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勝手にファンタジー小説。ハロウィン選挙③

店を出た後、サントからしばらく候補者をやめるようにぐちぐち言われた私だったが、

『優しくしてくれたお礼に色々と加勢しますよ』

と強制的なお別れを告げて、サントから逃げたw


さて、今からどうしようか…。


とりあえず、困った村人を助けてみようかと思う。


が、村人の周りに候補者…

私よりも前にここに来ている候補者たちが、ギラギラした目で村人たちを見つめている。

ある意味ストーカー的なやつだ…。
はぁ、なんか、ああまでして善行を働きたくはないなと、そう思ってしまうんですけど。


ぐぅぅ~


私のお腹が鳴っている。

昼間っからお酒の出るお店では、おつまみ程度の物しかしか食べれなかったし。

と。見つけてしまったw

そこのパン屋さんにでもよって
美味しそうなもの買ってみようかな。


ルナ「こんにちわ~。」

店主「ああ、いらっしゃい。
おや、候補者さんかい。ご苦労様です。」

ルナ「ああ、いえ。えーと、ルナです。
どうぞよろしくお願いします。
おいしそうなにおいがしたので、パンを買いに来ました。
パンを何個かいただきますね。」

店主「どうぞどうぞ~。」


私は何個か好きなパンをとってカウンターに持っていき、お金を払った。

店主「よかったらコーヒーを出すので、ここで食べていくかい?」


お腹もすいていたし、私は席に座ることにした。
ご飯時を過ぎた店内はがらんとしていて、座っているお客さんはいない。

パンの焼けるいい匂いに、コーヒーの匂いが混ざって、とても食欲をくすぐられる。

店主「よかったら、ゆっくりしてってね。」

笑顔の似合う、優しそうな女性店主はそっとコーヒーを置いていってくれた。

私はおもむろに先程選んだパンを取り出し、ひとかじりする!

うん、うま…??あれ…??


なんだかおかしい。これって、なんだろう…


何かの間違いかもしれない、もう一個違うパンを一口。

・・・う、うーーーん(-_-;)


もしかしたら、このパン、あまり美味しくないかもしれない…。

なんというか、ちょっとまだ半焼けのような。
てか、ホントにこれ焼けてるのかな??


空腹の上にとても残念な感じ。
私はコーヒーを全て飲みほしたタイミングで席を立った。

すると笑顔の店主がわざわざ近くまで見送りに来てくれていた。

店主「おいしかったかい?うちの石窯で作ったパン!!
うちの自慢のパンなんだよ!」

店主は自信満々だ。
でも、はっきり言ってあのパンはそんなに美味しくなかった。

多分、私の住む街であんなパンが売られていたら苦情が殺到するだろう…。

でも店主は至っていつも通りですよ!という笑顔で私を見送る様子…


うーん


私は意を決して、パンの感想を述べることにした。

ルナ「あの、店主さん、
その、もしかしたらですけど、

パン、生焼けだったかもしれません…。」

店主「え、えええ!?!
ま、まさか!そんなことはないと思うんだけれど…。」


私は先程食べ残したパンを店主に見せてみた。

店主「これはホントかい。
参ったねぇ…全然気づかなかったよ。

もしかしたら、ほかのパンも…」


先程の自信は見る影もなく、店主は慌てふためいている。
売り場に並べられているパンを何個か割ってみたが、
やはり、先程私が買ったパンのように、微妙に中が生なものばかりだった…


店主「おかしいねぇ。
いつも通りに焼いているんだよ。
それなのに、一体どうしてこういう事になったんだか…。
いつも来るお客さんも何も言ってくれなかったし、こんなことになっていたら
苦情だって来るはずなのに…」


私はふと気づく。


もしかしたら
これはチャンスなのではないのかと。

今まさに目の前に村人が困っていて、助けるチャンスが巡ってきたとw
とりあえず何か私に力になれることがないだろうか?

ルナ「あの、もしよかったら、少し石窯を見せていただくことはできますか?」

店主「ん?え、ええ???あなたにですか?!で、でも~…」


そりゃそうだ、見ず知らずの人に自分の領域を晒すのには抵抗があるに決まっている。
でも、ここは少しだけ力で押し切ってみる。

ルナ「もしかしたら、
私に力になれることがあるかもですし、
少し気になることがあるので。

先程美味しいコーヒーを頂いたお礼です。
別に何もいただきませんから!」


私のまっすぐな熱意に負けて、店主はしぶしぶ案内してくれた。

今もパンを焼いているおいしそうな甘い匂いがしている。
石窯は高温になっており、熱いので別室で管理されているらしい。


私は石窯の前でそっと手をかざした。
風の通り道を感じる…


ヒュッ


やはりそのようだ。
私は目を開けて店主にこう告げた。

ルナ「石窯にどこか穴が開いてしまったようですね。
そこから熱が漏れていて、温度管理がうまくできないようなので、
一度点検して、修理したほうがいいみたいですよ。」

店主「え??ど、どういうことだい??」


ルナ「なんというか、

『風の魔法』です。
実は私、少しだけ魔法が使えるんですよ。
この窯、どこかから風が漏れてるので…」


店主は熱い窯のまわりをしばらく調べていたが、
表から見えない裏の方に劣化してひび割れた箇所を見つけ、
それが広がり、風の通る穴になっている事に気が付いた。

通りで、いつもの同じ分量を、同じ時間焼いていたのに
出来上がったパンは生焼けだったのだ。


さて、これで一件落着な訳だが、
店主は先程もらったパンの代金を私に返し、

「窯がなおったら、是非、もう一度うちのパンを食べに来ておくれ」

と言って私を見送った。



ノー飴玉であるw


さて、これからどうしようかな。

私は店外に出て、今日泊まる宿屋でも探そうと村をふらふらするのでありました。

(つづく)

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