿度〇%となっており、不快指数としては○○に相当する水準である。
2、28度設定の根拠
当社が夏季のエアコン設定温度を28度としている根拠は、事務所衛生基準規則おける上限温度が28度であることを言われているが、これは設定温度ではなく、室温を指している。
3、上記より、エアコンの設定温度を28度にしたからといって、室温が28度に必ずしもなるわけではなく、常時室温を適切な温度に保つためには、目標温度よりもバッファーを持ったエアコン設定温度が必要になる。
4、事務所衛生基準規則には、相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下と記載されているように、温度と湿度の関係は重要である。温度のみを確保すればよいものではない。
温度と湿度の関係を使った不快指数という指標があるが、快適と感じるのは温度19度かつ湿度80%~温度27度かつ湿度10%の間である。
日本の下記において湿度10%というのはあまり現実的ではなく、仮に湿度50%で考えると、快適温度は20度~23度である。
5、室内環境は労働効率にも影響を与える。
兵庫県姫路市での取り組みで、夏季のエアコン設定温度を28度から25度へ変更した例がある。
その結果、光熱費は前年より7万円程度増加したものの、残業時間減少による人件費が4000万円も削減されたというもの。
職員へのアンケートでも「業務効率が上がった」と答えたものが85%、「勤務後の疲労感が軽減された」と答えたものが83%と効率面での向上と就業意欲へのプラスの効果があったとされる。
このように、業務効率向上により生産性があがったとともに社員への心身への負担減につながり、一定の残業時間削減が実現できれば、エアコン稼働時間の抑制にもなる。
6、結論として、執務室の温度湿度管理は、盲目的に決定するものではなく個別の環境によって適正な管理を求める。
具体的には、当社環境下の場合、○○度のエアコン設定温度にし、かつ温度湿度計によって適正温度湿度を保てているのかを定期的に確認し、湿度の状況によっては温度の設定を変更することが望ましい。
以上のように会社、総務課に提案してみてはどうだろうか。
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