勝手にファンタジー小説。ハロウィン選挙②
うん、そこそこ大きな村だけある。
真昼間っから酒場がオープンしています。
ここハロウィン選挙前の不思議な村からの中継です。
??「いや、ちがうんだ。
これは選挙前だから、こうやって酒場をオープンさせてくれている。
村側の粋な計らいなんだろうと俺は思っているがね。」
はい、そして、
私の目の前には見ず知らずの怪訝そうな顔の男がいます。
以上、中継おかえししま~すw
ルナ「あの~...
若い娘を昼間っから酒場に連れ込んで、
何をなさる気です??
というか、村の粋な計らい?
なんですかそれ??」
??「ちょ、を、お前!勘違いすんなよ!?
俺は別にお前をどうこうしようと思ってここに連れてk…」
ルナ「ハイハイ。
先輩はこういう会話に弱いんですね。
大丈夫ですよ、何も思ってませんから。
それで、なんです?村の計らいって?」
サント「くそっ、とりあえず、自己紹介しておく。
俺の名前はサント。
勝手にお前の先輩にすんなよ!
てかお前、その調子だと何の前調べもなくよくこの村に来たんだろ??」
ルナ「あの。
私もサントさんの『お前』にはなりたくないので、ルナでお願いします。
まあ、確かに、前調べとかしてなくてここまで来ましたけど…」
サント「あかん、生粋のバカか天然だな。」
ルナ「うわ、なんですか!!ひどい!!」
サント「まあ、でも今の時期にはそういうやつはこの村にうじゃうじゃいるからな。
いいか、今色んな奴らがここの村に集まってるんだ。
いい奴もいれば、悪い奴もいるし、
ルナみたいに無謀な奴もたくさん集まってきてる。
それは何でだかわかるか?」
ルナ「そ、それはもちろん、この村の総選挙があるからってことですよね?」
サント「まあ、それは言わなくてもわかるか。
色んな奴がいて色んなことをやって、どうやってかこの村のおさになろうとしてるってことだ。
だから、この店も昼間っからやってる!」
ルナ「つまり、アレですか!情報とかですかね。」
サント「この店も結構人入ってるだろ?昼間だっていうのに。」
ルナ「え、ええ、まあ。そうですね。」
サント「多分、この村全体でいろんな面で経済がこの時期動いてるぜ。
多分な。
そして、情報は人気投票の一番の武器だろう。」
ルナ「まあ、確かに見ればわかるような…。
お客さん、村人もいますけど、立候補者もチラホラいたりしますね…なるほど…」
サント「おっと、話がそれたな。
それでルナ、お前これからどうするんだ?
てか、どうしたいんだよお前?」
ルナ「いや!私、
立候補したからには村おさ狙うんで!
で、どうしたらいいんですか?人気投票!!」
サント「お、おま…無謀だぞ、ホントに。」
ルナ「ひいおばあちゃんが言ってました、色々とやってみないと分からないって。
だから、今はやりたいし、
どうしたらいいか少しだけでもサントさんが教えてくれたら、
もしかしたらやれるかもって思うので。
お願いします、師匠、どうかどうか~」
サント「まじか…まあ、でもお前悪い奴ではなさそうだしな…。」
ルナ「サントさ~ん」
サント「…
はぁ。
仕方ないな。
なら少しだけ教えてやるよ、この村の選挙の事を。」
ルナ「その言葉を待ってました!
やっぱり私の見込んだ人なだけある。
頼りにさせていただきます、師匠!」
サント「はぁ…。
いいか、
この飴玉だよ。」
そういうと、サントはおもむろに小さな小箱から光るものを取り出した。
ルナ「おお、飴玉。」
サント「ルナも見てたんだろ。
さっき荷物を持ってあげた女性からもらったものだ。」
オーロラ色の包み紙に包まれている、手のひらに軽々乗る小さな飴玉をサントは私に見せてくれた。
何の変哲もない、ただの飴玉なのである。
サント「これを村人からもらって、集めて、
10月31日の22:22に一番多く持っていた者が
時期村おさの資格をもらうってことらしい。」
ルナ「ほほ~う。これをね~。
けど、これ偽装しちゃえませんかね?
自分で作っちゃえば簡単のような気が??」
サント「って、思うだろ?
けど、どうやらこの飴は特別な工場で作られていて、
特殊な魔力が込められている。
だから偽造は無理らしい。
開票の前に候補者の飴は全て判別機にかけて調べるらしく偽造したらすぐばれる。
1度腕利きの贋作師がこのあめ玉を模したものを作ったそうだが、
開票前にすぐにばれてしまったという噂を聞いたことがある。
成分分析をするにも、村から外に持ち出せない。
この村に入るのは簡単だが、
出るには選挙の時と同じく判別機を使って持ち物などは
全部検査されるからな。
あと、その飴。
最終的に31日の22:22から0:00にかけて発光する魔法なんかもかけてあるって話だw
その光が村全体に輝いて、村全体が盛り上がり、
選挙というかハロウィンの夜というか、
とにかく10月31日が終わるってのが恒例行事らしいけどな。」
ルナ「特殊技術…。
ずるいなぁ…(作者めw)どんな魔法だよ…。」
サント「けど、とりあえず偽装は無理ってことね。」
ルナ「うーん、そうなんですね~。
なるほど。
なら、ここに住む村人がその飴を持ってて、
何かしらでくれたりするってことですか?」
サント「まあ、そういう事になるね。
だから、村人に優しくしたりしたら、こうやってもらえたりもする。」
ルナ「ほうほう。」
サント「そういえば、さっきルナはお金がないと言っていたが、
この飴玉、残念ながら金にもなったりする。」
ルナ「えええ!!なんですっって!!」
サント「候補者の中には喉から手が出るほど飴が欲しい奴もいるだろうし、
逆にお金に困っているものも候補者には混ざってる。
そう考えると、飴をもらって高値で売るという候補者もいる。
宿屋なんかに行って、
『お金を今持ち合わせていないので、この飴で泊まらせてもらえませんか?』
と言えば、簡単に泊めてくれるだろうね。
村人もこの飴の価値を知ってるってことだ。」
ルナ「飴玉の価値、そんなにすごいんですね。
ただの飴なのに…。
これじゃ食べるなんてできないですねw」
サント「そうだな。
村人にとってはただでもらえる便利な飴。
でも候補者にとっては選挙に必要な貴重な飴って所か。」
ルナ「あ、ちなみに、その飴って
村の人はどうやって手に入れてるんです?」
サント「現村おさが選挙権を持つ住民に無料配布してるそうだ。」
ルナ「ふう~ん。」
サント「なんとなく、分かったか?
この村の事。」
ルナ「あ、はい。
まあ、まだ分からないことはたくさんありますけどね。
サントさん、何も知らない私に色々と教えてくださり、
本当にありがとうございました。
おかげで、少しこの村の事とか分かった気がしますよ。」
サント「な、ならいいんだが…。
でも、村おさはやめといたほうがいいと思うぞ、俺は。
いい奴より、おそらく悪い奴が多いし、
候補者狩りなんかもあるからな。」
ルナ「え~?なんですか~?
心配してくれるんですか?私の事。
サントさん見かけによらず優しいですね!
大丈夫ですよ。
まあ、何とかやってみますからっ!」
サント「お、お前、見かけによらずって何だよ!!」
ルナ「あはは、嘘ですよ~~。
ちゃんと誠実そうな人を選んで声をかけてるので、ご心配なく。
あ、ここの代金、私が払いますよ。
情報料です。」
サント「か、金持ってんのかよっ…
まったく…」
私は席を立ってカウンターで支払いを済ませた。
なんとなくこの村の事がこれで分かった気がする。
この村の粋な計らいと、サントに感謝しつつ、私は店を後にするのであった。
(つづく)