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珠玉の言葉 −馬上少年過ぐ−

表紙/司馬遼太郎作/新潮文庫より

日比谷公園内

馬上少年過
世平白髪多
残躯天所赦
不楽是如何

馬上少年過ぐ 
世平らかにして白髪多し 
残躯(ざんく)天の赦す所 
楽しまずして是を如何にせん

若いころは戦場で馬を駆け巡らせていたが、平和な世になって気付いたら白髪の老人になっていた。残りの人生は天が許したもの。これを楽しまなくてどうする、といった感じか。

なお、伊達政宗の辞世の句は「曇りなき 心の月を 先だてて 浮世の闇を 照してぞ行く」。
この句は、暗闇の中を月の光を頼りに進むように、戦国の時代をひたすらに歩いてきた、という解釈。伊達兜の三日月🌙は、そういうことか…これは珠玉

関連して、教養人・伊達政宗公の漢詩

四十年前少壮時 
功名聊復自私期
老来不識干戈事     
只春風把桃李巵

四十年前少壮の時
功名聊(いささか)また自ら私(ひそ)かに期す
老来識らずや干戈(かんか)の事
只把(と)る春風桃李の巵(さかづき)

四十年前の若く勢いがあった頃は、功名を立てるに、口にこそ出さなかったが、秘かに自信があった。しかし、歳を取ってしまい、戦のことなどすっかり忘れてしまった。今はただ、春風に吹かれながら、桃と李(すもも)の花の下で酒を楽しむばかりである。

白象の気まぐれコラムⅡ  より


咲きしより今日散る花の名残まで
                    千々に心のくだけぬるかな

桜の花は咲いたが、今、目の前で散っている。その散る花の名残りを楽しみながらも、(我らの行く末に)ついつい心を奪われてしまうのである。

司馬遼太郎  馬上少年過ぐ

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