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秋の星空案内

 天体観望会や星空案内をするとき、冬・春・夏は明るい星も多く、また天体望遠鏡で見て楽しい天体もあり、充実した内容で開催できるのですが、秋は明るい星が無く、また望遠鏡で見て楽しめる明るい天体もありません。
 そのため秋の天体観望会や星空案内では、ギリシャ神話のアンドロメダ物語の解説と、それから始まる星座案内になってしまいがちです。
 そこで「秋の夜長は、星空・宇宙の話をするに適している カモ」と題して、秋に見られる星に因んだお話しネタを考えてみました。

A:天文学的な話
  1.恒星の誕生~進化~終末
  2.天の川銀河の話
  3.系外銀河や銀河団の話
  4.太陽系外惑星や、地球外知的生命の話
B:星座の話
  1.メソポタミアの星座
  2.星座誕生の歴史
  (3.星座のギリシャ神話)
C:星空の魅力の話  
  1.「長野県は宇宙県」の話とか
  2.「鳥取県は星取県」の話とか
  3.「星空浴」の話とか
  4.満天の星に包まれると 広い心になれる話とか

A-1 恒星の誕生~進化~終末

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 秋の星空でも、西空には夏の大三角や天の川が見え、恒星の誕生から進化などの解説をしたり、それに関連する天体を見ることもできるでしょう。
 例えばはくちょう座のγ星~β星辺りの明るい部分は「はくちょう座スタークライド」とも呼ばれる、天の川銀河の星や星雲の濃い部分があります。またそのすぐ南に天の川の暗い部分、「The Great Rift(巨大な切れ目)」があります。天の川の中にある暗い部分は、星が無いのではなく、星間分子雲が濃い部分です。「はくちょう座グレートリフト」は天の川で最大級のの星形成活動をともなう領域で、太陽の数百万倍の分子ガスがあるといいます。

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 「グレートリフト」のはくちょう座γ星の東側には、より暗く、X線強度の強い「はくちょう座X領域」があります。4500万光年彼方にある、大質量星が誕生している場所です。ハーシェル宇宙望遠鏡による拡大画像では、「はくちょう座の背骨 DR21」など、分子密度の高い、星形成領域が集まっていることが分ります。

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 はくちょう座の恒星が誕生している場所が分ると、そこから誕生した星々が天の川を輝かせ、太陽のような中質量の星の最後には、こと座M57=リング星雲のような惑星状星雲となったり、大質量の星ははくちょう座網状星雲を作るような超新星爆発を起こす、といった話ができることでしょう。またはくちょう座には、さらに大きな質量の恒星の最後の姿であるブラックホールの最初の候補星である「はくちょう座 X-1」もあります。

A-3 系外銀河や銀河団の話

 秋の星空でよく見える天体といえば、アンドロメダ銀河M31でしょう。近くにはさんかく座銀河M33もあります。これをスタートに、系外銀河の話や、銀河団の話をすることもできるでしょう。
 また、アンドロメダ銀河は、1930年頃にいくつか観測されていた ”渦巻き星雲” が、この世界=天の川銀河の中にあるかを明らかにすることができた(ハッブルがアンドロメダ星雲の中にケフェイド型変光星を見いだして、距離を測定した)天体であるという話もできますね。

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 またペガスス座には「ステファンの五つ子」と呼ばれる銀河団があります。カシオペヤ座のハート星雲の近くには「マフェイ1・2」という、天の川の塵で隠されているため小さく見えるけど、それがなければ満月の3/4ほどの大きさで、全天一明るく見えるハズの銀河もあります。これらの銀河を紹介することで、様々に話を膨らませることができるかもしれません。

A-4 太陽系外惑星や、地球外知的生命の話

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 ペガスス座には、太陽系外惑星発見の第1号である「ペガスス座51番星」があります。1940年代から系外惑星の捜索が始まり、1995年になってようやく発見されたのでした。発見グループはノーベル賞を受賞しています。
 秋の星座であるくじら座のタウ星は、1960年に天文学者フランク・ドレイクが始めた地球外知的生命探査(SETI)の初めての取り組みとして、人工的な電波が発信されていないか測定された星です。ここからSETI計画の話などを始めることもできるでしょう。

B:星座の話

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 秋の星座は、メソポタミアで誕生した星座を、とてもよく見ることができます。水の神エアをかたどった「みずがめ座」、チグリス川・ユーフラテス川とされる「うお座」、その間の大地(野原)を指す「ペガススの四辺形」などがあります。ここから星座の歴史の話を始めるのも良いでしょう。

C:星空の魅力の話

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 最近 各地で始まっている、星空と観光をコラボさせた「長野県は宇宙県」の話とか「鳥取県は星取県」の話とかするのもイイですね。

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 星空には癒やし効果があるとされるので、「星空浴」の話もイイでしょう。「満天の星に包まれると、広い心になれる」という話もありますね。
 さらに、近年 海外の天文学者が話題にし始めた「AWE in Astronomy」という話もあります。「AWE」は日本語に訳すと「畏敬の念」となりますが、そのような難しい言葉より、”美しい星の姿を見たときに口にでる「うわぁ」といった感動の言葉” が適していると思います。

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 秋の星空を自分で実際に見て楽しめた話とか、秋の星空をきっかけに話せるような題材を探してみるとか、考えようによって、見応えのある天体の少ない秋の星空でも、いろんな話や天体観望ができることでしょう。

(2021年9月)

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