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勝手にファンタジー小説。ハロウィン選挙⑨

私は待っていたのである。
サントの帰りを。

ずっと心待ちにして待っていました。
あなたの帰りを。

ルナ「お帰りなさい!!サントさん。
ずっと待っていたの。」

サント「…なんだよ、ルナ、帰り待ちか?
やめろよな。
どうせ帰る宿は同じなんだから。
てかお前、何やってんの?暇なの?」


チッ。相変わらずノリが悪いww


せっかく私が出迎える演出をしてあげたのに。
まあいいや。
早く本題を言って飴をもらわないといけないので。

私は片手をサントに向けてそっと差し出す。
ちょうだいのポーズで。


サント「ったく、金がないのか?」


ルナ「ちーーーがーーーうーーー!
私の、飴!」


サント「飴?
飴がなぜいま必要なんだ?」


ルナ「え、いや、今からちょっと、あれで。」


サント「あれ?」


ルナ「いや、なんというか、色々あるんですよ、こちらも。」


隠していても仕方ないので、私は色々あって、
これからある少年と決闘しなくてはいけないみたいだということをサントに話した。


サント「ふぅ~ん。
それで、どうするの?」


ルナ「どうするも何も。
ちゃんと、大人の対応で、こう、
ガッと受け止めようかと。」


サント「大人ね。
まあ、これはルナの飴だし、
俺がどうこう言う事でもないだろうから
一応返しておくけどさ、」


サントは空間から小さな小箱を取り出した。
そしてそれを開けて、中の飴を私に手渡した。


サント「あのさ、お隣さんなんだから、たまには相談とかしてもいいんだぞ。
一応、ルナのことは俺も信用してるし、お互い助け合わないと。」


ルナ「いや、
そういうわけにもいかないでしょ。
私達、一応ライバルな関係なわけだし、
これ預かってもらってて貸しもあるくらいなのに。
まあ、今回はどうにかなるから、少し放っておいてくれると助かる。」


サント「これから子供とあそぶってことならね。
あんまり無理して、
怪我とかするんじゃないぞ。」


ルナ「大丈夫ですよ。
体は親から丈夫に生んでもらってますので!」


とりあえずこうやって飴は私の元に戻ってきた。
さて、これから決戦へ向かうのです。
なんだか気が重い。
昨日カイトの話がぐるぐる回る。


”候補者には悪い奴しかいない”



そうだよなぁ…そうかもなぁ。


私は今扉の前に立っています。
カイト君の家の前。

こういう時、どんな顔をしたらいいのか分からないよ。

ノックをするのも勇気がいる。
まるで告白前の若女子のような、そんな心境。

??「おい、お前。
逃げずに来たんだな。ウケるw」


ビクッ!!


思わず後ろから声をかけられてビクッ!!ってなってしまった。

振り返ると、ちょうどカイト君とトライン少年が立っていた。


トライン「それで、ちゃんと飴、
持ってきた~?」


ルナ「約束通り持ってきたよ。
カイト君にもらった飴。」


私はトライン少年に今持っている飴を手渡した。


ルナ「嘘はついてないって、信じてくれた?」


トライン「そうだね。
嘘はついてなかったみたい。
ごめんね、僕は疑り深いし、
候補者は信じちゃいけないって思ってるから、ついね。

ちなみに、僕も約束通り持ってきたよ、飴。
今3つある。
全部間抜けな候補者からもらったから。
ほら。大事な飴だろ。一応返しておくよ。」


ルナ「あのね、その飴あまり持ち歩かない方がいいよ。
その飴って、
あなたが思っているよりとても危険」


トライン「危険?
貴重の間違いでしょ?
僕のうちにあった飴は投票に使われず、盗まれた後、
高額で取引されて、金持ちの候補者に買い取られたんだってさ。
そりゃ~、貴重だよね。
飴なのにさ、金貨よりも何倍も価値があるんだもん。」


ルナ「本当に危険なの!
人から盗むことも、それを持ってることも危険。」


トライン「知ってる。
悪人ほどこの飴を欲しがってるのも知ってる。
その悪人を村の一番偉い人にして何が楽しいの?
僕はそんなの嫌だから、だからとった。」


ルナ「私はその人達とは違うよ。」


トライン「どうかな?
わかんないじゃん。
だから飴は見つけたら僕が奪う。
子供だから大人みたいに狙われないし、
隠しておけばいいもん。
悪いように使われない一番の方法だと思うよ。」

ルナ「候補者は悪い人ばかりじゃないよ。
私はちょっと変な人だけど、正義感の強い優しい候補者も知ってる。
そういう人が村を変えてくれるかもしれないじゃん。」


トライン「うるさいな!もういいよ!!」


っっ!!

熱い!!

トラインの右手から炎の柱が出ていた。
カイト君が言っていた。
トラインは火の魔法が使えると。

トライン「もうおいていきなよ飴。持ってると危ないよ。」

私の方に手をかざすと炎が私の方に向かってくる。

私はひらりとその炎をよけた。


ここはカイトの家に近い。
被害が出てしまうと思ったから。


私は少し走り、空き地でトラインを待ち受ける。


トライン「へぇ、炎にひるまないんだ。
今までの候補者はこれやったらすぐ逃げてったんだけど、

なっ!」


私に向かって炎が飛んでくる。
私は飛んでくる炎の軌道に集中する。

そして風向きを変えて炎の軌道をそらした。

素早くトラインの方へ向き直る。

ルナ「私もあなたと同じく、少しだけ風の魔法が使えるみたいなの。」


トラインはさらに手をかざし、炎の柱を増大させていた。
その柱を私に向けて放つ。

私はそれをすんでのところでよけ、手に力を込めていた。

風の流れを体で感じる。


空気のうねりを感じて、私が使うイメージ。
そして、トラインの腕と足に集中する。


トライン「くっ、何するんだ。やめろよ!!」


空気を風で操り、私はトラインの両手足をとらえることに成功した。
空気の渦が両手足を縛り、トラインは身動きが取れない。

それでももがきながら、まだ炎を放とうと、私に無理な体制で攻撃をしようとしているようだ。

ルナ「かんねんなさい。
こんなこと、何にもならないよ。」


トライン「うるさい!!」


手から放たれた炎は、空気のうねりのせいで私とは違う方向に飛んでいく。

...その先には、

私達の戦いを隠れて見守る
カイトの姿があった。


ルナ「カイト君、危ない!!」

トライン「!!!」



バーン!!!!




カイト君のいた付近で炎はもろにはじけ飛んだ。



トライン「う、うそだろ…カイトが。」


私は風の魔法をすぐに解いて、
炎のとんだ方向へ駆け寄った。

しかし、カイト君の姿はそこにはない…。

ない??


消し飛んでしまった??


いや、そんなに、人を消し飛ばす程大きな魔法ではないはずなのだ。
トラインの魔法は、人を少し傷つける程度の
小さな魔法だったはずなのに。

サント「まったく。
お前ら何やってんの?
うるさくて夕寝ができないんだけど。」


この緊迫した状況の中で、マイペースに登場する怪訝な顔の男。
しかも、大きなあくびをしながらのおまけつき。


その名も、サントなのである。


サント「で、
こいつは俺が何とかしといたから。」


サントのマントの脇から出てきたのは、
さっきまでそこで心配そうに隠れていたカイトの姿だった。


ルナ「カイト君!!よかった。」

サントは私をチラ見しながら淡々と続けた。

サント「それで、
決闘ごっこの決着はついたわけ?」


ルナ「それどころじゃなくて、カイト君が、カイト君が…」

私は慌てふためいて、もうグダグダなのである。
トライン少年は、
先程からもうへたり込んでいて、
さっきの大暴れがまるで嘘のように、静かなものである。


サント「やれやれ、
何が大人の対応だよ、まったく。

じゃあ、少年。
君は見てたんだろ、2人の戦いを。
どっちが勝った?
公平に決めてみ?」


サントは自分の脇にいるカイトに向かって話しかけていた。


カイト「う、うーん...
トラインお兄ちゃんは、最後お姉ちゃんに捕まえられて動けなくなったから、
俺はお姉ちゃんの勝ちだと思う。」

サント「だそうだ。
おめでとうお姉ちゃん!
じゃ、俺は続きの夕寝するから、先に宿に戻っておくぞ。

ふわぁ~~」


大あくびを残して、何事もなかったかのように、サントは宿の方に消えていった。

トライン「カイト、大丈夫だったか。
怪我とかしてないか?」

黙っていたトラインが静かに口を開いた。

カイト「うん。
トライン兄ちゃんの火が飛んできて、怖いって思ったら、
音がしなくなって、あれ?って思ってたら、
いつの間にかあのおじちゃんの隣にいて。
自分でも分からないけど、どこも怪我はしてないよ。」


ルナ「そうだったの。
サントが、
助けてくれてたんだね。よかった。」

トライン「なあ、アイツも候補者?」

ルナ「うん。あの人も私と同じ候補者だし、
私はあの人の事は、いい人だと思ってる。」


トライン「そっか…そうなんだな。

ちくしょっ!
あーーーー!!

もういいや、僕の負けで。
約束だもんな。
約束は守るって言ったから。

いいよ、
これ、あんたにあげる。」


トラインは3つの包みの乗った手を私の方へ差し出した。


ルナ「別に、
私は飴が欲しくて戦ったわけじゃなくて、
この飴を渡したくなかったから」

トライン「あーー、もういいんだってば。
僕の負け。ルナの勝ち。

この飴はいいことに使ってよ。ね。」


トラインは私の手にぐしゃっと飴を押し付けて手渡した。


トライン「僕も自分の気持ちに任せて、
あの候補者と同じになりそうだった。
分かってたんだけど、許せなくて、
違う候補者に八つ当たりしてた。
あんたにも...。

ごめん。

あの人にもカイトを守ってくれてありがとうって、あんた...じゃなくて、
ルナからお礼を言っといて。」


ルナ「…わかった。
私もお礼言っておく。
そして、2人からもらった飴は
私がちゃんと使うから。
託してくれてありがとね。」


カイト「ルナお姉ちゃん、よかったね!」


ルナ「カイト君もありがとね。」

もう夕日は沈みかけていて、これから夜にまっしぐらだ。
でも決闘あとの今の私達にとっては、まだまだ明るいくらいの、気持ちいい真っ赤な夕焼けだった。


(つづく)

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